48.遠征開始 遠足って言うな
「以上を持って本作戦の説明を終える。何かに質問のあるものは?」
時が変わりまして、本日は遠征にいくこととなりました。
いつぞやの討伐任務で行ったようなちょっと時間があれば行けるような場所ではなく、本格的に何日か必要になってくる遠征です。遠足じゃねーからな、”遠征”だからな。
今回の任務はレギルス様の領内の端に発見された謎の建造物の調査。ずいぶんと前からレギルス様がうんうん唸っている原因であろう案件である。やーあれはご愁傷様としかいえないわ。
なお、その件の構造物というのが発見されたというのが2週間前である。何故すぐに調査に行く話にならなかったというと…いわゆる「領地境界あるある」があったようで…
「うちの領内でなんかやばいの見つかったんだけど」
「でもそこうちの領内でもあるんだけど」
「「どうする?」」
「うーん地図的にうちの方が多い面積が入ってるからうちが調査するわ」
「まじ?いそいで調査に向かわせてたやつら帰させるわ」
「ちゃんと話し合ってからやれよ」
「いやだって心配じゃん」
みたいなやりとりを高度に発展させたものが続きに続いてここまで伸びたんですよね。実際のところはレギルス様もお相手様もここまで馬鹿っぽくは無いのでご安心を。
今回の遠征は20人ほどで出撃します。まぁこれでそこらの騎士団の…3倍くらい?の戦力にはなるので十分なんじゃないかなと下っ端なりに考えます。それに…今回、最大の戦力にして最大の不安要素――あの人も来る。
「キミと一緒に任務に行くのは久しぶりになるね?アルバくん」
にこにこしながらこちらへ話しかけてくる女性。そう、今回はカイ団長も来ます。はいもう不安です。バトルジャンキーみたいな人だしトラブルメーカーだしで不安と安心の塊とかいうカオスみたいなお方。
「此度の遠征では頼りにさせて頂きます。カイ団長」
「はい任されました!とはいえみんなにも活躍は期待しているよ?もちろんキミにもね」
「恐縮です。」
ひーおっかね。キランっていう効果音がなりそうな眼光を最後に見せるんじゃないよまったく。
「それでは各員出撃準備に入れ」
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騎士寮を出ると、準備を終えた騎士が何人か居た。私も結構準備が早いんじゃないかって自負してたけど余裕で上回られたわ。さすが騎士団準備もばっちりってやつでしょうか
「よっアルバ。今回はお前もいくのか?」
背後から低めの声。振り返ると“兄貴”感溢れる騎士――ウィルフリットさんの姿があった。
「こんにちはウィルさん。この前のことがありましたからね…状態異常に強い私が行った方が安全かと思いまして」
ウィルさんことウィルフリットニキは私の大先輩だ。カイ団長による気まぐれ訓練の被害者前任者でもあるし、団長捜索の前任者でもある。団長の扱い方はこの人から教えてもらいました。教えてもらってなければ今頃どうなっていたか…風にでもなっていたかも?
ちなみにウィルフリット”ニキ”はあくまで私の心の中限定の呼び方ね。現実でそんな呼び方したらハテナマーク出ちゃうしそもそもこの呼び方オタクにしか通じんて
「あ~…確かにな…俺たちだって鍛えてはいるんだがな、なんにしろお前が来てくれるなら安心だ」
「こちらこそ頼りにしてますよ色んな意味で」
「…俺は弟子にすべてを教えたつもりなんだが?」
「知識と経験は違うんですよ」
「やぁやぁ!なんの話をしているのかな?」
うわでた。私とウィルニキは声の方向へ素早く向き直して敬礼をする。
「うわd…団長、ずいぶんとお早いようで」
「なんでもございません団長。ウィルさんと久しぶりにお会いしたので世間話をと思いまして」
「ふ~ん?知識とか経験とかって聞こえたけど?」
ほんとこの人鋭いなぁ…
「俺たち騎士団の仕事についてですよ。アルバもここにきて数カ月とはいえまだまだ新米なんでね」
「えぇ。ちょうどいつぞやの討伐任務のことについて話しているところでして」
ウィルニキと私の神演技(笑)によってカイ団長は説得し、ごまかすことに成功した。ふ~危なかった。じつはあんたのしつけ方を教えられてましたなんていったら…遠征の荷物が増えることになるね(私が使い物にならなくなるって意味で)
さて、尺稼ぎ間違えた与太話でもなかった日常会話もここらへんにしておいて、いよいよ遠征に出発します。遠征に行く部隊を除いて40人程度の騎士が残るんです。心配せずに堂々と出発しましょう。…あれ?でもよくよく考えたらウチで最強のカイ団長が離れるのってまずいんじゃ…
「みんな準備はいいかい?それじゃあ出発!」
あーうんもう今更待ったは効かないか、もう止められんよ。
う~ん20人もの騎士が馬に乗って移動するのはなかなかの光景ですなー。アニメとかでしか見たことなかっただけにわくわくだ。
私の目の前にはゲームやアニメ漫画でよく見た騎士達の行進が広がっていた……さいこー!!!!!!
おっといけないいけない…ここではしゃいでしまっては私のキャラが崩れてしまう。ここは何事もなーく真面目に進んでいる風に演じるのだ。私の自慢の鉄面皮なら楽勝!!!…あれ?意味が違うよな?それだと厚かましいってことになるよな?まぁいいか、とにかく!私には外見から心情を悟られることはないのだよ!!つまり黙ってればバレへんねん!!!
一人でギャーギャーしてる私は気にせず話に戻りましょう。ぱからっぱからっという心地の良い蹄の音を響かせながら馬たちが行進していきます。以前の馬車と違って直接乗ってるから結構楽しいのよこれが
当方生まれて初めて乗馬なんてしましたがこいつはなんて楽しいんだ!と声を大にしていいたい。牧場とかで乗馬体験が人気なわけだ。だがしかしこいつがまぁまぁ難しいんだわな。今でこそここにいる全員がドヤ顔できるレベルに乗りこなしているように見えるけど、私含めた何人かはちょっと前に乗馬を始めたばかりの頃は何度床を舐める結果になったのか…床ペロしすぎて味に飽きちまったぐらいだぜ!!
あぁ…今思い返しても鮮明に思い出せる…みんな痛そうに落とされたよなぁ…流した涙と傷の数だけ強くなれるよ。アスファルトに咲くたんぽぽみたいに
ずんどこ進んでいくと気が付けば空が橙色に染まってきました。時間進むのが早いね。今日はここらで野営をしてまた明日進みましょうか。




