45.私には援軍がいる。こんな嬉しいことはない
私が取った戦法。それは…
ゾンビ作戦だ。
ドレインシードを魔物に当て、生命力を吸い取り、それを魔力に換えて修復、蔓の鎧の再装着等。
何度でも言おう。私がアンデッドで本当に良かった。じゃなかったら痛みで発狂してた。一生ダメージと回復で苦しみ続けるとか、まるで地獄そのものだ。
レッサーリングの軍勢は倒したと思っていたがどうやらまだまだ来るようだ。なんならキングも居る。巨大な身体を持つレッサーリング・キングが目の前に現れ、その圧倒的な存在感に一瞬息を呑んだ。さらに、獣型の魔物たちも迫ってくる。
折れた剣を見つめ、決意を固めた。鋭蜂化で魔力を剣に通し、無理やり武器として使用することを決意した。折れた剣の柄に魔力を集中させ、刃を鋭く強化した。
「私は主人公ってタチじゃないのにこんな展開にしやがって…こんな事にしたやつ許すマジ…まとめてかかってこいやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
叫びながら、キングへ突進した。
キングが大きな拳を振り下ろしてくる。瞬時に思考を加速させ、その攻撃を見切り、素早く回避する。
「クイックスラスト!」
瞬間移動のような速さでキングの腹部に突進し、一撃を加えた。
キングの反撃は強烈だった。巨大な腕が私の体を掴んで持ち上げると、怒りに任せて何度か叩きつけられた。
「いっっっった!?人のことおもちゃみたいに扱いやがって!!」
兜が欠け、体のあちこちが歪んでいく。歪んだ箇所を修復するが攻撃の激しさに直りきらない。何度か叩きつけたキングは私を木に向かって放り投げた。宙を舞った私はかなりの勢いで木へ激突した。
「…くそ…今のは効いたぞ…背中やったかも…お返しあげるよ…!」
「ドレインシード!」
手から種を生成し、キングに向かって投げつけた。種がキングの体に付着し、発芽し根を張るとキングから生命力を吸い取り始める。しかし、キングはそれをものともせず、激しい怒りを込めた攻撃を続けた。
キングの攻撃は激しさを増していく。こん棒のような武器を持ち出し、巨大な拳に代わる強力な攻撃でアルバに向かって襲いかかる。野球じゃないんだからそんなもんフルスイングしないでほしいなぁ~!。強烈な衝撃が左腕を襲い、耳障りな音が響く。思わず左腕を見るともげた跡だけが残っていた。
「こんの野郎…!私の左腕をよくも…私に痛みがあったら大号泣しているところだったぞ!」
悪いが私は柱の男じゃないんでな、泣きわめいてトチ狂いそうになるの鎮めたりなんてしないが今ので肝が冷えて冷静になれた。一方のレッサーリング・キングは私の左腕がもげたことが満足のようで配下と変わらずの汚い笑みを浮かべている。
「しかし…やれやれですね…その程度で勝った気でいるなんてちゃんちゃらおかしいってもんですよ。レッサーリングのキングとはいえたかがしれますね」
私の挑発が効いたのかキングの笑みは怒りの表情へ変わり始めた。
「おや。怒りますか?確信していた勝利の誇りに傷がつきましたか?いいえ傷がつくはずはありませんねぇ!小鬼風情に誇りなんざねーからな!!」
そういうとキングは先ほどまでの魔物らしい戦い方とは打って変わって野生動物同然の突進をしてきた。いいね。さっきまでとは立場逆転だ。そいつを待っていたんだとほくそ笑みたいが顔がない。
「傷つくのは!あんたの顔面だよ!!!リニアショット!!!」
防御を考慮していないキングのあほ面に鋭蜂化で強化された細剣を思いきり突き出すと、口内に命中した。
「ゲギャァ!?」
「どうだこの野郎!!しゃぶれっ!私の剣をしゃぶりやがれってんだよっ!このドグサレがぁぁーッ!」
叫びながら、強化された細剣をキングの口内に突き刺し、その巨体を抑え込んだ。キングは驚きと苦痛の表情を浮かべ、巨大な体が一瞬揺れた。しかし、キングはそのまま力を振り絞り、アルバを剣ごと突き飛ばした。
「ドウカ…オレヲ…ミノガシテクレ…オ、オマエモ…マモノダト…イマキズイタ…マモノドウシ…タスケアエバ…アソコニイル…オンナタチニモ…テヲダサナイ…」
キングは拙い人間の言葉で命乞いを始めた。キングの言葉は切羽詰まっており、苦しみの中でなんとか言葉を紡ぎ出していた。だがしかしこんな、こんな状況においてそんな命乞いは私の心に響くことは無く、逆に脳内にこの状況を見てとあるものを連想した。
「ほう?随分とお粗末ですが、人間の言葉を話すんですね。それで?ここまで殺しあいをしておきながら今さら許してくれということですか?」
「ソ、ソウダ!オレニハコノサキモイキネバナラナイソンザイダ!ゴメンナサイ。タスケテクダサイ…」
ふーん。ここまであのシーンと状況が重なることってあるんですね。じゃあもうこのあとはもうわかりますよね?
「しかしあなたは既に人間の領域入り込んできて、到底許されないレベルのことをしました…」
私の様子にみるみる顔を青ざめるキング。
「だめだね」
「ホラホラホラホラホラホラホラホラホラ!!」
折れているとはいえ鋭い細剣による連続突きを繰り出し、キングの体に何度も剣を突き刺した。細剣は鋭く、キングの顔や体に深い傷を負わせた。
「アキュラシーストライク!」
最後の精密な突きでキングの心臓を狙い、一撃を放った。アルバの剣がキングの心臓に深々と突き刺さり、その巨体が崩れ落ちた。
「こうまでお膳立てされてしまったら処刑シーンを再現したくなるのがオタクってもんよ」
キングが倒れる瞬間、他の魔物たちは一斉に逃げ出し始めた。
戦闘が終わったことを確認すると、思わずへたり込んだ。
「疲れたぁぁぁーーー!!!モブキャラにしては頑張ったほうでしょぉーーー!!!」
脳内再生されていたオラオラのテーマもきっちり終わり無事にケリがついた。バーンッ!
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「カイ団長!あそこです!アルバと別れたのはあの…なっ!?」
増援を呼ぶためにアルバと別れた騎士が目撃したのはとても現実とは思えないような光景であった。辺り一帯に広がっているのは、真っ赤に染まり、死体や血液、臓器らしきものなどが入り乱れているスプラッターな光景だ。
「お、遅かった…アルバはもう」
「…ここで一体何があったのかな。各員アルバくんを探して。あと、二人ぐらいでいいから眠ってしまった団員が集まっているであろうテントの調査に行ってきてね」
「「「はっ!」」」
状況把握のために部下たちへ指示を出しながらカイは考える。
(騎士団に攻撃をするだなんてそうあってはならないことなんだけどね…多分レギルス様へ嫌がらせで他の貴族がやったことなんだろうけど。それにしてもすごい量のレッサーリングだね。スタンピードでも起きないと…いや、まさかキングが居るとかかな?仮にキングでも居ればここまでの規模になりそうだけど)
思考を走らせている内に部下の一人から報告が届く。
「カイ団長。テントの中に居た騎士団員についてなのですが…」
部下からの報告に耳を疑った。
「ケガ人は無し?誰一人として?」
「はっ。テント内に一匹ほどレッサーリングの死体が紛れていましたが、既に首を斬られて絶命しておりました」
「となるとこの血はすべて…」
考え込むカイにさらに報告が届く。
「騎士団長!アルバを発見致しました!かなりボロボロですが無事に生きています!!」
増援を呼びに来た騎士が興奮した様子で戻ってきた。
「それじゃあ。今回の主役を迎えに行こうか。手の空いた人はねぼすけさん達を運んであげてね」
(アルバくん…思っていたよりも面白そうな子が入ってきたかな。今後も何かやらかしてくれそうだ。もしかしたら私の代わりに…なんてね。さすがにレイナに怒られちゃうか)
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激闘の末に私が処したキングの傍でヒーヒー言ってると他の騎士団員達が集まってきてくれた。何人かは私のこと見てめちゃくちゃ驚いていたけど。(左腕損壊、各地欠損&兜と鎧が歪んでしまっている。誰がどうみても死んでいるような状態)
いやはや、私のことを心配してくれる人が結構いてくれてちょっぴり嬉しい。
「やぁやぁ英雄さん。調子はどうかな?」
カイ団長がニコニコしながらこちらに来た。何故だろう。その顔見てると不安になってくる。
「カイ団長。このような姿でお会いしてしまい申し訳ございません」
「いいのいいの。今回はきんきゅーじたいだったからね」
「寛大な配慮に感謝いたします」
「さて、一体何があったのか。説明してもらおっか?」
そこから私は、カイ団長を含めた騎士団員達に聞こえるように説明を始めた。もちろん、私がノリノリで処刑シーンをやったことはお口にチャックで。
「ふぅ~ん…やっぱりキングが居たんだ。ここ最近レッサーリングの姿を見かけないって話があったけどこういうことだったんだ」
「なんとか倒すことが出来て安心しました。…アレが真のレッサーリング・キングなのですね。私が以前戦ったモノとは強さが別格でした」
私が地下に居た頃に倒したのはキングでもデミキングと呼ばれる個体で、キングへと成長するのに失敗した個体とのこと。そりゃあの時の私でもなんとか倒せた訳だ。ちゃんとしたキングならとっくにスクラップにされてたよ。
「ま、でもキミが生きていて安心したよ。せっかくのからかい甲斐のある…じゃなかったかわいい部下を無くすかと思っていたよ」
今なんか一瞬ひどいこといいませんでしたあなた????
「頑張って私の部下たちを守ってくれたからね。今回のはレギルス様に報告しておくよ」
「そ、そこまでしていただかなくても…」
「ほらみんな!英雄さんを連れて帰るよー!アルバくんだけ個別で運んであげてね!」
「団長!?」
こうして私は寝てしまった団員達とは別で荷車に載せて運ばれた。寝てる団員たちはまとめて一個の荷車に運ばれてるけどね。
私には…こんだけ無茶しても助けにきてくれる援軍がいる。こんな嬉しいことはないよ。




