40.ターニングポイント
「へぇ~!それじゃあどうやって帰ってきたの?」
「それはもう私がケンジくんを元気づけて真っ向から立ち向かって倒したから帰れたんですよ。いやぁ~あの魔物は強敵でした。」
「そんなにその魔物は強かったのかしら?」
「なにせ進化する前とは言え私の鎧を嚙み砕いてしまったんですからね。私も嚙み砕かれたときはびっくりしましたよ。こんな魔物が世界には存在していたのか!!って」
私がリーシャ嬢にこれまでのことを話すと面白いように反応してくれるので語っている側としては非常に満足のいく限りでございます。これがオタクに優しいギャルかぁ…
「アルバの話、とっても面白いわ。家にいたら一生聞けないような冒険の話ね」
「喜んでもらえたようで何よりです」
まぁリーシャ嬢がいくら賢そうとはいえ子供だからね。この手の話を聞けば心が躍るものでしょう。ソースは過去の私。
「はぁ~…ちょっとはしゃぎすぎちゃったかも。アルバさん、ごめんなさい。少し休んでもいいかしら?ちょっと疲れちゃったの」
「もちろんです」
こんどは休憩がてらリーシャ嬢の話を聞くことに
「なるほど…お嬢様とか言われていたのでもしやとは思っていましたが。貴族様だったとは」
「そうなの。うちの家って、わたしも自慢できるんだけど、領民に優しくて、みんなと一緒に暮らしている感じなのよ」」
良い貴族さんだ。中堅ポジってだいたい性格悪いとかがお決まりだけど、めっちゃいい人やん。
「素晴らしい思想を持った御家なのですね」
「はい。そんな家に生まれることができて、わたしは本当に幸せだと思っています」
うっまぶし…この人から放たれる圧倒的光属性!幽霊なら近づいただけで浄化されてしまいそうな笑顔ですぜこいつは…
「お嬢様。まもなくお屋敷に到着いたします」
「わかったわ。アルバさん、ごめんなさいね。ここまで話が進むとは思っていなかったの」
あれ、もうそんなに時間が経っていたのか。こりゃびっくり。気づいたら辺りの景色が森から変わっている。
「いえいえ。こちらこそ楽しいお話になりました」
…それにしても…
馬車の中から外の様子を見る。相変わらず6人程度の護衛が周囲を警戒しているのが見える。
…いいなぁ…冒険者もいいけど、ああいう騎士とか私兵とかにも憧れがあるんだよなぁ……ワンチャンリーシャ嬢の下で働かせてもらえないかな。
「…リーシャさん。一つお聞きしたいことがあるのですが…よろしいでしょうか」
「うん、どうぞ」
「もしなんですが…周囲に居る護衛の方々のように私もあなた様の下で働くことは出来るのでしょうか」
「まぁ!」
言っちゃった言っちゃった!とうとう言っちゃったよ!!いやだってやりたいじゃん!〇〇様の騎士!!とかそういうのにさぁ!ちょっと拗らせた人ならみんな憧れるでしょう?
「ん~そうね…わたしだけでは決めるのが厳しいと思うの。わたしだってまだまだ子供よ?そういうのはやっぱりお父様とお話してみないとわからないの」
まーそうだよね。即決されても正直困ってたし。…面接、あるんかな。
しばらくすると立派なお屋敷に到着しました。でっけぇ。こりゃ見事なものですな。
「戻ったわ。うしろに居る鎧を着た人は私の客人よ。この後お父様にお話しがあるけどもてなしてあげてね」
「かしこまりました。お嬢様」
私が感心している間にリーシャさんはメイドさんに話をつけてくれたみたいだ。いやこういうところだと侍女さんかな。
「お客様。どうぞこちらへ」
「あ、すいません。ありがとうございます」
癖で初手すいませんとありがとうございますが出てしまったが気にしないでいこう。大丈夫です侍女さん。なんも悪かったところないのでそんな困惑しないで結構です。
侍女さんに連いて行き二階へと上がり、目的地らしき部屋へと到着した。…私恥ずかしい恰好にはならないよね…?この一張羅っていうか…鎧…
「お父様。リーシャです。ただいま戻りました」
リーシャさんがドアにノックをして声を掛けるとドアの奥から優しそうな男性の声が聞こえてきた。ドアの向こうには声と印象の良く合う優しそうな人が居た。
「おかえりリーシャ。今日は楽しめたかい?」
「はい、お父様。おかげで心も体もスッキリできました!」
「そうかそうか。それは良かった。…して、そちらのお客人は誰かな?」
リーシャさんのお父さんらしき方がこちらへと視線を向けてくる。(さすがに警戒を感じる)
「申し遅れました。わたくしDランク冒険者のアルバ・ローダンテと申します」
私が挨拶と礼を済ませるとリーシャさんのお父さんは少し驚いた後、名乗り返してくれた。
「ティアマト家当主。レギルス・ティアマトだ」
「お父様。この方は道中で倒れていたのところを私が助けたの」
「リーシャがかい?…アルバ殿。詳しく話を聞かせてくれないか」
~かくかくしかじか納豆ねばねば~
「なるほど…何はともあれ無事そうで何よりだ」
お父さん肝座りすぎない?私が魔物だってことスラ~っと流すじゃん。ちょっと悲しい。
「リーシャさまには返しきれないほどのご恩をいただきました」
「さっきも言ったけどあれはわたしがただ放っておけなくてやったことよ。気にしなくていいのに」
「リーシャ、前にもいったけどね。お前は曲がりなりにも貴族の娘だってことを忘れないでほしいんだ。今回はアルバくんのように心優しいものだったかもしれないけど、リーシャに対してひどいことをしようって考えている人も居るんだよ」
「はい…」
「次からは気を付けるようにね」
まってしれっと私殿からくん呼びなってない?
「さて、アルバくん。我が家で働きたい…と聞いたが理由を聞いてもいいかな」
来た!志望動機来た!
「先ほどにも述べさせていただきましたが、私はリーシャさまに命を救われたようなものです。これほどの恩を返さないというのは私が許せません。そして…私はリーシャさまの護衛をしていた方々を見たときに…あのように大切な主君を守るという行動に心を打たれまして、まだまだ世界を知らぬ私ですが、恩義に報いるための騎士として、貴方様の下で働きたいと思いました」
「…」
どうですか!?邪な気持ちは一切ないです!ほんっとうにただ世話になった人に恩返ししたいのと騎士になりたいだけなんです!!
「良し。分かった。恩返しということであればキミの提案を受け入れよう」
まじすか!!
「!。ありがとうございます!」
こうして私はティアマト家の下で働くことを許された。労働万歳!日本人は仕事してないと落ち着かないからね。
配属されるのはティアマト家お抱えの騎士団「タイダルナイツ」という所だ。私は一番下の新米になるけどね。だがこれでいいのよこういうので。
ちなみにタイダルナイツは仇なすものには激流の如く、友好を示すものには緩流のようにと水の満ち引きのような対応をするという意味を持って付けたらしいよ。やるなら徹底抗戦スタイル。
あと入団?採用前に事前に騎士団の方へ私のことをレギルス様が連絡してくれたようで挨拶はスムーズにいった。もちろんあの時の護衛の人たちにはめちゃくちゃ驚かれたぞ☆




