39.どうしてこうなった……
時を戻そう…そうだな。戻すなら…あれは私がベルミアを出発し、王都までの道を歩いているときだった。
いやぁこの旅をするっていう感覚。この頭の中で有名なオーケストラが奏でるメロディーっつーんですか?まるでこれから大作のオペラとかオリンピックでも始まりそうな音楽が聞こえてくるようなこの感覚が癖になるって言いたくなるんだぜぇ私はヨォ。
さておき、そろそろ私が歩んできた旅路とやらを見てやろうじゃありませんか。
腰につけたマジックバッグの中に手を突っ込み、目当てのものを探す。これ、違うな。これ、じゃない。これ、それ雑巾。これ?違う。じゃあこれ?はずれ。お?これだな?目的のものを見つけた。地図を掴んで引っ張り出す。え~と、ベルミアがここで、王都イルデーロが…
地図から自分の位置を割り出そうとにらめっこを始めた次の瞬間。
「あれ?」
手元から地図が無くなってしまった。なんて運が悪いんだ自分は。まさかこんなピンポイントで強風がくるだなんて考えないでしょ。ヒロインのスカートを狙う強風じゃないんだからさ…どこまで飛んだんだ?
「アホー」
周囲を見渡していると空から変な鳴き声が聞こえてくる。
「アホー」
「アホーて…ギャグ漫画じゃないんだから…変な鳥もいるもんだなぁ…さすが異世界」
ふと、鳴き声の主を探す。見つけた。灰色の少し大きい鳥だ。顔もなんか頭悪そう(この感想も頭悪いけど)。なんか物持ってるし…どこかからなめし革でもパクってきたのかな。ん?
「アホー」
「あれって…なーんか、見覚えがあるような」
「アホー」
空を見ろ!鳥だ!飛行機だ!いや、私の地図だー!なーんだそこにあったのか、そりゃ通りで見つからないわけだよ。だって鳥がかっさらってったんだから。なるほどなるほど納得がいったよ。あっはっはっはっは
「…いや納得するかぁー!!!」
なぁ~にしてやがってんですかぁ!?あのクソボケ鳥畜生は!!!
「戻れ!!!私の地図を返せ!!!!お前のじゃないぞ!!!僕のだゾッ!!!」
「アホー」
「鳥頭の癖に私に向かってあほとかぬかしとるんじゃねぇぞこのボケッ!降りてこいやこのやろー!!」
ふざけやがってあの鳥公!!!それ私の思い出の品だぞ!!よくも取りやがって!お前だけは絶対に”許”さ”ん”!”!”
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こうして私はボケナスチキンを追いかけて近場の森に何も考えずに突っ込んで行きました。えぇそうです。案の定迷いました。
…それと私が倒れていたことと何が関係あるかって?まぁそうかっかしないで落ち着いて聞いてください。ほら、このサービスのテキーラでも飲んで。
さてと。まずね私にはね。弱点が増えていたの。炎のことじゃないよ?あのね。私って進化したじゃん?進化して植物が入ったじゃん?
…魔力を自動的に消費するようになっちゃってたぽいんよね…。あれだよ、あの…中途半端に生命が宿ったから…栄養の代わりに…ね?魔力を消費して体を動かしている…と、私は予想いたしました。
はい。さんざん迷いまくった結果。魔力切れを起こして動けなくなりました。急にね。空腹感みたいなやつを感じたかと思ったら全身がだるくなってきたのよ。それでバタンキュー。
時は戻りまして、気を失った私が次に見たのはぼやけたシルフォエットだったんですよ。暗視のある私に視界がボヤけるだなんて…!?ってなりましたよ。で辛うじて声が聞き取れたので死にかけの声で魔力が欲しいですっていったらポーションをいただきました。
それにしてもね。かわいらしい声の持ち主さんがポーションを飲ませてくれそうな時にね。いきなりピタって止まられたときにね。死を感じたよ。「やっぱやーめた」ってやられるんじゃないかって。実際はどう飲ませたらいいのか分かってなかったらしいからね。まぁ気絶した人に水を飲ませるなんてやったことないよね。戸惑うのもわかる。結局私がそのままダバーってやっちゃってって伝えたら…お口の中が地獄絵図じゃあ~ってなった無事復活。後味は最悪だが無事に復活!!!で、今に至るってわけ。
「いやぁ~助かりましたよ。まさか地図を鳥に取られて奪い返そうとして迷うとは思ってもいませんでした」
「ぶ、無事なようで何よりですわ。改めて、わたしの名前はリーシャ・ティアマトと申します。以後お見知りおきを」
おぉ!!なんか貴族らしい女性の方だと思っていたけど本当にお嬢様じゃん!!!そうそう。異世界といえばこういうお嬢様キャラだよね。うんうん目の保養目の保養。
「あ、申し遅れました。私Dランク冒険者のアルバ・ローダンテでございます。見ず知らずの冒険者なんかを助けていただき本当にありがとうございました」
「べ、別にいいのよ…あんなの見捨てでもしたら気になって仕方ないもの」
はぁ~さすが貴族様だぁ。これがノブレス・オブリージュってやつすか。すごい。心なしか後光が見えなくもない。
「それよりあなた…どうしてこんなところで倒れていたのかしら?」
「お嬢様。あまりお近づきになってはいけません。何かあっては困ります」
護衛らしき人達がじりじりとリーシャさんの周囲に集まってきた。さすきぞ(さすが貴族)
「え~と…実は私、王都イルデーロというところを目指していた途中でして…」
「あら。イルデーロへ?どうしてかしら?」
「お嬢様!」
「しっ。せっかく冒険者と会えたのよ?貴重な機会を逃したくないのよ」
「ですが…わかりました」
「わたしの護衛が失礼したわ。さ、続きをお願い」
リーシャさんの言葉で下がっていった護衛の人達。護衛たちはリーシャの背後で腕を組み、一瞬たりとも警戒を緩めることなくこちらの様子を伺っていた。
「分かりました。先ほどの質問ですが、特に依頼を受けたというわけではなく…私が…私が世界についてもっと知りたいと思い、ベルミアから旅をしに来た。ということです」
「わたしから見ると貴方はかなり熟練の冒険者に見えるのだけど?」
「実はこう見えてまだ1歳にも満たない若造でして…」
そういうとリーシャさん含め、周囲の人たちの顔が固まってしまった。あれ…もしかしてオレ何かやっちゃいました?
「いいいいいい1歳未満ですって!?どう見てもあなた大人でしょう!?」
「貴様あまりお嬢様をからかうのもいい加減にしろ!」
「冗談ではありませんよ!どうして信じてもらe…あ」
そういえば…
私が魔物だって言ってないもんね。そうじゃなかったらただの頭おかしいやべーやつじゃん。
「ごめんなさい。皆さんに伝え忘れていたことありました」
「「「?」」」
「よいしょっと…」
私は自分の頭をつかみ、胴体から取り外して地面に置く。そしてそのまま座って武器を目の前に置いてから両手を上げて戦闘の意思がないことを見せながら口間違えたバイザーを開いた。
「私実は魔物なんです」
その瞬間周囲にいた護衛の人たちが一斉に剣を抜いて陣形を構えた。恐ろしく速い戦闘隊形。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「え?え?え?みんなどうしたの?」
「お嬢様お下がりください!!こいつは危険な魔物です!冒険者なんぞではありません!!」
な、なんだって!?信じられない!こんな無防備な姿でそこまで警戒するかぁ!?
「え?そこまで警戒することあります?私そんな危険に見えます?」
「黙れ!邪悪な魔物が口を開くな!怪しいとは思ったが倒れた冒険者を装って我らに不意打ちをしようとは!!」
ボロクソすぎてさすがに泣いた
「あの私、人間に危害を加えるような魔物じゃないですよ。それにちゃんと冒険者のライセンスもありますし」
そう言って腰のバッグからライセンスを取り出そうとしたらものすごい勢いでまくし立てられました。おい。そろそろ泣くぞ。
「…みんな一度落ち着いて。一度彼の話を聞いてみましょう?今だって彼、わざわざ武器と頭を捨てているのよ?私でも見れば敵意がないよう分かる彼なりの配慮なんじゃないの?」
「ですが…」
「はい!みんな一度冷静になって!アルバさん。わたしにそのライセンスというものを見せていただけないかしら」
「おぉ!ありがとうございます。今お渡しします」
私はライセンスを取り出すと立ち上がってリーシャさんの元へ近づき、ライセンスを手渡した。もちろん頭が外れた状態でな!!
「へぇ~…本当に頭が外れているわ。あなた本当に魔物なのね」
リーシャさんはどうやら私の中が空洞になっていることに興味深々のようだ。どうですか?私の頭と同じくらいスッカスカなんですよ~…ってオイ!
「ちなみに頭だけじゃないですよ。腕も足も外して動かすこともできるんですよ。…まぁちょっと虫みたいで気持ち悪いかもしれませんが」
「そうなの!?面白いわね…それじゃあこのライセンス見させてもらうわよ」
リーシャ嬢(一度やってみたかった呼び方)はライセンスに目を通しながら感嘆の声を上げ、何人かの護衛も覗き見るように見始めた。なんだかんだ気になってんじゃん。
「ほら、やっぱり話は聞いてみるものよ。ちゃんと冒険者だって書いてあるじゃない」
「た、確かにそう…書いてありますね」
「これではギルドがこの魔物を認めたということに…」
うんうん。この展開。非常に私的に満足する反応だ。どこぞの将軍みたいな満足顔をしそうだよ。顔無いけど
「ねぇ!アルバさんが良ければこの後もお話できないかしら?」
おっとぉ。お誘いされてしまったねぇ。まぁ…地図も結局もう無くしちゃったし…
「もちろんです。リーシャさんが良ければぜひとも」
「やった!それじゃあ中で話しましょう」
そういうとリーシャさんは眩しい笑顔で笑ったあと馬車の中に入っていった。あんなの見せられたら断るわけにもいかないやん。それにちょっとくらい寄り道するのが冒険ってものでしょ?いいじゃないかこのくらい。それに私のこれまでの冒険を誰かに話したくて私の心が叫んでいるからね。
リーシャさんに誘われるがままに私も馬車の中へ入っていった。外にはぽかんとした顔の護衛だけが残されていた…
こーはんへつづく!




