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住人志望のアルバ  作者: 星を見る猫
はじまりのものがたり
36/58

36.なじむ!実に!なじむぞ!この新しいボディは!

 ギルドの酒場で馴染みの冒険者たちと話していると、そのうちの一人が、顔に興奮の色を浮かべながら話しかけてきた。


 「なぁなぁアルバ。例のアレ俺にもやってみてくれよ!」


 興奮を抑えきれない様子で、目が輝いている。アレっていうのは…うん。


 「アレそんな気軽に人に向けてやっていい技じゃないんですけど」


 私は困りつつも、冒険者の熱意に負けた。こういうのって断ったら面倒くさいし。


 「いいからいいから!ちゃんと回復ポーションも持ってきているから!」


 と、彼は満面の笑みでポーションを取り出し、説得力を増すように見せびらかした。まぁ…ポーションあるならやっても大丈夫…かな?


 「しょうがないですね…行きますよ?」


 「ドレインシード!」


 私の手から小さな種が生まれ、その種を目の前の冒険者に飛ばす。


 種が命中するや否や、彼の体に根を張り、急速に若葉が生える。根からは緑色の光が吸い上げられ、若葉から光の玉が生成されて私の方へと飛んできた。


 それに触れると私に少し満たされたような感覚が流れてくる


 「うぅぅぅぉぉぉぉぉぉ…!これは確かにキツイな!」


 冒険者は苦悶の表情を浮かべ、体を震わせながら呻いた。


 「はい。もう満足しました?じゃあ解除しますんで」


 私が指を鳴らすと、冒険者に寄生していた植物は突然枯れ始め、あっという間に塵となって消えてしまった。


 冒険者はすぐにポーションの栓を抜き、中身を一気に飲み干した。


 「プハッ!いやぁ~これは思っていたよりも強烈だったな。見た目こそあんなちっこいのにここまで恐ろしいとはな」


 彼はまだ汗をかきながら息を整えつつ、感嘆の声を漏らした。そりゃあね。吸収攻撃って物理とかと違ってダイレクトにHP削るからね。


 「だろ?前の俺もまさしくそれって感じだったんだよな」


 別の冒険者が苦笑いしながら同意した。前やったときはポーション用意してなくて軽い騒ぎになったけどね


 「あぁ、こいつは確かに二度と喰らいたくないな」


 彼は肩をすくめながら、他の冒険者たちにも共感を求めるように振り返った。


 「私はそれの10倍キツいのやられたんですけどね」


 「「「おぉ、おっかねおっかね!」」」


 そう…この新スキルのドレインシード。簡単に説明しよう。某天堂のポケットの友達のやどりぎのタネだ。それの2割怖くした感じ。しかもこれの吸収の強さは私の匙加減でいじれる。なんだこのぶっ壊れ。


 「こうなるとアルバに喧嘩を売った奴がかわいそうでならないな!」


 「ふっふっふ。水一滴すら残さずに搾りかすにしてやりますよ」


 ちなみに寄生されると何を吸い取られるのかというと、相手の栄養とか生命力とかを吸い取るらしい。つけるだけで殺せるようなものじゃん。


 「ただ火に弱くなったんだって?そうなるとうっかり魔法の誤射なんてしちまったら…」彼は心配そうに顔をしかめた。


 「燃えカスになりますね」それに私は軽く肩をすくめて答えた。だってどうしようもないじゃん


 「しっかしすごいよなぁ。アルバのスキルはどれも強いと思うんだがよ。何故かちゃんと弱点も用意されてあるんだよな」


 「世の中には完ぺきな存在など居ないってことですよ」


 「既に死んでいるようなお前が言うのか」


 「だまらっしゃい」


 まったくこの世界ときたら遠慮無しにこういう発言するんだからやんなっちゃうわ。


 「しかしレベルすら吸い取る花か…夢みたいな話だぜ…」


 彼は再び驚嘆の声を漏らした。


 「私もあの時にステータスを確認しては無かったですけど、もしかしたら下がっていたかもしれません。実際、あいつに寄生されるとどんどん力が抜けていきましたからね」


 「怖いんだがよ…俺としてはそれを逆に吸収したっていうアルバのほうが怖いんだが」


 「そうだよ。お前そんなことどうやってやったんだ」


 別の冒険者が疑問を投げかけた。


 「どうって言われましても…私にも分からないんですよ。あのときにやれば何故かできてしまった。というので」


 私がアンデッドだからかな?いやでも関係ないか…リビングアーマーだから、自分の体を動かす関係で魔力的なのを動かせる…おい頼むよ。学力低いオタクにあまり長考させないでくれ。頭が爆発する。


 「まぁなんだっていいじゃねぇか。問題は解決した。アルバは強くなった。俺たちが楽できる。悪いことなんか一つもないだろ?」


 「そうだな」


 「そんな簡単に言われても…」


 あれからあの花のこと気にしてるんだぞ?こっちは。ギルドで調べても情報は無し、王都にある本部に聞いてもなんも無し。あの日以降そういった事件が起きることも無し。影も形もさっぱりと消えてなくなってしまったし。


 「気にするなって。そうだ。アルバはこの先どうするんだ?」

 

 「どうする…と、言いますと?」

 

 「お前は今Dランクだろ?ベルミアはCランクまでの冒険者が居れる町だからよ。俺たちみたいに留まってずっと暮らしていくのか。それとも町から出て新しい冒険をしに行くとかだよ」


 今後ねぇ…私の目標はどっかの騎士団にでも入ってそれらしいことをして生活することだからね。ベルミアにとどまるのは良くないことなんだけど…なんだかここでの暮らしに慣れてしまったしなぁ…


 「悩んでいるんですよね。ベルミアの外を見に行くことにも興味があるんですが、今のこの生活にも愛着があるんですよ。皆さんと過ごすこの生活が」


 「アルバ…」


 「なかなかにうれしいことを言ってくれるじゃねぇか…」


 「へへ…」


 冒険者の一人が感動した表情で私を見つめる。別の冒険者が瞳を潤ませ、誇らしげに頷いた。もう一人は照れ臭そうに笑った。



 「…皆さん」





 ぷ、



 

 「「「「「ははははははは!!」」」」」


 私たち冒険者は突然笑い出し、酒場の雰囲気が一気に和んだ。


 「俺たちにこの雰囲気にあわねーな!」一人が笑いながら叫んだ。


 「まったくだよ!冒険者がこんなしんみりしてどうすんだよ。せっかく酒まであるんだぞ?」別の冒険者が肩を揺らして笑った。


 「そうだ!アルバ!別に俺たちに気を遣う必要とかいらないんだぜ?別にいまこの町は大きな問題を抱えてるわけでも無いしな」


 「そうですね。なんだか気にしてたのが馬鹿馬鹿しく思えてきました」私は胸のつかえが取れたように感じた。実を言うと表面ではあんな感じにふるまってたけどほんとは出ていくのが申し訳なかったんだけどね…


 「おう。お前の人生なんだ。好きに生きればいんだよ!」


 「別に冒険者を辞めるってわけでもないんだろ?ベルミアから出て合わなかったら帰ってくれば良い!」


 …あったかいな。心が温まるような言葉に、胸の奥の辺りがじんわりと熱くなった。


 「そうですよ。アルバさん。ベルミアに居てくれるのもいいですけど、世界は広いんですから一回ぐらい見てきたほうがいいですよ!」



 いつの間にかクレハさんとマサトくんも私たちの席に来ていた。


 「良いのですか?クレハさん。人手はあった方がいいと思うのですが」


 「特段困っているわけでもありませんし、気にし過ぎですよ。ケンジさんなんてもっと強くなりたいから。な~んて言ってつい昨日出て行ったんですよ?」クレハさんは微笑みながら言った。


 え、まじか。ケンジ修行の旅にでも出たんか。主人公みたいな事しやがって


 「マサトくんは良かったんですか?今ここに居るってことはケンジさんと一緒に行かなかったということなのでしょうが」


 「ぼくはここに残ります。僕は特に強くなりたいとかもないので…この町でのんびりと暮らせたらなって。それに、お世話になった皆さんに恩返しもしたいですし!」


 ええ子や…ものっそいええ子やん…うぅ…幸せになれよ…いや余計な心配か。しれっとクレハさんと今も手を繋いでるし…うん!頑張れよ!


 うーん…ベルミアの外か…この周辺だと村が3つ程度?にここより少し小さな町が一つ。結構離れたところに王都があるしな…目指すなら王都かな…?

 

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