22.誰なんだあんた一体
前回のあらすじ 転生者を見つけてしまった。
「うそ~ん…えっと…マジ?」
ダメだ何回見直しても結果が変わらない、私の目の前に日本人がいるという事象は変えられない。そして匂ってくるトラブルの予感!!
「えと…こういうときってどうするんだっけ?とりあえず反応があるか確かめるんだっけ?」
もっと保健体育の勉強しておけばよかったななんて思いつつ、学生くんの肩に触れて揺さぶってみる
「もしもーし?大丈夫ですか~?」
しかし彼からの反応はない。顔を覗き込むと目は閉じたままだし、瞼を慎重に上げさせてみても反応が無い。
「うん。いったん気絶ってことで、脈図ろうとしても分からんし、体温も分からないからベルミアに連れて帰ろっか」
てなわけでよっこらしょっっっっと!!わ、軽く感じる。これは私の力が強いからか?それとも単純にこの人が軽いだけかな?運びやすいからどうだっていいんだけど。
学生くんを背負いながらベルミアへ向けて私は移動した。
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「いや~迷子にならなくてほんと良かった。ここで沼ってたら死体が増えることになってたかも」
ベルミアの門が見えたのでほっと胸をなでおろす。夜がすこし明けてきたかも、薬師さん多分寝てるよな…まぁ緊急事態ってことで勘弁してもらおう。
夜明け前の冷たい空気が肌を刺すように感じながら、私は学生くんを背負ってベルミアの門へと急いだ。あたりはまだ薄暗く、静けさが漂っている。足元の石畳が微かに冷たく、足音が響く。
おっと忘れてた。私はうまいこと学生くんを片手で背負いながら腰につけてあるランタンを外して空いているもう片方の手でランタンをいつもよりも早く振り回した。
門の方からも似たような合図が来たのでそのまま近づいていく。
「おーいアルバー!」
警備していた衛兵さんが気づいて駆け寄ってきた。彼の声には警戒と驚きが交じっていた。
「お疲れ様です。なんとか戻ってきました」
「相変わらず夜に出かけると遅いな。それより…」
衛兵さんが私から視線を外し、背中の方へ向けた。
「そいつはどうしたんだ?お前からのランタンの合図がいつもと違ったから何かがあったと思ったんだが」
衛兵さんの声には、尋問のような鋭さがあった。私はその視線に少し戸惑いながらも、冷静に説明を試みた。
「え~と…私も詳しくは分からないんですけど、外れの方にある森に倒れてたので慌てて拾ってきました」
衛兵さんは眉をひそめ、さらに学生くんを見つめた。その目には疑念と不安が浮かんでいた。
「森に…いったい…それにこの見たこともない恰好はなんだ?どこかの魔術師…いや貴族か?」
「見当も…とはいえ男性とはいえ華奢な体つきだったので放置も出来ませんでした」
内心では「イヤーイッタイドコノヒトナンダロウナー」と思いつつも、外見は冷静を保った。
「分かった。ひとまず俺たちの方でこいつは預かっておこう」
衛兵さんは決断力のある声で言ったが、その目にはまだ疑念が残っていた。
「お願いします。う~ん」
「どうした?」
衛兵さんが問いかける。
「いえ、やっぱり気になってしまって。彼が目覚めるまで私が見ていてもいいですか?」
「そうか。分かった。ならこいつはアルバに任せるとしよう。詰め所に病人用のベッドがあったはずだからそこを使ってくれ」
「了解しました。彼が危険人物だった場合任せてください」
私は自信を持って答えたが、心の中では彼が危険人物でないことを祈っていた。地雷引いてたらどうしよう。外見だとむかつくタイプじゃないと思うんだけど
「そうじゃないことを祈るんだがな」
衛兵さんの言葉は重く、彼もまた同じ心配をしていることが伝わってきた。
衛兵さんに別れを告げ、詰め所の中へ入る。病人用の~…確かこのドアを1…2…ここかな?ドアを開けて部屋に入るとベッドの他に小さいテーブルやイスに非常用のポーションと包帯があった。うん、ここっぽさそう
学生くんをベッドに寝かせ、様子を見る
「…こりゃ当分起きそうにないかな。本持ってくれば良かった」
そう思いながら、私はイスに腰を下ろした。うん!暇!!
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しばらく時間が経って窓から光が差し込んできました。…暇すぎる…これもしかして転生したときに死んじゃったオチかな?やだなぁ…こんな子の死体なんて処理したくないんだけど
「頼むからちゃんと生きててくれよ~…ほんとに勘弁してくれよ~…」
すると突然学生君の瞼が微かに動き、彼の目がゆっくりと開いた。
「あ、目が覚めました?大丈夫ですか?」
学生くんはぼんやりとした目で周囲を見回し、状況を把握しようとする。彼は自分の状況に驚き、混乱した表情を浮かべた。
「ここは…どこだ…?えっ!?よ、鎧!?」
私は学生くんに説明するために慎重にコンタクトした。
「落ち着いてください。ここはベルミアの町にある衛兵の詰め所です。森の中に倒れているのを私が見つけて運んできました。自分のこととか分かりますか?」
学生くんは混乱しながらも、思い出すように努力してくれた。
「俺は…俺の名前は…まさと…高橋正人です」
あー完全に日本人だねこれ。どうすっか…私としては…ここの住人だと思ってもらいたいし…うん。キャラ作りするか
「タカハシマサト?変わった名前ですね…私の名前はアルバです。貴方が無事そうで何よりです。倒れる前のこととか覚えていますか?」
マサトは頭を抑えながら思い出すように努力した。
「俺は…そうだ、学校が終わって家に帰る途中だった。横断歩道で小学生が急に飛び出してきて、それを助けようとしてトラックに突っ込まれて…その後は覚えてない。」
マサトの記憶が断片的に戻り始める。彼は自分が異世界にいることにまだ信じられない様子だった。
…もうトラックのこと異世界転生装置って改名したほうがいいんじゃないの?すっげーテンプレ的な転生してきてるじゃん。かわいそ
「ガッコー?ショウガクセイ?トラック?」
私は異世界の住人らしく小学校とかがわかってないようにふるまった。首もかしげてそれっぽくね
「トラックっていうのは、大きな車みたいなもので…人や物を運ぶためのものなんだ。とにかく、とても大きくて速いんだよ」
マサトくんは分からないフリをした私に驚きながらも説明をしてくれた。優しいねキミ。
「なるほど…恐らく馬車のようなものでしょうね。それに轢かれた…と、本当に貴方が無事で良かったです。馬車に轢かれて亡くなる子供だっていましたからね」
マサトくんは混乱しつつも、アルバの言葉に少しずつ落ち着きを取り戻し始めたみたいだ。
「ありがとうアルバさん。…もしかしてここ…異世界ってやつなんじゃ…」
おやぁ~~~?????こいつもしかして私と同族だな?さてはこいつこういうモノ知ってるな?
「どうかしましたか?」
「い、いやなんでもないよ。それより…ここっていったいどこなんだ?」
おっとこれは来ましたねぇ…一回やってみたかったんですよこれ!
「ここはベルミアという町です。貴方がどこから来たのかは分かりませんが…歓迎しますよ!」
ようこそニュービー!歓迎しよう。盛大にな!!
私が両手を広げ、歓迎の気持ちを表すと心なしかマサトくんの目は輝いているように見えた。
「本当に…異世界に来ちゃったんだ…!」
マサトくん、小さい声で呟いちゃったのかもしれないけどお兄さんそればっちり聞こえてるからね。私にこれ以上ニヤつかせないでおくれ。




