19.間話 受付嬢クレハ
こんにちは。クレハです。数日前にギルドに新しい仲間ができました。普通の冒険者さんじゃないんですよ?すっごく興味を惹かれる方なんです!それが…今あのテーブルで四苦八苦してるリビングアーマーのアルバ・ローダンテさんです。あの人?鎧って言ってあげたほうがいいんでしょうか?それは置いておいて、実はあの人、魔物なんです!
数日前、あの方がギルドに入ったときのことを思い出すと…すごかったですね…アルバさんはこの町、ベルミアにある初心者用のダンジョンで生まれたそうなんです。報告を受けたときはびっくりしましたよ!ベルミアのダンジョンにはリビングアーマーなんて今まで出現したことがないんです。ベルミアの近くと言うと…山を越えたところにある古遺跡ぐらいなんです。初心者の人からすると、リビングアーマーなんてかなりの強敵なんですよ。
鎧の身体ならではの高い防御力と重さを利用した攻撃、生きている魔物と違って毒とかも効かないので初心者さんには太刀打ちできないんですよ。まれに再生能力まである個体が生まれますからね…報告をしに来た冒険者さんもびっくりする訳です。
あ!ごめんなさい。話がそれちゃいましたね。え~っと、アルバさんのお話でしたね。あの人が地上のベルミアを目指した理由がアルバさんのお師匠様のご遺体を届けるためだったそうなんです。お師匠さまは…私たちがよく知っている方でした…高ランクになってもベルミアに残ってくれていた私たちにとって英雄といってもいいくらいのお方…ヴィルガルムさんでした。
ヴィルガルムさんは、私がこのギルドに入る10年以上も前から冒険者だったそうで、その年ではまれに見ないレベルの勢いでBランクまで昇りつめた人だったんです。昔のこととか何故冒険者になったとかは聞けなかったんですけどね。でも、ヴィルガルムさんの戦いを見たときそのすごさがわかりました。ベルミア周辺のダンジョンで魔物が大量発生し、ダンジョン外まで溢れてくる現象、スタンピードが発生し、ベルミアの中まで魔物が入ってきたときがあったんです。冒険者さんたちの陣形を抜けて冒険者ギルドの方まで抜けてくる魔物が居て、それが物資の運搬をしていた私に襲い掛かってきたんです。あの時はもうダメかと思いましたよ!あぁ…これで私は死んでしまうんだ…せめて最後に王都の美味しいスイーツが食べたかったな…って考えていて…気づいたら私に襲い掛かってきた魔物が倒されていたんです。
目を明けたときにはびっくりしましたよ!目の前に魔物の死体があったんで。周りを見渡したらヴィルガルムさんが立っていて、「嬢ちゃん、ケガはないか?どうやら間に合ったようだな」って声をかけてくれたんです。これでヴィルガルムさんがもっと若かったら私あの人に恋してしまうかと思いましたよ…それくらいかっこよかったんです。そこからもすごくて、「俺はちょいとばかしあいつらを片付けてくるからな。嬢ちゃんたちは危ないから下がっておけ。おい!お前ら!少し本気だすから他の冒険者共も下がらせろ!」って言って、ヴィルガルムさんが腰を落として構えたら…あっという間にあれだけいた魔物が倒されちゃったんです。
普段はただのお爺さんって感じなんですけどね~…あのときに私はヴィルガルムさんという冒険者としての姿を知ったんです。だから…あのヴィルガルムさんが亡くなられたとアルバさんから聞いたときはさうがの私も衝撃を受けましたよ…ヴィルガルムさんからはダンジョンに行く前にもう自分は短くない。最期に思い入れのあるダンジョンを見て回って引退したい。って言われて…おとなしくゆっくりされてはって言ったんですけどね。止まりませんでした。しかももし俺が2カ月近く帰らなかったら死んだってことにしておけだなんて言われてしまって…笑いながら言っていたのではじめは私もギルドマスターも冗談かと思っていましたよ。ですが、ヴィルガルムさんが行ってから3カ月半が過ぎました。ギルドも慌ててあのダンジョンへ捜索を出しましたが、何故か5階層より下層へ降りる階段が消えていたんです。それから…ギルド側は何回か冒険者たちへ捜索依頼を出しながら待ち続けました。いつか帰ってくるはずと信じながら。…まさかこんな形で再開するとは思いませんでした。
…あ、すいません!ちょっと、悲しい話ばかりでしたね。少しだけ私にとってですけど明るい話をしましょうか。アルバさん、なんで今ああやってテーブルで苦しんでいると思いますか?あの人、あんなに普通に話せるのに冒険者の一般常識がまったくないんです!ですのでギルド側で最低ランクのライセンスを発行してからは私たちで少しずつ教えているんです。あの人の反応ってすっごく面白いんですよ?もう子供みたいにいちいち大げさに反応するんです。
「…えぇ?さっきの薬草とまるっきり同じじゃないか…何々?根っこを持った時にピリっとした感覚がするほうが毒で、スースーするほうが薬になる…簡単な確かめかたは抜いてから籠手などを外して根を触ること……え?私はどうすれば!?」
ふふ、ほんと一個一個の反応が面白いですね。子供に教えている気分になりますよ。後で葉の生え方をよく見ればわかることを教えてあげないと。でもアルバさんは冒険者としてはとても良いひとです。ちゃんと勉強してから依頼を受けに来ますからね。…やっぱりあの時に調べないで受けた依頼で失敗したの気にしてるのかな?あの人、一度薬草の納品をしにきたときに似ているけど薬にしてしまうと痒みが止まらなくなるものと間違えてしまったんですよ。しかも割合で言えば正しい薬草2割と痒みの方が8割なんです。もう受付したときには初心者さんにはよくある間違えですって伝えたんですけどね。それにしてもあんなに自身満々で持ってきてくださったのに…ふふ、思い出したら笑っちゃう。
「クレハちゃーん、依頼を受注したいだけどー」
「はいただいま!」
さて、そろそろ業務に戻らないとですね。
一回こういうのやってみたかった。by読む側だった人間




