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住人志望のアルバ  作者: 星を見る猫
はじまりのものがたり
18/58

18.待て!話せばわかる!!いやほんと話せるから!!

いい加減に区切ろうとしたら普段より結構長くなったってまじ?

 「やはり俺の勘は当たっていたようだな」


 ギルドマスターの目は鋭く、私をじっと見つめていた。部屋の中は緊張感に包まれていて、クレハさんも戸惑った表情を浮かべている。


 「うそ…見た目だと普通の人間みたいなのに…」


 っふ。もう煮るなり焼くなり好きにしてくださいよ。あんな高速土下座できたのすごいと思うし情けないよ。


 「すいません。聖水だけはマジで勘弁してください」

 

 ギルドマスターの声は冷静だが、その鋭い眼光が私を貫くようだ。あぁもう心がえぐれそうだ・


 「聖水を嫌う…お前アンデッドだな?それに鎧を着ている…リビングアーマーか」


 「はい…おっしゃるとおりです…改めましてわたくしリビングアーマーのアルバ・ローダンテと申します…人間に害を与えるつもりはまったくないのでお許しください…」


 「魔物が…土下座しながら申し訳なさそうに喋ってる…」


 クレハさん辞めて、その珍しいとなんだこいつの半々の視線はやめて。いまそれがいっちばん刺さるから。

 

 「…なんのためにここに来た。理由を言え」


 ギルドマスターはさらに鋭い声で問いかけてきた。私は深く息を吸い、理由を説明する決心をした。

 …理由は…うん…言わないと…ダメだよね。


 「理由…ですか…私は…私は、遺体を…届けに来ました」


 「…誰のだ」


 「見ればわかる人だと…思います。手記にギルドのことも書かれていたので…」


 私は首に下げていた小袋から師匠の遺体が入った魔法の箱を取り出し、ギルドマスターへ手渡した。彼は箱をじっと見つめた後、クレハに指示を出した。


 「…クレハ、開封剤を持ってこい」


 「わ、分かりました!」

 

 クレハさんは急いでドアを開けて走って行った。開封剤とは何だろうかと疑問に思いながら、私は部屋の静寂を感じていた。



 3分ぐらい経っただろうか、こういう時の時間というのはとてつもなく長く感じる。腕を組んで目を瞑っていたギルドマスターが口を開いた。


 「開ける前に聞きたいことがある」


 「なんでしょうか」


 「中に入っているやつとはどういった関係だ」


 ギルドマスターが尋ねてきた。でもやっぱり私は…


 「…私が目覚めてから数カ月、具体的な日数はわかりませんが。剣のことなどまるで分らなかった私を弟子に取ってくれたお方です」


 具体的には言えない


 「そうか。…待て、お前の持っている剣…それに師匠だと…?まさかこの中に居るのは…」

 

 ギルドマスターの言葉に、私は視線を落とした。その瞬間、クレハさんが戻ってきた。


 「ギルドマスター!見つかりました!」


 クレハさんが栓をしていても少しツンとくるようなにおいがしてくる瓶を持ってきた。あれが開封剤ってやつかな

 ギルドマスターの問いに対して黙ってた理由なんだけど…それはおそらく知り合いであろうあなた方には直接見てほしいと私が思ったから…


 

 ギルドマスターがクレハさんから瓶を受け取ると栓を抜いて小さな箱に掛け始めた。においすごいな。めっちゃ口のなか酸っぱくなる。でもあの二人はなんとも無さそうだ。


 瓶の中が空になると箱からはジュージューと焼けるような音がしてきた。これ大丈夫?なんか溶けてない?


 心配した次の瞬間には箱は煙となって中から…中から師匠のご遺体が出てきた


 「そんな…!」

 

 箱の主の正体に気づいたギルドマスターはいつの間にか私を殴っていた。痛みは感じないが、視界がぐらつくような感覚になる。


 「この野郎!!何が人間に害を与えるつもりはないとかほざきやがって!!!こいつは…こいつは…!お前が殺した!!そうに決まってるだろう!!?」


 「ヴィル…ガルムさん…」


 …やっぱり知り合いですよね。じゃなきゃギルドでの出来事なんかあんな書かれてないよね…

 ギルドマスターは殴り飛ばした私に近づいて首をつかんで持ち上げた。


 「答えろ!!お前が殺したのか!!!」


 「落ち着いてくださいギルドマスター!まだアルバさんから何も言われてないじゃないですか!」

 

 クレハさんがギルドマスターの腕を掴んで、私を放してくれた。ギルドマスターの息が落ち着くのを待ってから私は語りだした。


 「師匠は…お二人の知っているとおり、最後の冒険をするためにあのダンジョンへ入ったそうです。その7階で私は目覚め、彷徨う内に師匠が魔物に囲まれているところに遭遇したんです。私も…魔物ですが、放ってはおけないと思って加勢に行ったんです。まぁ結果から言えば助けなんていらなかったんですけどね。そこから師匠に何故か気に入って貰えて、師匠の元で剣を学ばせていただきました」

 

 ギルドマスターはじっと私の話を聞いていた。クレハさんも黙って頷いている。


 「そんなある日、師匠の体調が悪化していることに気づいた私は考えてしまったのです。師匠がもしかしたら近いうちに死んでしまうのではと。そして…先日、師匠から最後の実践訓練に誘われた私は…その訓練で師匠に…剣の勢いを止めれずに刺してしまいました…」


 「ッツ!やはりお前が…!」


 「続きを…聞いてください!倒れた師匠に駆け寄った私は…師匠から最初からこうなることを分かった上でやった。と言われました。その後、私は師匠から遺体をギルドへ届けることと、師匠を楽にするよう頼まれました」


 ギルドマスターの表情が揺らぐ。


 「そんな…」


 「私だって…師匠を殺すつもりなどまったくありませんでした。ですが本気でやらなければ師匠には勝てません。私は…師匠の気持ち、期待に応えるために全力で挑んだ。病で弱っているとはいえ師匠は師匠なんだと数ヶ月程度の縁ですが、そう信頼していたのです。だからこそ、あの時に師匠が私の一撃を防がなかったのが理解できないのです。私はただ…師匠と最後の訓練をするだけと思っていたのに」


 一通り私が語り尽くすと、ギルドマスターは落ち着いてくれたようだ。私としてはほんとうは許されてはいけないんじゃないかって考えてしまうのだけどもね。あれは事故だったんだ!とは言えるけど、私の中だとやっぱり…”私が殺した”って気持ちでいっぱいだ。


 「ご理解…できましたでしょうか…?」


 「…正直完全に納得しているわけじゃあねぇ。だが、だからといってお前を責める。というのももう違う話だろう。まったく、話を聞いた限りなら病でくたばるくらいならだれかに殺されるほうがマシだなんてあいつらしい」


 ギルドマスターはようやく怒りを収め、落ち着きを取り戻した様子だ。その顔は先ほどまでの険しい表情とは打って変わって、どこか懐かしさを感じる表情をしていた。やはり師匠とは特別な仲だったんでしょうね。


 「…そうですね。ヴィルガルムさんらしいといえばらしいです。私もあの人が病気って言われてもなんだか信じられないって思いますよ」


 クレハさんもほっとした様子で、優しく微笑んでいる。


 師匠ってやっぱりすごいなぁ…!こんなに色々な人にさぁ…気にかけてもらって、信頼されて…それなのに私は……いや、あんまりくよくよしてられないな。師匠はあれで良いって言ってくれたんだ。いつまでもあのことを気にし続けて立ち止まってたりしてたらそれこそ師匠に殴られるよ。私はちゃんと、乗り越えて進まなきゃいけないんだ。


 「ギルドマスター、クレハさん。お聞きいただきありがとうございました。これで師匠に頼まれたことを無事に済ませることが出来ました」

 

 「あぁ。ヴィルガルムを届けてくれたこと感謝する。この後お前はどうするんだ?その調子だと行く当てに困っていると思うんだが」


 ギク


 「あ~え~っと…そうですぅ…ねぇ……はい…」


 ”あ”~~~~忘れていた~…届けることばっか考えていてその先のことまったく考えてなかった!!見切り発車はやめろとあれだけ言われているのに…どうするか…


 その時、クレハさんがギルドマスターに耳打ちをするのが聞こえた。彼女は軽く身を屈めて、ギルドマスターの耳元で囁く。


 「ギルドマスター、ちょっと提案があるのですが…アルバさんに冒険者としてギルドに加わってもらうのはいかがでしょうか?彼の能力を考えると、きっと役に立つ存在になると思います。」

 

 ギルドマスターはクレハの言葉を聞いて、少し考え込んだ。彼とクレハはこそこそと話し合いを始めた。

 

 え?ちょっと私は???本人には参加権無し?

 

 「…確かに。彼の能力は認めざるを得ない。だが…」


 「大丈夫ですよ、ギルドマスター。アルバさんは信頼できると私は思います。」


 …寂しいな。自分を放置して自分についてこそこそ話されると内容に限らずモヤる…

 こそこそとした話し合いの後、ギルドマスターは決断したように頷いた。


 「よし決めた。アルバ。お前に提案がある。このギルドの冒険者として、ここで働いてみるつもりはないか?」


 えマジ?いいの?


 「私が…冒険者にですか??えっと…いいんですか?私としてはなれるならなってみたいんですけどその…私ってほら…魔物じゃないですか」


 「確かにそうだな。だがお前にはこうして人と会話をするだけの知性がある。協力的だしな。それにせっかく磨いた腕っぷしを使わないのも勿体ないだろう?」


 「それは…そうですけど…本当にいいんですか?」


 クレハさんも優しく微笑んで、私に手を差し伸べた。


「それに、私たちもあなたの力を必要としていますよ。ここで一緒に頑張りませんか?」

  

 その言葉に、私はほっとした気持ちになった。実をいうと異世界にこれてうれしいのもあったけど、先を考えたら不安だったんだよね。魔物だから一生人とのかかわりで苦しみ続けるのかな…って思っていたし…うん、師匠の遺志を胸に、ギルドマスターやクレハさんの支えを受けて、ここで新しいスタートを切るのも悪くないかな。


 「ありがとうございます。では、お言葉に甘えてここでお世話になります」


 ギルドマスターとクレハさんは頷き、私を歓迎してくれた。


 「お前からすれば心配することだらけだと思うが、今は休んで、新しい生活にゆっくりと慣れていけばいい。だが、冒険者になったからにはきっちり仕事もしてもらうぞ?」


 「あ、あはは…世間知らずですのでお手柔らかに…」


 こうして、私は冒険者の一員として新たな生活を始めることとなった。これからどんな冒険が待っているのか、期待と不安が入り混じる中で、私は新たな目標に向かって歩き出した。異世界新生活。満喫できればいいなぁ…

 

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