10.これまでの恨みとお世話になった感謝をもってあんたを倒す!
師匠の体調が日に日に悪化していく中、ある朝、師匠は私を呼び寄せた。彼の顔色は相変わらず悪いが、普段と比べると幾分かましになっているように見えた。そしてその目には決意の光が宿っていた。今日の師匠には何かあるな
「最後の実践訓練をやるぞ。」
なるほどね。私は一瞬驚いたが、すぐに師匠の意図を察し、頷いた。この訓練が師匠との最後の時間となるかもしれないという思いが頭をよぎる。
「はいはい分かりましたよ師匠。今日という今日はあなたに膝をつかせてやりますよ」
いつもと変わらない様子の私を見て師匠は微笑みながら、私を広場へ連れて行った。そこにはいつも訓練を行っていた場所が広がっていた。
「最後の修行内容なんだが…ルールは簡単だ。俺に一発でも当てたらお前の勝ちだ。俺の方は”最期”まで逃げ切ったら俺の勝ちってな感じだ」
「ま~たそうやって無茶苦茶なこと言って~…ま、わかりましたよ。”1発”でも当てたら勝ちなんですね?おぉいいじゃありませんかやってやりますよ。さんざん私のこと馬鹿にした師匠なんか泣かせてやりますよ」
「ほ~う?お前さん随分と生意気ぬかす弟子に育ったみてぇだな?馬鹿弟子にはお灸を据えてやらないとな」
「そっちこそ負けた時に本調子じゃなかったからだってだだこねないでくださいよ?」
軽口を叩きあいながら私たちは広場の中央に立ち、互いに向き合った。師匠の目には決意と覚悟が宿っていた。やはり師匠のオーラはすごいな。あれで本当に弱体化しまくったのか疑いたくなるね。
「準備はいいか?」
「いつでもどうぞ師匠」
私が返答をすると師匠はニヤッとしてから剣を構えた。
「胸を借りるつもりでかかってこい」
「それは私のセリフでしょうっ!!」
師匠の合図とともに、私は一気に距離を詰めた。細剣を振りかざし、師匠に向かって突進する。しかし、師匠の動きはいつもとくらべてはかなり遅い方だが素早く、まるで風のように私の攻撃をかわしていく。
「どうした?その調子だと俺の勝ちは決まったようなもんだな?」
師匠の余裕そうな声が響く中、私は何度も攻撃を繰り返した。だが、師匠の動きは未だに鋭く、私の攻撃は一度も当たらなかった。
「一発でも当てれば勝てるんで余裕を持っていこうと思っているだけですよ」
表面上ではこんな余裕ぶっこいてる私だが内心はめっちゃピンチ。いつもの私ならどうしよどうしょワーワーギャーギャー言っているがさすがにね?私も成長しているからちょっとずつだけど冷静になろうとしている。さて次はどうするか
「ぼさっとしている場合か?俺が反撃してこないとでも考えているのならそれはやめといたほうがいいぞ」
どうやら向こうの方は逃げ切るよりも私を無力化してしまおうという魂胆らしい。まぁそうですよね。誰もこっちは逃げ切れば勝ちだがそのその間反撃はしないだなんて言ってませんもんね。
「私としてはそのまま逃げ続けてくれたら楽出来たんですけどね…っと!」
師匠から放たれる攻撃を何とか捌く、これでデバフかかりまくってるのかぁ…師匠やっぱやばいな。逃げでも攻めでも強いんだよね。さてどうしよう。私もなんとか一手考えないと逃げ切られる。だけど考えるのも今は…!?っとと危ない危ない
師匠の考え事をする隙を許さない一撃が私の目の前をかすめた。なんでいまの避けれたのかわからないけどなんとかなったのでヨシ。
「手厳しいですね師匠。でもそっちは飛ばしすぎなんじゃないですか?」
「…どうだろうな」
笑みを浮かべる師匠。だがその額には普段流れるところ見たことがない汗が見える。…今が仕掛け時かな…?
師匠の疲れを悟った私は体勢を立て直し、剣をしっかりと握りこんでから師匠へ向かって全力で飛び込んだ。




