3話 私、呪われているみたいです
城下町に着いた。とても賑わっていて楽しそう。
「ここが、人間の国の城下」
「……ミュニア、あれを」
第二王女が行方不明。これってもしかして、私の事?
この国はずっと、私の事を探していてくれた?
「城へ行ってみよう」
「うん」
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期待していた。私、捨てられたわけじゃないんだって。
見つかって、歓迎されると思っていた。良かったと言ってくれると思っていた。
「なぜ連れてきた」
「行方不明の王女と知ったので」
「呪われた王女などいらん。おい、牢へ入れておけ」
頭が真っ白になった。目の前の出来事を受け入れる事なんてできなかった。
そんな中で、温かい手が触れた。
「そうか。なら、彼女はおれが貰い受ける。悪魔を敵に回したくないなら、どうすれば良いか分かるだろう」
「……勝手にしろ」
「ミュニア、ここから帰ろう」
「……うん」
ただ、お姉ちゃんに会いたい。それだけだったのに。こんな事になるなんて。こんな事を言われるなんて。
止まらない涙。城から出てもずっと。
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「ミュニア、確認したい事がある。その、呪いは、本当にまだあるのかだ」
「そんなの、あるに決まってる。だって、呪いは、成長したって、消える事ないから」
一度呪いを受ければ、成長で、消える事なんてない。
だから、ずっと呪われてるままだよ。
「天界に行くぞ」
アディグアがそう言うと、急に景色が変わった。
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ここは、宮殿だ。天界の。
「アディグア、キサマ、ミュニアを嫁に貰おうなどと」
天界に帰るや否や、お兄ちゃんが、アディグアに突っかかった。
「あの場ではああ言う他無かっただけだと言うのに、このシスコンが」
「ああ、そうだとも。シスコンだ。シスコンで何が悪い?シスコンのどこに恥じるべき事がある?」
「……それはどうでも良い。そんな事より、ヨジェド、ミュニアの呪いは、もう無いという事で良いな?」
なんでお兄ちゃんにそれを聞くの?
何も頭に入ってこない。何も考えたく無い。もう、呪いの話なんて聞きたくない。
「当然だ。オレは、あの王に一番の信頼を受けていた臣下だ。そのくらい、拾ったその日に終わっている」
「と言いながら、王にやってもらったのでは?」
「ギクッ⁉︎」
「ミュニア、もう呪いは無い。あの方が、その程度の呪い如きに遅れを取るような方ではない。天族として育ったのであれば、王を信じてやれ」
「そうだ。この兄と、陛下を信じればいい」
あの女の子が、でも、そんな事できるようには見えなかった。
「今まで、話した事が無かったが、姫……陛下は、ああ見えて、お一人で魔物の群れを殲滅できる強さの持ち主だ。それに、数少ない癒してでもある。その呪いも、偶然遊びにきていた陛下に頼んで、解いてもらった」
「魔族の王から、ミュニアへと預かっている物がある」
アディグアから、手紙を貰った。
【ヨジェドの自慢の妹へ
生まれた時、悪い魔法使いが、君に呪いをかけた。
あの国は、君を捨てる事を選んだ。でも、ヨジェドは、君を育てる事を選んだ。
あの呪いは、本来、身に宿した時点で処分対象だ。解呪不可能の呪いだから。ヨジェドは、それを知りながら、僕らに頼んだ。君を助けて欲しいと。
助けてくれるなら、全てを捨てても良いと。
僕は、その意志を尊重する。あの子も、その呪いを解きたいと言っていた。それを尊重する。
管理者の名において嘘じゃ無いと誓う。君の呪いは、完全に消えている。
最後に、君を助けたヨジェドを大事に。
管理者の統率より】
管理者、名前だけ聞いた事がある。私、管理者様に助けられていたなんて。でも、どうして、管理者様が?
「ミュニア、精霊の王に会っただろう」
「あの、穏やかそうな男の子?」
「そうだ。彼が、管理者の統率だ。彼が、陛下と共に、助けてくれた。処分対象ももみ消して」
私、こんなにもお兄ちゃんに愛されてた。それに、管理者様に王に……今の私は、知らないうちに、こんなにも多い人に助けてもらっていた。
私が、助けてもらっていた人達にできる事は……
私は、涙を拭いて、前を向いた。笑った。
「ミュニア、ところで、その、アディグアの伴侶に」
「えっ?あっ⁉︎えっと、私、アディグアになら、良いかも」
「アディグアーーーーーー‼︎‼︎‼︎」
お兄ちゃんが今まで見せた事のない、怖い顔を見せた。夢に出てきそう。
「き、キサマ、ミュニアがオレの妹だと知って起きながら」
「妹離れしろ、シスコン」
「黙れえーー!キサマの意見など聞いとらんわあー!」
意見ですらないと思う。どうしよう。お兄ちゃんが、メチャクチャ面白い。
でも、これ以上、お兄ちゃんの品性を損ねるような事をさせないために止めないと。
「お、お兄ちゃん、結婚くらい好きにさせて」
間違えた。言う事間違えて、火に油を注いじゃったかも。
「アディグアーー‼︎キサマ、誰の許しを得て、ミュニアに結婚という言葉を教えたあー‼︎」
えっ、私って、結婚って言葉知らない事になってた?お兄ちゃんの中では?十六歳なのに。十六歳なのに。
「……ヨジェド、流石にその認識はやばい」
「黙れえー‼︎オレ達の姫は、十六になろうと、結婚って何と言っていたわあー‼︎」
ごめんなさい、管理者様。私、お兄ちゃんが、王への侮辱罪とか言われても庇えません。大事にと、手紙で書いてくださったのに。
「……ねぇ、ヨジェド」
「ゲッ⁉︎ひ、姫様」
あっ、あの子だ。
「イェリウィヴァから、ミュニアを紹介しろって言われて、一度戻ってみれば」
「これは、王としての権限が残ってたら、侮辱罪にでもなりそうだね」
「お前ら、ほどほどにしとけよ」
「ち、違うんです。あの男が、私の大事な妹を誑かすからなのです!」
「たぶらかす?なぁに?それ」
「君は覚えなくて良いよ。ミュニア、あの手紙読んでくれた?」
「はい。ありがとうございます。私」
「一つだけ追加しておくよ。ヨジェドの、王への数々の暴言、侮辱と疑わしき言動に関しては、一切庇わなくて良いから」
管理者様、笑顔が怖いです。
「それと、早いけど、結婚おめでとう。イェリウィヴァ、出てきて良いよ」
とても美しい人。これが、噂に聞く、原初の樹イェリウィヴァ様。
「貴方にとっての試練。乗り越えられた事、大変嬉しゅう思います。姉君と、会う事ができるのを願っております。わたくしは、貴方を天族として、正式に迎え入れたいのです。お受けになって貰えましょうか?」
「はい」
「ミディ達から、ミュニアにプレゼント。ミュニアのおねぇちゃんの部屋への転移魔法具」
「あ、ありがとうございます」
「また、会おうね。次は、ミュニアの結婚式とか。忙しくても、必ず来るから。魔族の国には、帰る事ができないけど」
アディグアに言っていたのは、そういう事なんだ。魔族の国には帰れないから、会えない。
なら、わがまま言ってでも、結婚式は天界でやる。
「じゃあね。ミュニア」
「うん。じゃあね」
私、これでお姉ちゃんに会う。それで、アディグアとの結婚式に、みんなを呼ぶね。
お兄ちゃんは……王がああ言っているなら、黙ると思う。