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そのダンジョンシェルパは龍をも導く  作者: 坂門
その条件が煽る焦燥

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その条件が煽る焦燥 Ⅱ

「あのう⋯⋯ミアさん。運ぶアイテムって決まっているのですか?」

「いいえ。当日、ギルドで選定したいくつかのアイテムを、スタート直前にくじにして引いた物になります。ですので、事前に準備するのは不可能ですよ」

「なるほど。しかし、また何で犬なんでしょう? 豚や、猫もそうですけど」

「私も詳しくは知りませんが、ギルド預かりになる以前から、潜行者(ダイバー)同士で、そう呼び合っていたものがそのまま定着したようです。たしか、豚は小屋の中にたくさんいる(さま)から、団体戦を想起させ、猫はボスの座を賭けた一対一の喧嘩の様から、犬は投げた玉を走って取りに行く様から速さ勝負になったって聞いています。真偽のほどは確かではありませんけど」

「玉をアイテムに見立てた、という感じですね」

「サーラさんは相変わらず勉強熱心ですね」

「いやぁ~知りたがりなだけですよ」


 少し照れるサーラを見つめ、ミアは笑みを深める。


「サーラさん、元気になって本当に良かった。もし、あの時ベヒーモスの皮を身に付けていなかったら⋯⋯って、考えるだけでゾッとしてしまいます」

「そ、そうなんですか??」

「詳しい状況をお伺いした感じから、もし、ベヒーモスのショートケープを纏っていなかったら、屍人(グール)の様に、体が爆散してしまっていたかも知れません。それだけ危険だったのです」

「そ、そうですか⋯⋯グリアムさん⋯⋯いや、皆さんのおかげですね」


 屍人(グール)の群れを一撃で爆散させるほどの威力を持つ魔法を、潜行者(ダイバー)を視認したうえで放った理不尽。

 そしてその魔法を吸収したベヒーモスのショートケープをたまたま纏っていた幸運、もしそれがなかったら結果は最悪だったに違いない。

 口調は穏やかながらも、そこにはミアの怒りが垣間見える。だが、同時に表情からはミアの安堵も伝わり、サーラは少し照れてしまった。


「それでグリアムさん、(Doggy)の条件は何にいたします? ふたつ挙げて下さい」

「ああ⋯⋯」


 グリアムはミアに言われると、自信からなのか余裕を見せる笑みを見せ、続く言葉にゆったりと間を持たせた。


「⋯⋯ひとつめは助っ人の容認。さすがに動けるのがヴィヴィとサーラだけじゃ勝負にならん。そんでふたつめ⋯⋯負けた場合パーティーを解散し、財産を全て勝者に譲渡する」

「「え?!」」


 初めて聞かされたヴィヴィとサーラは声を出して驚き、ミアの表情も硬くなってしまう。


「師匠! 負けたら家取られちゃいますよ」

「ああ」

「一生懸命貯めてるイヴァンのお金もだよ!」

「ああ、そうだ」

「すいません、だいぶ私情が入ってしまいますが、その条件で本当によろしいのですか?」


 グリアムはニヤリと冷たい笑みを見せ、言い放った。


「勝ちゃあいい」

「確かに!」


 ヴィヴィはポンとひとつ手を打ち納得して見せるが、サーラとミアの不安は拭えない。


「なりふり構わずラウラにも出張って貰うんだ。勝つさ」

「勝つね!」

「いや、でも師匠、なにもパーティーの解散と全財産を賭けなくともいいかと思うんですが」

「ですよね⋯⋯」


 グリアムはサーラとミアに意味深な笑みを返し、背もたれに体を預ける。

 余裕を見せるグリアムだが、サーラの不安は拭えず、その不安の矛先はミアにも向いた。


「それとむこうレプティルアンビションが、勝負を受託した場合、条件の提示はどのタイミングで行われるのですか? こちらの条件が先に伝わるとしたら、勝負を申し込んだ方が不利になりません?」

「大丈夫、心配しないで。条件が開示されるのは、お互いに勝負を受託した後、同時に開示されます。準備が必要な条件もあるでしょう。例えば、さっきグリアムさんの挙げた、助っ人の容認なんかがそう。むこうも助っ人を使えないと不公平になっちゃいますから」

「こちらの条件を見たうえで、条件を後だしする事は出来ないと」

「そう言う事です。あくまで公平じゃないとね」

「ですよねぇ。そこは少しホッとしました」


 胸を撫で下ろすサーラに、ミアも微笑んだ。


■□■□


 ――――グリアム達とミアの密談直後。


 床に酒瓶が転がり、煙草の紫煙は締め切った部屋で揺らめき続ける。陽光を遮るカーテンの隙間から射し込む光は、舞い上がる埃を映し出し、淀んだ空気をさらに演出していた。

 飲み掛けの酒瓶や食べ残した皿が乱雑に置かれているテーブルに、筋肉質の男は足を置き、アルコールに飲み込まれた体は高いびきを掻いていた。

 ペシっと封筒で高いびきの男の頬を何度も張るが、一向に起きない様に、痩せた男はひとつ舌を打つと、いびきをかいている男の耳元へ口を寄せる。


「チッ、おい! 起きろ! エルンスト」

「⋯⋯ぁ?」


 エルンストは薄眼で男を確認すると、また目を閉じた。


「てめぇ! 起きろって言ってんだろう! ほら、早駆け(そくたつ)だ」

「⋯⋯うるせえな。あとにしろ」

()()()、からだぞ⋯⋯」

「チッ、何だってんだ⋯⋯っつたくよう⋯⋯」


 その言葉にエルンストは、まだ覚醒していない頭を無理やり揺り起こしていった。


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