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そのダンジョンシェルパは龍をも導く  作者: 坂門
その本拠地(ホーム)にて

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その本拠地(ホーム)にて Ⅲ

「そっか! 私がS級の地図師(マッパー)を探しているのを知っていた。そして、グリアムさんを気にした⋯⋯」

「そう。S級の地図師(マッパー)が、もしいたら、地図師(マッパー)でトップだと思っていた自身のアイデンティティが崩れちゃう⋯⋯ぷぷぷぷ、ここでも二番手だよ、アイツ」

「自分がトップである確証を得るために、グリアムさんに絡んでいた⋯⋯でも、リオンの認識としては、ただのシェルパなんじゃないの? あ、あの事は知らないはずだ⋯⋯し⋯⋯」


 何故か気まずそうに口ごもるアザリアから、グリアムはそっと視線を外した。そして、彼女達の言葉に一理あると、納得もしていた。


「ん~でも、私達と仲良くしているのは気になるんじゃない。出来立ての小さなパーティーをウチが気にするって、それだけで何かありそうって思ってもおかしくはない⋯⋯かな? だとしたら、なんかゴメン!」


 両手を合わせて頭を下げるラウラに、グリアムは慌てて否定をすると、サーラやヴィヴィもそれに続いた。


「いやいや、そのおかげでどれだけ助かった事か」

「そうですよ! ラウラさんがいなかったら、何も成し遂げられませんでしたよ」

「そうだよ! ラウラ、友達でしょう」

「えへ、そうかな。そう言って貰えると何か嬉しいね」


 珍しく照れて見せるラウラに、アザリアは軽く不貞腐れながら羨望の眼差しを向ける。【クラウスファミリア(クラウスの家族)】から、尊敬と感謝の念を向けられるラウラが羨ましくて仕方ないのだろう。


「む~。でも、もし【レプティルアンビション(爬虫類の野心)】の後ろに【ライアークルーク(賢い噓つき)】がいるとしたら、【クラウスファミリア】に申し訳ないです。私達(ノーヴァアザリア)が近づいたせいかも知れませんもの」

「いや、今回の【レプティルアンビション】の件に関しては、【ノーヴァアザリア】はまったく関係ない。たまたま、やられたのがサーラだったってだけだ。もしかしたら、カロルやアリーチェだった可能性もあったんだしな。だが、不幸中の幸いでもある。リオン・カークスがキレ者なら、自分の手を汚さずに、気になる【クラウスファミリア】と気に入らない【ノーヴァアザリア】にちょっかいを出せる。リオンが賢いヤツなら、静観を決め込むんじゃねえのか。そうなれば、ウチらは動きやすい。後ろで【ノーヴァアザリア】と【ライアークルーク】が睨みあってくれてれば、こっちは単純に【レプティルアンビション】を潰す事だけ考えればいい⋯⋯と、まぁ、言ったものの【レプティルアンビション】の後ろに【ライアークルーク】がいるのか、まだ分からんけどな」

「任せて。きっちり調べて来るよ」

「心強いね」


 親指を立てて(サムズアップ)見せるラウラに、グリアムは軽く微笑んで見せた。その微笑みに、アザリアは両手で口を押さえ思わず絶句してしまう。


 この、ほ、微笑み! この表情!


 遠い記憶の微笑みと重なるその微笑みに、アザリアは頭から湯気を出るんじゃないかと思うほど顔を真っ赤にして、固まってしまった。


「この人、大丈夫? おーい」


 ヴィヴィが身を乗り出し、アザリアの顔の前で手を振ると、ラウラがポンとヴィヴィの肩に呆れ顔で手を置いた。


「ヴィヴィちゃん、大丈夫だからそっとしておいて。そのうち元に戻るからさ」

「そっか、ならいいか」

「そう言えば、テールのど乾いてない? お水持って来るね」


 ラウラは水差しから小皿に水を入れ、丸まって寝ているテールの前にそっと置く。テールはゆっくりと起き上がり、舌を使って器用に水を飲み始めた。


「テールは大人しくてホントにかわいいね」

「ふふん~でしょう~」


 ラウラは水を飲んでいるテールの大きな背中を優しく愛でる。


「ウチは大所帯だけど、調教師(テイマー)がいないんだよね。ウチにも(ワンコ)欲しいなぁ。ねえ、アザリア、ウチでも犬飼おうよ」

「え? へ? 犬? あ⋯⋯かわいいよね」


 心ここにあらずのアザリアの生返事に、ラウラはダメだとばかりに首を振った。その何でもない会話にグリアムは何故か引っ掛かりを覚える。


 犬⋯⋯あっ!


 突然顔を上げるグリアムに、サーラは首を傾げながら声を掛けた。


「し、師匠、どうしました??」

「⋯⋯犬」


 茫然と呟くグリアムにサーラは怪訝な表情でさらに首を傾げた。


「犬? テールがどうかしました?」

「いや、違う、テールじゃなくて! ギルドのほら、あれだ、パーティーのいざこざのやつ」


 慌てふためくグリアムに、一同は顔を見合わせると、一斉に困惑に包まれる。


「グリアム、何言ってんの?」

「パーティーのいざこざにギルドが介入してさぁ⋯⋯ほら、あるじゃんか」

「あ!」


 ポンとサーラが手を打った。


「それ、犬じゃなくて(Piggy)じゃないですか? じいちゃんが良く話してくれました」

「「「豚?」」」


 サーラの言葉は、アザリアを筆頭にラウラとヴィヴィの困惑をさらに深めてしまう。


「サーラ、豚って何??」


 ヴィヴィが眉間に皺を寄せ、険しい表情でサーラに迫ると、サーラはひとつ、微笑み持って答えていった。


「じいちゃんのいたパーティーが、他のパーティーに良く絡まれていたので、(Piggy)でいつも解決してたって言ってました」

「だから、その豚って何よ」

「えっと⋯⋯たしか、ギルドが介入して、互いにパーティーから代表者を数名出して模擬戦を行い、話し合いで解決しない問題を解決してたと言ってました」

「その模擬戦の事を豚って言うの? 何で?」

「さぁ、そこまでは私には分かりません。なにせ50年以上前の話ですから」

「ふぅ~ん」


 分かったような分からないような、何とも言えない心持ちのヴィヴィだが、それ以上聞こうとはしなかった。きっとこれ以上聞いても分からないという事だけは理解したのだろう。

 困惑するヴィヴィを余所に、グリアムはパチンと指を鳴らす。


「まさしくそれだよ。たしか、(Piggy)(Kitty)(Doggy)って、三種類から選べたはずだ」


 晴れやかな表情を見せるグリアムに、アザリアやラウラは困惑を更に深めていた。何を言っているのか、ヴィヴィではないが、要領を得ないと感じていた。


「グリアムさんの言っている豚猫犬? って何? さっぱりなんだけど」


 お手上げとばかりラウラは首を横に振ると、アザリアも頷き同意して見せる。グリアムはニヤリと口端を上げ、意味ありげに微笑んで見せた。


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