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そのダンジョンシェルパは龍をも導く  作者: 坂門
その本拠地(ホーム)にて

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その本拠地(ホーム)にて Ⅰ

 ラウラが大きな扉を開け放つと、吹き抜けの広い玄関口が現れた。左右に見える大きな階段は二階、そして三階へと繋がり、真正面には再び大きな両開きの扉が目に入る。そして左右に伸びる廊下からは、いくつもの扉が映り、壁は柔らかな乳白色(アイボリー)で統一されていた。

 潜行者(ダイバー)達が集まる場とは思えないほど、柔和な雰囲気を感じさせる。それこそ高級ホテルのような佇まいに、グリアム達はこぞって足を止め、思わず見入ってしまった。

 だが、正面の大きな両開きの扉からは、構成員(メンバー)が常に出入りしており、静かながら活気を生んでいる。その姿に、やはりここはパーティーの本拠地(ホーム)なのだと再認識した。


「ゴメンね、落ち着かなくて。この扉の向こうが、みんなの使う大集会所になっていてさ、いつもバタついているんだよね。一階はうるさいから、二階行こうか。こっちこっち」


 【ノーヴァアザリア(新星のアザリア)】の熱にあてられたのか、グリアムは茫然と吹き抜けの玄関を見上げていた。乳白色の壁から続く高い天井が、窓の外からの陽光を取り込み、キラキラと輝いている。グリアムは、その光景に思わず見惚れていた。


「どうしたの? こっちだよ」

「あぁ⋯⋯すまん」


 手招きするラウラは、グリアム達を二階へと誘う。シンプルな細工の施された手すりの感触を確かめながら、グリアム達は二階へと上がって行った。

 二階の中心部には、存在感を見せる大きな扉がひとつだけあり、左右に伸びる廊下を覗けば、一階と同じようにいくつもの扉が散見出来た。

 廊下を歩き出すと、カチャっと後ろで扉の開く音が届き、一同は振り返る。大きな扉が開くと、赤髪の見知った女性が無防備に顔を出した。


「ラウラ? あれ? そちらの⋯⋯方々は⋯⋯!?」


 現れたのは、この大パーティーのリーダー、アザリア・マルテその人。グリアム達の姿が目に入ると、顔を真っ赤にして、ドギマギと言葉を詰まらせ、アタフタしてしまう。その姿から中央都市セラタが誇る大パーティーのリーダーという面影は、欠片も見当たらない。

 ラウラは、そんなアザリアにしたり顔を見せると、不敵な笑みを向けた。


「あら、アザリア! グリアムさん達が、()()()に会いに来たの。応接間借りるよ」


 したり顔のラウラに、アザリアはしどろもどろになりながらも、この状況(チャンス)を逃すまいと、動かない頭を必死に動かしていた。


「え? あ、うん。どうぞ⋯⋯よ、ようこそ、()()()達の本拠地(ホーム)へ。ゆっくりして行って下さい。あ! の、のちほど、わ、わたしも、そちらに顔を⋯⋯」


 俯くアザリアに、ラウラは呆れて見せた。


「あんた、仕事が山積みでしょう」


 ラウラが指先でアザリアのおでこを押すと、アザリアは恨み節たっぷりに睨み返した。


「すぐに終わらすんだからね!!」

「まったくもう⋯⋯みんな、こちらへどうぞ~」


 捨て台詞らしからぬ言葉を残し、アザリアは業務へと舞い戻る。ラウラは我がリーダーの姿に、やれやれと嘆息しながら、呆気に取られているグリアム達を扉の中へと案内した。

 来客時に使う応接間は、嫌味のないシンプルな調度品が飾られ、腰を下ろすと体を包み込むほど柔らかなソファーが部屋の中央に鎮座している。いつも綺麗にしているのが分かる手入れの行き届いた部屋に、グリアムは少しばかり落ち着かない心持ちで、ソファーに体を預けていった。


「ねえねえ、これふっかふかだよ~。グリアム、ウチもこれ買おう」

「どこに置くんだよ」

「ヴィヴィさん、師匠の家は、()()、質素で奥ゆかしい感じが良いんじゃないですか」


 なんだろう。この、褒められているのに、薄っすらと(ディス)されている感じ。


 ソファーの感触を確かめるように跳ねているヴィヴィと一緒に、テールが首を上下させていた。その緊張感のない光景と柔和な雰囲気が相まって、本来の目的を忘れそうになってしまう。


「アハ、ここはお客さんを通すところだからね、ちょっと見栄を張ってるのよ。それで、今日はどうしたんですか?」


 ラウラがみんなにお茶を差し出し、ソファーに腰を下ろすと、グリアムは懐から小袋を三つ、テーブルの上に取り出した。


「忘れないうちに、渡しておくぞ。この間の稼ぎだ」

「律儀だね。ありがたく頂いておくね。で?」


 ラウラは微笑みを湛えたまま、剣吞な雰囲気を纏う。その雰囲気からして、話の大枠は、既に分かっているのだと伝わった。


「ま、あんたの考えている通りだ。この間のクソパーティーについて、頼み事があって来た」

「いよいよ、動くんだね」


 グリアムの言葉にラウラは微笑みから、不敵な笑みへと表情を変化させる。その姿から静かな熱を、グリアム達は感じ取っていた。

 コン、コン、コン⋯⋯と静かなノックと共に、アザリアが申し訳なさそうに顔を半分だけ見せる。


「⋯⋯し、仕事終わらせたんで、な、中に入っても、よろしいですか?」

「本当? 早すぎじゃない?」

「本当だって。ちゃんと終わらせたよ」


 頬を膨らますアザリアに、グリアムは手招きをした。


「もちろん。あんたのところの若いやつらも、巻き込んじまったからな」

「は、はい! 失礼します」


 自分の本拠地(ホーム)だというのに、激しく緊張しているアザリアの姿にラウラは嘆息し、ヴィヴィとサーラは首を傾げる。


「なんでアザリアは、自分ん()で、緊張してんの?」

「まぁまぁ、ヴィヴィちゃん、そっとしておいてあげて。その内普通に戻るからさ。アザリアに内容は報告済みなんで、続けようか」


 ラウラに促されグリアムは続ける。


「ギルドで確認したところ、あのクソパーティーは【レプティルアンビション(爬虫類の野心)】で間違いない。B(クラス)の中堅パーティーだ。最近、上層や下層をメインに活動をしているN級やD級の潜行者(ダイバー)から、ヤツらに対する苦情がギルドに多数寄せられ、実際被害も出ている」

「B級のクセに随分とクズいね。あの時しっかりシメておけば良かった」

「まぁ、あの状況でもめるのは得策じゃねえ。【ノーヴァアザリア(新星のアザリア)】の紋章を見ても全くビビッていなかったんだ、その自信に繋がる何かしらの根拠があるはずだ」


 グリアムは自分の気を落ち着かせようと、カップに手を掛けた。アザリアから先程までのアタフタした雰囲気は消え、A級潜行者(ダイバー)の顔を見せ始める。


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