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そのダンジョンシェルパは龍をも導く  作者: 坂門
その初潜行で初体験

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その初潜行で初体験 Ⅰ

 イヴァンはギルドの扉をくぐると、受付へ向かうことを少し躊躇する。サーラの加入を許した自分の判断が正しかったのか、まだ少しだけ迷いがあった。

 窓口から覗くミアの顔を見つけ、イヴァンは意を決し、窓口の前へと進んだ。


「ミアさん、新規メンバーの登録をお願いします」


 その言葉にパァっと明るい笑みを浮かべるミアを見て、先程までの迷いは少しばかり薄らいでいく自分の単純さに、イヴァンは思わず苦笑いを浮かべてしまう。だが、やはり「なぜ?」という言葉は頭の中から消えてはいなかった。


「彼女を入れたのね、よかった、よかった。きっと彼女、イヴァンくんの力になってくれるわよ」

「う~ん、そこがわからないんですよ。ミアさんもグリアムさんも、どうしてそこまで彼女を薦めるんですか?」

「そうね⋯⋯まず、彼女はギルドからの話をちゃんと聞く。それこそ、彼女自身が理解するまでこっちは質問攻めよ。どっかのだれかさんなんて、碌に話も聞かず飛び出しちゃうもんね~。そんな人には、しっかり話を聞ける仲間が必要でしょう」

「いやぁ~」


 いたずらっぽく見つめるミアに、イヴァンは後ろ手に頭を掻いて見せる。


「そして彼女は、イヴァンくんと同じく、物事に対して真っ直ぐなのよ。正直な話、その真っ直ぐな感じって、潜行者(ダイバー)としてS(クラス)のレア物。なかなかいないわよ。だからレア物同士、相性がいいと思ったの」

「そうなんですかね⋯⋯」


 なかなか納得を見せない渋い表情のイヴァンに、ミアは笑みを深めた。


「そうよ、素直でいい子だったでしょう。私から見たら、パーティーとの相性はバッチリよ。彼女からのパーティー入りの相談を受けたから、ふたつ返事で背中を押したわ」

「⋯⋯そうですか。いろいろありがとうございました、登録お願いしますね」


 ミアの話を聞いて、スッキリとまではいかないが、イヴァンの中でわだかまりは減っていた。ここまでミアがサーラを推していたとは思っていなかったのが、大きかったかも知れない。


「登録承ります。イヴァンくん、メンバー増えて良かったね」

「はい」


 イヴァンはその言葉に、軽く微笑んで見せた。


■□■□


 グリアムは黒い外套を頭から被り、いつものように背負子を背負う。前を行くイヴァンは、黒いマントを翻し颯爽と歩く姿はやる気に満ちていた。ヴィヴィは同じ素材とおぼしき黒いローブを身に纏い、小さなサドルバッグを背負うテールが寄り添う。サーラの胸当ては、黒いショートケープに隠され、パーティーでの初潜行(ダイブ)に緊張と期待に胸が高鳴っていた。

 

“【忌み子】と黒いパーティー”

 

そんな揶揄する声も彼らは気にはしない。堂々と胸を張り前へと進む。


□■


「あら、みんなお揃いじゃない。パーティーらしくなってきたわね、イヴァンくん」

「いやぁ~そうですか? グリアムさんに用意して頂いたのですよ」


 ギルドの受付で盛大に照れて見せるイヴァンの姿は、明らかに粗暴な潜行者(ダイバー)達とは一線を画していた。そんなイヴァンの姿は相変わらず場違いで、向けられる奇異の目は相変わらずだった。

 その目から逃れるように、グリアムは手を振り上げ、パーティーをダンジョンへと導く。


「おい、行くぞ」

「はい! それじゃ、ミアさん行って来ます」

「気を付けてね」


 グリアムが深い溜め息をひとつつき、窓口の前を通ろうとすると、受付の向こうのエルフ(ミア)が口端を上げて見せた。


「フフフ、シェルパさんったら、過保護なんだから」

「何がだよ」

「お揃いで纏っているその外套って⋯⋯フフフ」

「⋯⋯チッ、おまえは少し黙っていろ」

「上層なのに、少し大袈裟じゃない?」

「うるせえ。いいんだよ、ほっとけ」


 確かにこのエルフの言う通りだった。上層には、ここまでのレア装備を必要とするモンスターはいない。だが、もし万が一また飛ばされでもしたら、生存率を上げるために考えたグリアムの考えた結果がこれだった。

 何よりも“生きて帰る”のが命題。そこがブレる事は無い。


 だったら、装備させるさ。ダンジョンでは何が起こるか分かりはしないのだから。


□■□■


「はぁっ!」

『ギィッ⋯⋯』


 サーラの拳がゴブリンの頭を簡単に打ち抜いて見せた。真っ直ぐに伸びた右腕の先に、首から上を失ったゴブリンが力無く倒れて行く。

 サーラの加入で、進行速度は一気に上がった。思っている以上に出来るやつなのはうれしい誤算であり、イヴァンとヴィヴィからの信用度も一気に上がって行く。

 イヴァンとサーラに関して言えば、単独(ソロ)でも6、7階層なら問題無く行けるレベルにある。だが、グリアムから見れば、経験不足の感は否めない。


 ま、焦らずだな。


 目の前で、あっという間に斬られ、潰されるモンスター。グリアムは、金になりそうなものをいつものように拾い、パーティーは先を急いだ。余裕を見せるパーティーの空気が少しばかり弛緩するのは、仕方がないのかも知れない。


「うはぁ、イヴァンさんもヴィヴィさんも、ふたりともお強い。すっごい楽ちんです」

「僕らもこの間より、だいぶ早いよ。お互い様だね」


 サーラの笑顔にイヴァンも笑顔で答える。


 この辺りなら、まぁ、余裕だし、ひとりで潜るよりそらぁ楽だよな。

 ヴィヴィの扱うボウガンの精度も、ゆっくりだが上がって来た。テールに回復薬を持たせる事が出来るようになり、単純に潜行時間が稼げるようになったのも地味にデカイ。回復薬は命綱、量はあるに越した事はないからな。


「そいつはベヒーモス製か?」


 9階へと下る回廊で、鎚の紋章を掲げるパーティーとすれ違う。黒い装束の【クラウスファミリア】は、そのパーティーから怪訝な視線を向けられた。


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