そのダンジョンでの狂騒曲
盛者必衰。勢いのある者もいつか必ず滅ぶ。
だが、ここに集う者達にそんな言葉が、頭を過る事はない。ここ中央都市セラタの真ん中で、それは大きな口を開け、欲望ごと人を飲み込んで行く。
潜行者達は下へ下へと潜り続る。まるで、欲望だけをむさぼるかのように。
ある者は一攫千金を夢見て、ある者は名声を得る為に、ある者はそこにロマンを求めて⋯⋯。
そこに答えなどなく、ただただ、エネルギーの源となる鉱石、【アイヴァンミストル】の放つ淡い白光が、人々を幻惑した。
確実なものなどあるわけもなく、そこにはあらゆる欲が渦巻き飲み込まれる。
街角にバラ撒かれる紙片を、大人達は食い入るように見つめ、子供達は道端の落ちたその紙片を拾い、その冒険譚に目を輝かせた。
『『『号外! 号外! 【ノーヴァアザリア(新星のアザリア)】が、28階到達!!』』』
「マジか! 現存最強パーティーの名はだてじゃねえ。次の新記録更新も夢じゃねえな」
「すげえぞ! アザリアを超えるパーティーなんて、いねえんじゃねえか」
その報せに、欲ある者は高揚し、羨望の眼差しを向けた。そして、それを越えようとする者は悔しさに舌を打つ。
(ククク、また【ライアークルーク(賢い噓つき)】は水を開けられたな)
(所詮永遠の二番手さ。アゼリアのところには届かんて)
口を開けば思い思いに勝手な事を口走り、酒を呷った。
ただ、しばらくの間人々はこの熱にうなされ、その報せに、続こうとする者、諦める者、越えようとする者⋯⋯その幾人もの思いが都市に渦巻き欲望を刺激していった。
□■□□
欲にまみれたパーティーが下層を目指していた。
フードを深く被る壮年の男がパーティーの前を歩く。赤味を帯びだした壁に、パーティーは少しばかりの緊張を見せているが、前を行くフードの男は淡々と歩を進めて行った。
「こっちだ。行くぞ」
フードの男が下へと向かう回廊へとパーティーを導く。背負子を背負い直し、下への一歩を淡々と踏み出した。
新連載始めました。
みなさま宜しくお願い致します。