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また、ゲーセン跡地で  作者: 吉田九朗
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始まりの日

見渡す限り山に囲まれたこの町。生活に困らない程度の店は揃っているが、最近はコンビニとチェーン店しかない。もう、この街はうんざりしている。いい思い出もない。

だから、特徴もないこの街から脱出するには、大学に入学し大手企業に就職するしかなかった。でも、地元で一番稼げ、かつ仕事が楽なこの定食屋を選んだことは正解だと感じる。ちなみに、近所ラーメン店が一番稼げたが、先輩からの罵声、長時間の労働の可能性がとても高かったので断念した。

キッチンとホールが完全に分かれていてキッチンだと人に接することも少なく良かったと感じる。

ただ、デメリットもあるそれは朝礼だ。朝礼は最後に全員に握手しなければならない。


他人の未来はその人が今一番選ぶ可能性のある未来が見える。経験からすると、ある程度の年齢になると未来を大きく変えることはない。

今まで能力を自分でコントロール出来たことがない。

つまり握手するたびに他人の未来が見えてしまうわけだ。

握手のたび同じ未来を見せられるのはコバエが顔の周りを飛ぶくらい鬱陶しい。まあ、そこは我慢するしかない。

その日もいつも通りの朝礼のはずだった。

ところが、いつものメンバーの中に見慣れない女子がいた。長髪にいかにもモテそうな美人だ。

今日は新人が入ってこない日のはず。

その時、僕は動揺した。

「今日から働いてくれるバイトの田中さん。はじめ分からないことは、先輩に聞いて仕事になれていって。ベテランの人は仕事を教えていってね、よろしく」

「今後、よろしくお願いいたします!」

店長に続いて女子の元気な声が店内に響く。

「じゃあ、今日も元気に声を出して明るい接客と…」

店長がいつも通りのカンペでも読んでいるかのような心無い閉めの挨拶が耳に入ってこない。

いや、いつも聞き流していたが。

今まで小石に躓く様な小さな出来事は、見逃してきた。

しかし、こんな大きな出来事を見逃したつもりはない。

彼女は未来に存在しないはずだ。

「どうしたんだ、声だしもしてなかったし、ボーとして、大丈夫か?」

店長が声をかけてきた。

どうやら、考えている間に朝礼が終わったらしい。

「だ、大丈夫です・・」

いつも通り順番に握手をしていく、最後に彼女、番がきた。

直接触れれば、見えくるかも、しかし握手しても何も見えない。どうしてだ。

顔を上げて彼女の顔をみると、何故か彼女も驚いた顔をしていた。


それからしばらく、いつも通りキッチンの仕事をこなしていく。彼女、ホールで仕事を任されていたため直接話すようなことは、なかったが気になって仕方ない。

何事もなかったかのように、振舞っているつもりだが、まだ少し、動揺していて調理の仕事に集中できない。そんな中でなんとか、休憩の時間まで頑張った。

彼女に話かけようか?

しかし、今まで、バイト仲間に自分から話しかけたことはない。

ほかの人に不自然に思われるか、気があると思われるのが嫌だったのでそのまま挨拶をして外に出ようとした。

「待ってください!加藤さん聞きたいことがあるんです。」

彼女に呼び止められた。どうやら、同じ休憩時間だったらしい。

そもそも、名前を名乗っていないのにどうして僕の苗字を知っているのか?

どの様に返事したらいいのか分からなかったので、とぼけることにした。

「もしかして、妹の友達?あんまり、友達のこと知らないだよねー。ごめん」

もちろん、僕に妹などいない。いたら、よかったのに

「妹?先輩、妹さんいませんよね?私が話したいのは、私たちの能力のことですよ。分かってますよね?」

「分かったよ、話を聞くから、場所を移動しようか?」

「はい!」

何故か、彼女は嬉しそうな顔をしていた。

まず、彼女が嘘を見抜いたことに驚きだが、能力のことを他の人もいるのに隠すつもりもないことに驚いた。

他人にこの能力のことを知られるとロクなことが起きない。絶対に。ギャンブルに使われたり、犯罪につながる未来もあった。最悪、死ぬこともある。

だから、今まで隠してきたのに!ひとまず、人がしばらくいない場所に移動することにした。


バイト先から歩いて5分、ゲーセン跡地。10年前までは、近所の子供たちや、なぜか毎日いる若者が通っていた。当時、中学生だった僕も少しだけ足を運んだ。

しかし、突然潰れてしまった。

突然の事で以来、何故かつぶれたのか、いろんな噂話が耳に入ってきた。2階で薬物を売っていただとか、殺人事件があっただとか。

噂話のおかげか、そもそもそれ以前に今は、ボロボロになった建物は不気味で誰も近寄りたくない。

正直、僕も近寄りたくないが仕方ない。しかし、ここならば、しばらくどころか半年間誰も入ってこない。

「ここなんか、お化け屋敷で近寄りたくないですけど」

「しょうがない、このあたりだと、ここくらいしか2人だけで話す場所はないから」

「まあ、いいです、次からはもっと明るい場所探してください。それより先輩、未来を見る能力をもってますよね?!」

また、彼女に心を読まれているようだ。正直、不気味だ。

「なんで、さっきから名前すら教えてないに知ってるの?能力のことも」

彼女は、ハッとした顔をして一度、落ち着いてから話はじめた。

「ごめんなさい、興奮して。まず私から、名乗るべきでした。

私は田中泉です。私も先輩と同じ能力者です。他人の過去を覗くことができて先輩の過去を覗かせてもらって能力のこと知りました」

過去を覗く能力をもっている?能力者は俺一人だけだと思っていた。まさか、他にいるなんて!

「驚いた…じゃあ、自己紹介しなくてもいいかな?」

「そうですね!加藤十郎さんですよね?ずっと、私一人だけだと思ってたのでついつい興奮しちゃいました。なんでも聞いてくださいね」

それから、しばらくお互いのことを話合った。

彼女は、地域でも有名な国公立大学の法学部の2年であったこと。

彼女の話によると僕と同じく他人に直接触ることで過去を覗くことが出来き、中学生の頃から能力自体の訓練をして人だけでなくモノの過去も見える様になったことを知った。

さらに、人やモノ過去の記憶から感情を感じことを目標にトレーニングを続けているらしい。

僕からは、未来を見る能力がどんなものかの説明をしてあげた。

だが、僕の説明が下手なせいなのか、彼女の方が理解力に欠けているのか分からないが「よく分からないです」と言われてしまった。


どうやら、彼女の休憩時間が終わるらしく、最後にどうしても気になることについて相談してみた。

「僕が見た未来では、君はいなかったし、君の未来も見えなかった。どうしてだろう?」

彼女は少し考えこんだ後

「実は私も、先輩の過去はここ数日ぐらいしか覗けなかったんです。他のひとは、生まれてから今まで覗けるのに、どうしてかなー」

「分からないよね…」

「もしかしてですけど、先輩は能力のコントロールできてませんよね?私はある程度コントロールできるのでその差のせいかもしれませんね」

つまり、彼女の能力が上回って妨げとなり、彼女に出会ってからの未来が見えていないだけと言うことなのか?

確かに、未来と確かに話を聞く限り彼女の能力と俺の能力の機能は真逆だが、人に触ることで見えるから同じ点も多い。

「そうかもね…」俺は、自信なさげに言った。

「良かったら、能力がコントロール出来る様に一緒に訓練しませんか?そしたら、私の未来も見えるかもしれませんし」

彼女がやってきたことが必ずしも役に立つかは分からないが、もしコントロールできれば、他人に触れるたび未来が見える煩わしさから開放される。ならば、やってみる価値はあるかもしれない。

それに、未来が見えず不安定な状態はこれ以上ごめんだ。

「そうしようかな。それより、シフトの時間大丈夫?」

「あ!忘れてました。危なかった~。初日で遅刻するのはまずいですからね。急いで、連絡先だけ交換して後から会う日決めましょう」

連絡先を交換してそのまま解散した。その後もシフトが彼女と合わずその日はいつも通りバイトをしてその日は終わった。


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