魔法を紡ぐサーキット
「BOYの目の前にあるケースに手を当てて使う精霊を思い浮かべマース」
クリスの目の前に透明なケースがあり、中央には透明なクリスタルがある。
その周囲には赤・青・黄・緑・白・黒のパネルと計器が配置されていた。
「光・風・水・闇・地・火。これらをレース中に使うのが勝利の鍵デース」
どの精霊も使えるのは一回だけで、最大六回まで使えるとボブは話す。
「一種類だけでも全部使っても、何個かだけでもいいの?」
「魔法力をどう使うかどう割り振るかもまた勝つためのポイントになりマース」
カーブやS字コーナー、ヘアピンカーブ。
それらを通るたびにボブはめまぐるしくギアを変える。
「妨害、攻撃、防御、どう使うかも自由でミーたちは様子見をセレクトしました」
クリスはボブの説明をうわの空で聞き流す。
ボブのシフトレバーの動かし方はクリスから見ると魔法使いの杖に思えた。
ポツポツとフロントガラスに水滴が当たり、ボブはピットに立ち寄る。
「主催者の意向でこういうイベントもあったりしマース」
「そろそろ順位を上げていこうか」
どのチームも何度か魔法を数回使い、修理中の今がチャンスと父は話す。
「OKボス」
ボブはアクセルを踏み、ピットを後にした。
「うへえぬかるみ……これじゃオフロード――」
「HAHAHA!ここから先は会話していると舌かみマース」
荒れた地面の上を車が走り、振動をサスペンションが吸収する。
「BOY、魔法使ってみマース?ミーは運転で精いっぱいデース」
ボブの言いたいことを察し、クリスはやり方を聞く。
「ケースに手を当てて、『力ある言葉』を紡ぎマース」
「どんなのでもいいの?」
「Of course。BOYの心の赴くままに紡いでくだサーイ」
ガコガコ、ガコガコ。思考を巡らせるクリスの耳にギアを変える音が木霊する。
「決まった!いくよボブ兄!」
「Please comhere anytie」
『伝動駆動』
車に地の力が宿り、荒れ地やぬかるみを超えて車は先に進んでいく。