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異世界のお嬢様、現代へ転移する  作者: シマウ
第1章 現代転移編
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7話 協力

「こ、この世界って……」


この日本、という国とは限らないのだが。


「そう。私が眠っている間、指輪が輝いたって言っていたでしょう?」

「う、うん。色が赤から青になって、すごい神秘的だった。ね、千尋」

「……そう、だね」


恐らく、それは指輪がこの世界に反応して発動した魔法だ。事前に術式が組み込まれていたのだろう。


「それで私が起きたら、急に日本語もペラペラだった。この世界に飛ばされた事もそうだけど、都合が良すぎませんこと?まるで、この時が来るのを分かっていたかのように」

「た、たしかに……異世界転生とかって、ご都合主義が多いから、そういうモノかと思ってたよ……」

「なんて?」


コトネがボソボソ呟いていたが、意味は分からなかった。


「い、いや、なんでもないの」

「とにかく、この指輪はお母様に貰った物ですの。しかもお揃いの指輪。ずっと肌身離さず持ってなさいと言われてた。その時が来れば分かるからって」

「じ、じゃあ……」


ゴクリと、唾を飲み込む音が聞こえた。


「きっと、今がその時ですわ。私は、お母様を絶対に見付ける。そして、真実を教えてもらいますの!」


私は立ち上がり、力強く宣言した。久しぶりに、生きる意味を見つけたのだ。


今度こそ、諦めない……!


「じ、じゃあ、ミア姉、死なない?」


チヒロが心配そうに尋ねてくる。


「もちろんですわ!だから、私がこの世界に慣れるまで、チヒロ、手伝ってくださる?あなたの力が必要なの。まだ出会ったばかりで、信じられないかもしれないけど……」

「い、いや、確かにそうだけど、ミア姉の事は信じるよ。魔法を見せてもらったし、面白いし……」


やっと涙の勢いが止まり、落ち着いてくれたようだった。目は真っ赤だけど、良かったーー


「ーーって、私って、面白い?」

「えっ!?ま、まあ……」

「ふーん。初めて言われましたわ……」


まあ違う世界の住人だから、当たり前か。頭がおかしいと言われる事が多かったので、面白いは新鮮だ。


「……分かったよ。ミア姉に協力する。お母さんを探すのも、手伝うよ。だから、変な事考えないでね?」

「もう、大丈夫と言っておりますのに。でも、ありがとう。私の為に、怒ったり、悲しんでくれて。あくまで時間のある時でいいから、よろしくお願いいたしますわ」

「いや、ちょうど退屈してたんだ。ボク達に出来る事があれば、何でも言ってね?」

「こちらこそ、魔法もそうだけど、色々力になれる事があると思いますわ。是非頼ってくださいまし!」

「うん。でも浮遊魔法は勘弁してね、ミア姉」

「ちょっと!」


ようやくいつもの笑顔を見せてくれたチヒロに、少しだけ安心した。


「ボク、先にお風呂に入ってくる。ちょっと落ち着いてくるよ。気を遣わせちゃて、ごめんなさい。お姉、ミア姉と話してて」

「……うん。分かった」


そう言うとチヒロは、パタパタとお風呂場の方へ向かっていった。そして、コトネと二人きりになったのであった。


「その、ミア。ごめんね、千尋が……びっくりしたでしょ?」

「いいのよ。確かに驚いたけど、何か事情があるのではなくて?」


「自殺」というワードを聞いた瞬間に、チヒロは豹変した。あの様子だと、何かのトラウマがあるのかもしれない。


……ずっと気にはなっていたのだが、もしかしたら二人の両親らしき人物の姿が見えないのはーー


「……そうだね。ある。でも、今は……いつか、話すよ」

「……そう」


ーー推測の域を出ないから、分からないけれど。


二人がいつか話してくれるその時を、待つ事にした。


「ごめんなさい。コトネ。あなた達も大変なのに、自分の人生があるのに、巻き込んでしまって……でも、コトネ達しか頼れる人はいないの……」


先ほどまで希望に溢れていたが、私の目標には二人の協力が必要不可欠だ。人間なのだから、二人にも大変な事、生活など色々あるだろう。


その上で、いきなり現れた異世界人が協力してくれ、なんて虫が良すぎる。それは私も分かっていた。だけど、さっきのチヒロの様子をみて、実際に深刻な問題を抱えているところを見てしまうと、自分は何て自分勝手なんだろう、と途端に申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうのであった。


「……わ、私ね、本を読むのが好きなの」

「え?」


コトネが、私の目を真っ直ぐ見つめて語りかけてきた。


「それも、きっとミアのいた世界みたいな場所が舞台の、本が好き。私はずっと思ってた。小説の中の、お姫様みたいな、ミアみたいな子と、と、友達になりたいなって」

「コトネ……」


ちょっと照れくさそうだったが、真剣な瞳だ。


「だ、だから、逆に言わせて。私に、協力させてほしい」

「なんで、そこまで……」


コトネは、いつものふわりとした笑顔でこう言った。


「私が、オタクだから、かな?ふふっ」

「オ、オタク?」

「なんでも、ないよ!」


「それに千尋も……ミアがいる事で、良い影響になると思うんだ。あの子も、そろそろ乗り越えないと……だ、だから、お互い様。私も、何かあったら、ミアを頼るから、よろしくね……?」


それを聞いて、私は思った。普段はオドオドしているが、私達三人の中で一番心が強いのは、きっとコトネだ。


「……ええ、ありがとう。分かったわ。コトネも協力、よろしくお願いいたしますわ」

「う、うんっ!ねえ、ミア……」


本当に頼もしい限りだ。私の話を聞いてくれた人も、受け入れてくれた人も初めてでーー


「な、なんですの?」


コトネは私の手を握り、困ったような顔で、私に言い聞かせるような声で言葉を紡いだ。


「……今まで、辛かったね」


「……ぇ?」


ーーポロポロと、目から雫が一つ、二つ。

いつからだろう。気が付けば、私は涙を流していた。


「あ……あ、れ?」


同情なんて、してほしくないのに。大変なのは、私だけじゃないのに。お母様が見付けられるかもって、なるべく希望を持って明るく話そうと思ってた。だけど私は、誰かに分かってほしかったのだろう。


「……ミア」


ーー辛かったね、しんどかったよねって言ってほしかったのだろう。


「もう、一人じゃないよ」


その言葉を聞いて、私のダムは決壊した。涙が、どうしても止まらない。コトネは、私の涙をハンカチで拭きながら、頭を撫でてくれている。


「辛かっ、た……!!」


私は五年間、ずっと言えなかった言葉を吐き出した。


「辛かった!!だ、誰も、お母様の事なんて、私の事なんて知らないって……」

「うん」

「もう居場所はないんだって、死ぬしかないって、お、思ってましたの」

「……うん」

「だけど、この世界に来て、今まで無駄じゃなかったんだって……!!出会った二人も、信じられないくらい優しくて……」


「うん、頑張ったね」

「うわああぁああぁああ…..!!」


私はまるで赤子のように、五年分の想いを胸に抱いて泣いた。


私の作品を読んでいただき、誠にありがとうございます。


もしよろしければ、星、ブックマーク、感想等いただけましたらモチベーションがとても上がります。


これからも、何卒よろしくお願い申し上げます。


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