閑話 心の中(佐藤琴音)
このような感じで少し短めですが、たまに琴音の心の中を見られるお話を投稿していきます。
私の家に、天使が降臨した。
具体的には、私が連れ込んだのだが。あそこで警察や救急車を呼ばなくて本当に良かった。
名前はアミーリア・レインという少女。歳は私と同じくらいで、まるでお人形のような金髪縦ロール超絶美少女だ。そんな彼女は、異世界から来たお嬢様らしい。嘘みたいな話だが、あの指輪の光を見た私は本当にそうなのだろう、と思っている。
アミーリアさん、本当にこの世界の事、何も知らないみたいだし。恐らくだか彼女は、中世ヨーロッパあたりの文明レベルの異世界からやって来たのではないだろうか。科学を迷信とか言ってたし、彼女が居たのは魔法が発展している正反対の世界なのだろう。
さて、突然だが、私は小説を読むのが好きである。
あまりお金を使いたくないため、普段読むのはインターネットに転がっている無料の小説だ。 そして、最近ハマっていて、世間でも流行っているジャンルがあった。 いわゆる【悪役令嬢モノ】というヤツだ。 たとえばーー
婚約破棄をされて、悪事を暴かれ断罪。最悪死刑になるハズだった人生を、転生、または前世の記憶を取り戻しやり直すお話とか。
将来悪役令嬢になってしまう人のメイドになり、最悪の未来を回避する為に暗躍する話とか。
そういった話全般がとても好きで、いつも私はこう思っていた。
ーー私も転生とかして、かわいいお嬢様とかとキャッキャできたらなぁ……と。
私は、別に困っている人を全てお世話する聖人とかでは無い。もし、路地裏に倒れていたのが普通のOLやサラリーマンだったら、適当に警察やら救急車やら呼んでいただろう。最初はアミーリアさんにも、そうしようと思った。でも、嫌な予感、という名の期待感と文学少女の勘のようなものがあった。
結構下心丸出しである。
何だか、自分がお嬢様を導くメインキャラクターの一人にでもなったようだ、と心の底では思ってしまっていた。本当は素直な気持ちで助けてあげたいのに……と汚れている自分の心が少し嫌になる。
でも、私の作った料理をとても美味しそうに食べてくれるアミーリアさん。
優しいのね、なんて微笑んでくれるアミーリアさん。
この世界の科学に大きなリアクションで驚いてくれる感情豊かなアミーリアさん。
もう、ね……かわいい〜!!
まだ出会って僅かな時間しか経っていないのだけれど。私はアミーリアさんの事で頭がいっぱいだった。こ、これが一目惚れというやつだろか……?いや、待て待て待て。一旦この気持ちは置いておかねば。
彼女は何も知らない世界に降り立ち、一晩で落ち着いて見せた。心ではまだ混乱している部分もあるだろうが、なんて強い人なんだろうと思った。
……ハァ〜尊い。
いや、違う違う。違わないけど。私だったら、パニックで数日寝込んじゃうかもしれないのに。
そして、まだ中学生なのにも関わらず、バイトを頑張る千尋の事を褒めてもらって嬉しい気持ちになった。この世界の仕組みを知らないアミーリアさんからしたら何気ない一言かもしれない。けれど私の家は、特殊な事情がある。だから、いつも千尋に向けられるのは、大体が哀れみの視線だった。
だから少し報われた気分だ。
そんな彼女に、私も答えたい。この世界の事を、もっと教えてあげたい。そして、いつかアミーリアさんの事も教えてもらえるのかな?魔法とか、見れたりして。
妙にテンションが高かった私は、掛かり気味にこう宣言した。
「じゃあ、いきなりだけど、今日は外に出てみようか」
もしかしたら、ちょっと早かったかもしれない、と後の琴音は反省する事になるのであった。
私の作品を読んでいただき、誠にありがとうございます。
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これからも、何卒よろしくお願い申し上げます。