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異世界のお嬢様、現代へ転移する  作者: シマウ
第1章 現代転移編
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幕間 アミーリアVS宅急便(配達員視点)&おまけ

本当に頭を空っぽにして書きました。

俺の名前は……まあ、名乗るほどのモンじゃねえ。


ジローネコヤマトに勤めて二十年。しがない宅急便の配達員だ。今日も、いつも通り荷物の配達をしている。


さて、次のお届け先は……おっと、ここは久しぶりだな。確か、なかなか大きい家なのだが、なぜか子供だけが二人で住んでいる不思議な家だったはずだ。しかし俺もプロ。いろんな事情はあるだろうが、突っ込まないで仕事を遂行していくぜ。


だが、この家はいつも昼間に届けると大体不在で二度手間になっちまうんだよなあ……まあ、仕方ねえ。とりあえずインターホンを鳴らして、気配が無かったらすぐに次に行く事にしよう。


そして俺は、ピンポーンとチャイムを押し、すぐに退散しようとしているとーー


「は〜い!」


おや、珍しい。今日は平日のはずだが、マイクから女性の声が聞こえた。こいつはラッキー。もう一度来る必要が無くなったぜ。


「宅急便です。佐藤琴音さんにお届けものです」

「あら、コトネに?今行きますわ」


行きますわ?


この現代に、そんな喋り方の奴がいるのか。前来た時、こんなだったっけか……?いや、俺が古い人間だからかもしれねえ。流行ってのは、良く分からないぜ……しかし俺もベテラン。こんなことじゃあ驚いてられないね。


そうして玄関のドアが開けられるとーー


「ご苦労様ですわ」


どえらい金髪の美少女が立っていた。日本語を流暢に喋ってはいるが、どう見ても日本人じゃねえ。これは、アレか?留学生のホームステイってやつか?その美少女は、俺が持っていた段ボールの箱を見つめてこう言った。


「まあ!これが噂のママゾンでポチるというやつですの!?本当にどこでもお買い物ができますのね〜」

「……」


どう反応したらいいか分からなかった。ネット通販を知らないなんて、一体どこの国からやって来たんだ?金髪の縦ロールからはとても上品さを感じるのだが、気付くと着ている服がーー


姫、とど真ん中に一文字だけ書かれた謎のTシャツだった。


(な、なんだってんだ!?その服は……!)


喋り方や見た目も相まって、正直笑いを堪えるのに必死だった。部屋着のセンスどうなってんだよ。絶望的に似合ってねえよ。


しかし、お客様に不快な思いをさせる訳にはいかない。俺は感情をなんとか抑え、次の仕事に取り掛かかる事にした。


「では、ここに受け取り証明のサインをお願いいたします」

「サイン?」


俺はペンを差し出そうとしたのだがーー


「ちょっと待ってくださいまし」

「え?」


そう言うと彼女は、自分の親指を噛み、血を流し始めた。


「は!?え!?何を……」

「何って……サインをしようとしていますわ」


そして血のついた親指で、彼女はサイン欄に判を押した。


えぇ……(ドン引き)


この時代に、血判……?漫画でしか見た事がねえぞ。血の出し方も、某忍者漫画みたいだったし、一体どうなってやがるんだ?流石の俺も、こんなにネジが飛んでる奴は初めてだ。


「あら、もしかしたら……これではいけなかったかしら?」

「え……いや……」


ここで間違いを指摘しようにも、何か”圧”のようなものを感じた俺は、言葉に詰まってしまった。プロの俺にここまで動揺を誘ってきやがるとは……!


「…………これで、大丈夫です…………」


負けた。この俺が。今まで、何人ものヤバいやつを相手にしてきたこの俺が負けるなんて、ありえない事だ。クソ……!


「ホッ……良かったですわ。あら?何か顔色が悪くありませんこと?大丈夫かしら?」


心配そうに俺の顔を見る嬢ちゃんの声で我に帰った。いけねえ。俺は配達員。どんな相手でも冷静に対処しなければならない。全く、まだまだ修行が足らねえなーー


「ええ、大丈夫です。それでは、失礼いたします」

「ありがとうございますわ!」


こうして、自分への不甲斐なさを感じながら佐藤家を離れた。これ、上にどう報告すりゃいいんだ?はたから見たら、ただ血がついてる紙だ。何か事件性のあるものかと疑われちまう。


そう考えていたのだが、さっき押した血の部分を見てみるとーー


「な、なんじゃこりゃあ!?」


血の形が、なんときちんとした文字になっているではないか。アミーリア……?さっきの嬢ちゃんの名前か?なんてこった。一応、サインとして成立している。もしかして、凄腕のイリュージョニストだったのだろうか?


やられたぜ。


「完璧に、負けたぜ……」


俺を、試していたのだろうか……?ともかく、途中で自分を見失っちまったってこたあ、配達員失格って事だ。俺も、若造に指導する立場ではあるが人の事は言えねえな……”反省”したぜ。嬢ちゃん、ありがとよ。


「覚えてろよ。次は絶対ーー」


完璧に仕事を遂行してみせる。


のちに伝説と呼ばれるベテラン配達員の、心に火をつけた?アミーリアなのであった。


ーーーーーーーーーー

おまけ


「ご、ごめんミア。ネットでお買い物したの、すっかり忘れてたよ……」


学校から帰ってきたコトネが、申し訳なさそうにそう言った。


「大丈夫ですわ!バッチリ受け取れましたわ。そういえば、この世界でコトネとチヒロ以外の人間と初めて話しましたわね……」

「何事もなかったようで、よかったよ……人が来ることが分かってたら、もうちょっとちゃんとした服を渡してたんだけど……」


謎の姫Tシャツはコトネの部屋着だったのだ。


「え?これ、シンプルでいいじゃありませんの。貴族のゴテゴテした衣装より楽で動きやすいですわ」

「う、う〜ん……明日、ちゃんとミア用の服、見てこようね」


明日は、ついに初めての外出の日だ。私は、近所の大型ショッピングモールへのお買い物について行く事になっていた。


「ええ!とっても楽しみよ!迷惑をかけないように、予習もバッチリですわ!」

「迷惑だなんて……ふふっ……気を付けて、行こうね……」


ついに大きな一歩を踏み出す時が来たのだ。もちろん、非常時以外は魔法を封印するつもりだ。この外出が上手くいけば、私の行動範囲がぐっと広がる事になる。


そうしたらまずは、仕事を探すところから始めるつもりだ。


「明日、改めてよろしくお願いいたしますわ!」

「う、うん!」


こうしてアミーリアは期待と少しの不安を胸に、その日は早めに就寝したのだった。


ちなみに、サインの件について間違っていたとアミーリアが気付くのは、もう少し先の事である。

私の作品を読んでいただき、誠にありがとうございます。


もしよろしければ、星、ブックマーク、感想等いただけましたらモチベーションがとても上がります。


これからも、何卒よろしくお願い申し上げます。

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