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はちじゅうご
そうか、自分は泣いているのだと、
気付いたのは、灯りを消してしばらく経ってからだった
脳内を巡る記憶は、いまだに鮮明で、微かな香りが漂っている
敢えて過去に潜ってみると、その圧力は想像以上に大きかった
海底の水圧のような力で、全身の穴から血反吐が垂れてこないか心配になった
ああ、これは幸いなことだ
心の中で唱えていた言葉が、どこからか聞こえてくる
自分の口が勝手に言葉を漏らし、
顎まで滴った涙で、初めて自分が流していることを理解した
右の眼から涙を流し、左の口は虚構を語る
鏡に映る私の姿は道化師だった




