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ななじゅういち
満開の桜を見上げる彼女の頬には涙が流れていた
夜中の暗がりでも外套の当たった右側だけは奇麗に見えた
そうして彼女はそっと、口角を上げる
その微笑みは無垢で、不思議と自然であった
右頬をつたった涙に気付いていない
彼女は散りかけの一枚の花びらに手を伸ばす
指を曲げて、掴もうとした瞬間、それは風に乗って飛んでいった
悲しみを捨ててまで、羨望した一縷の希望は儚くも散っていった
彼女は僕に気付いて、首を斜めにして言葉を漏らす
「どうしてなんだろうね」
僕はじっと彼女の瞳を覗き込んだ
映った僕の頭に乗っていた花びらがひらひらと舞った
彼女は膝から崩れ落ちて声をあげて泣いた




