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ろくじゅうよん
凍らした先週の鍋を解凍したら同じ味であったことに驚いた
凍結が時間を止めてくれるなら僕は10年くらい氷になってみたい
そう考えると想像だにできなかった冬眠すら短いものであるように思えた
凍結希望の署名を集めると意外にも人口の1%が集まった
研究の成果を誇るように長々と語る博士の口から唾が飛び出る
この30分の演説の方が長く感じるような一瞬の体験になるだろう
僕は企画者だったので、栄えある第一号となった
ベッドに横たわりながら遠くで聞こえる花火と歓声に後ろ髪を引かれる思いであった
それでも初心貫徹だと、僕は決意を胸に眠りについた
・・・
人口が減った方が利便性が良かったのか
凍結人類の解凍を誰も口にしないまま時は過ぎた
彼らは生きたまま死んだような存在になった
・・・
明日僕が仕事を辞めても社会は回るのだろうと思った