よんじゅうさん
浴槽に浸かりながら思考に集中する
換気扇の音やリビングで流しっぱなしの音楽が酷く煩く感じた
濡れた体を拭かないままですべての音を遮断して回った
再び浴槽に体をゆっくり沈める
眼を閉じて両手で顔を覆いながら心中を覗き込む
相反する感情が胸の内を往来し衝突しては破片が飛び散る
掻き混ぜられた色や形は形容することが出来ない
男に二言はない、一度決めたことはやり通す
それらは崇高な精神のように思えるが
この押しては返す波のような感情の在り方にはそぐわない
今は絡み合った事象の本質を見定めなければならない
僕は中身のない人間でみんなが幸せなら良いと思っていた
それは事実だがおそらく真理ではない
僕は怯えているのだ
独りになることを誰よりも恐怖している
年を重ねて強くなったような気がしていただけで
裸で一人で放り出されると幼児のように蹲る
弱さを知って強くなりたいと切実に思い
脱衣所で体を拭いて情けない顔を見つめた
やはりそうだ
数年自分の顔をきちんと見ていなかった
無理やり口角を上げてみる
案の定、さらに不細工になった




