3.美味に恋と愛に歩みは慎重に
鼻歌をしながら挽き肉に具材をまぜ片手よりも少し大きめに形を整え、右手から左手にと投げ空気を抜いている。
ここ数年、料理をするとしたら私一人分しか作ってなかったから楽しくなかったけど、今誰かのために作るのって楽しいわね。
パンパンとキッチンに響く音とシーナの鼻歌が絶妙にあっていた。
それに誰かと同じテーブルを囲って一緒に食事するのって本当に久しぶりなの。それも異性。今はすこしだけ緊張しているけど、時間が経つにつれてどんどん激しくなるわ。
形取ったハンバーグを、2人が来たら焼くわ。
シーナの緊張が次第に大きくなると、扉をノックする音。
「はーい」
ドアノブに手を掛け扉を開ける。そとには気恥ずかしそうな鎧を着ていない勇者アレス様に、戦いの格好では無い魔王ヴォルデウス様。
街を行き交う人々がこちらを見てはヒソヒソと話しているのがわかるけど――――
「さぁ、入って」
「失礼する」
「失礼します」
食事だけなのに2人とも着飾っているわ。と言う私も普段着で無くドレスとまではいかないけど新しい服を新調したわ。だって一緒に食事をするのは美男子の勇者様に魔王様。まずは第一印象が大事なのってお母さんが言ってたわね。
席を案内すると椅子に座る2人に「今から焼くから待っててください」と驚く魔王ヴォルデウス様に勇者アレス様の言葉。
「ハンバーグは、温かい方が美味しい」
「そうなのか。 肉を混ぜてと思ってたから生肉かと」
「シーナさんは、あの時焼くと言ってたぞ」
「魔族は、焼くよりも生肉が多いからな」
「そんなに焼かないのか」
「炭になることが多い。火加減が難しいらしい」
ハンバーグを焼いている私の後ろで勇者と魔王の談笑が始まっている。不思議な光景なんだろうな普通なら、でも私にとってはそちらに目をやると眩しいのよ。美男子2人が私の家に、それも椅子に座って……。
焼き上がったハンバーグを美男子2人の前にだし、私の分もテーブルにおいて席に座ると、2人から微笑むが私の目に突き刺さる。
心の奥底から沸きだち心臓が破裂しそうだわ。
「お口に合うでしょうか?」
「香りがいい」
「ああ」
男性が喜びそうな大きめのハンバーグ。勇者アレス様も魔王ヴォルデウス様の真ん中から半分に割るのね。
「中から汁が」
「肉汁だ」
「旨い」
豪快に食べ出す魔王ヴォルデウスと、勇者アレス様も一口目はよそよそしかったが目を見開いて次々に口に入れていく。
「シーナ。 すまない」
魔王ヴォルデウスの気まずそうな口調に私は、『何かやらかしてしまった?』と恐る恐る訪ねる。
「おかわりはあるか?」
え、よかったぁ。目の前にいるのはあの魔王なのよね。美男子なだけでも崇高なのに、魔王。なにか合ったら世界は問題有りよ。
「あります。 焼きますね」
「ありがたい」
「あ、シーナさん。 俺にもお願いできるか?」
勇者アレス様も、同じようにきいてくるなんて美男子なのに性格控えめって。
「大丈夫ですよ。 あ、それと勇者アレス様も私のこと『シーナ』で呼び捨てでかまいませんから。焼いてきますね」
「あ、はい。 お願いしますシーナさ……シーナ」
わたしと魔王ヴォルデウスの睨みについに呼び捨てにすることができた勇者アレス様の表情が朗らかになったわ。
私はハンバーグを焼き始めるため席を立つと、一瞬窓に誰かのぞき込んでいるように見えたが、気のせいかも。もし見てるとしたら友達のアンナかもね。この状況話したらもしかして気絶しちゃうかも。
後ろから聞こえる美男子2人の会話が、先ほどよりも打ち解けている。なんか魔物の成り立ちとか話をしていた。驚く勇者アレス様の声に魔王ヴォルデウス様の頷き。焼き上がったハンバーグに舌鼓を打つ2人。
私も会話に混ざり談笑の終わりを時間が告げる。
「もう、日も落ち人間は休みに入るのだろう。シーナよ。オレと一緒に魔族領にこないか?」
両手でテーブルを叩き席を立つ勇者アレス。怒りがこもった表情で魔王ヴォルデウスに怒鳴る。
「おい、どういう気だ?」
「シーナは恋人がいるのか?」
「居ません」
「オレも恋人なんぞ居ない。 それに俺はシーナをもっと知りたい。 だから魔族領でもっと対話し――――」
「それなら。 おれにも恋人はいないし、俺もシーナをもっと知りたいのは同じ」
美男子2人から私迫られている。こんな光景二度と無いわ。ないのよ。勇者アレス様、魔王ヴォルデウス様どちらも一緒に食事して心優しく、時には無邪気。まだまだ知らないことだらけだけど私も2人のこともっと知りたい。
「すみません」
「シーナ?」
「痛いところあるのか?」
勇者アレスと魔王ヴォルデウスが、うつむく私に心配してくれる。嬉しいのだけれど申し訳ないの。
それは1つに決めることができない優柔不断な私が悔しい。2人と一緒にいたいでもそれができない。もっと2人をしって先ほどまでの楽しい時間が続けば……。
「ダメか?」
「人を魔族領など」
「私はまだお二人のことをよく知りません。 急に言われても……」
「そうだな。急に知りたいから魔族領に来いというのは。無理な話」
「この俺としても王城に住んで貰いたいのは本音だ」
「なに? それではオレが会えないでは無いか」
「そうだ。 もしシーナが魔族領にいけば俺が会えない」
「それは困ったな」
悩む二人に申し訳ない気持ちになるも私は黙ってしまう。だけど、この状況このままいけば私は2人ともう会えないのかも。とそう思ったとき魔王ヴォルデウス様が一息入れる。
「シーナよ。 オレは早とちりをしてしまったみたいだ」
「?」
「先ほどシーナはオレのこと、アレスのことを知らないと言ったな?」
「はい」
「オレもシーナのことをよく知らない。 人間はお互いよく知って結ばれるのだろう」
息を飲み込み呼吸を整える魔王ヴォルデウスが続け声を出す。じっとみる勇者アレス様と私。
「シーナの好きなこと。 好きな物オレは知らないんだ。 いまは外面的な性格でお互いみているが内面的な性格は本性はどうなのかだ。シーナ、オレはシーナを知りたい。 だからここに来る。 突然きてもいいか?」
魔王ヴォルデウスの真っ赤な瞳から放たれる視線が私の瞳孔を通り過ぎて網膜に焼き付く。美麗の顔立ちからの真剣な視線に見とれながら呆けた声で「はい」と答えた私。勇者アレス様も胸に手を当てて私に強い視線を送る。
「俺もシーナを知りたい。俺も来る」
「はい」
美男子から放たれるまっすぐな視線に弱いって今知ったわ。私も私自身知らないことあるのね。
「私もお二人のことを知りたいので来て下さい。 でも、普段はお店やっているのでもしかしたら手伝って貰うかもしれませんが」
「いいだろう」
「任せてくれ」
日が暮れ街並みに街灯がつき始め各々のお店にも家にも光がともる。
勇者アレス様と魔王ヴォルデウスを玄関で別れを告げ振り返る瞬間、窓からのぞき込む見知らぬ女性と目があった途端すぐに消えていった。
読んで頂いた方ありがとうございます。
やはり異世界恋愛というジャンルでは
異世界で恋愛というだけではダメなようです。
やはり、ざまぁ展開やらが必要かも知れません。
ということでこの話は
勇者の仲間である聖女が、シーナに嫌がらせするも勇者に見つかり更に魔王からも酷い目にあう。しかしシーナが許すことでシーナの好感度が爆上がり
そして、魔王の側近秘書猫の獣人ネネコも割って入ろうとするも呆気なく撃沈
しかし、魔法の配下である竜王と死王がやってきて聖女と騎士姫やらいい関係になりやがては……
展開にしようかなぁって
でも、話はここでお終いにします。
読んで頂いた方誠にありがとうございました。