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140字まとめ(5作)
松柏の香料を纏う棗に口付け
芳醇な乾菓子と東
帰依した油カスの道標
座標を探すは麗句を研ぐ女人
文月、卯月、師走に夜鷹
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世界の切り抜きをフィルムに写し
俯瞰して静寂の海へ潜り
白い貝殻を掴んで耳を寄せ
聞きたい声を望む
水面を仰ぎ見てから瞼閉じ
背中沈ませ
夜が来て満月に祈りを込める
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並木に華やぐ可憐な薄桃が喜ぶ
霜月の葉を伝う雨雫の滑り遊び
極海へ漕ぎ出す小舟は手製
納涼は遠く、皇もまた遠く
常盤には近く
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石膏のカモメに一輪の白樺
掌握に似た唐草の手紙
細く垂れ下がる猫髭に装い
通り雨は過去になって晴れ間が差す
裁量に弓引くウサギ
桃色あられで賑わう宴よ
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シュトーレンの椅子に座って読む、子守唄の絵本
秋桜を足下に咲かせて優美な微笑み
想いのギフトボックスは
砂糖の香りを漂わせ
向日葵の別れに
翌年の希望を包み込む