日常
僕達は、町から少し離れた山の麓の小川へと来ていた。
「ねえ、何か釣れた?」
尋ねるとリュゲルは「おうよ!大量だぜ!」と快活に言った。
わはは、と笑うリュゲルを横目に先程からピクリとも動かない竿を見て僕は深いため息を吐いた。
「なんで釣れないんだろー」
「本当にロイのだけ釣れないわね、置く場所が悪いとか?」
「そんなわけないだろ、きっと餌に唾でもつけたのさ」
「それこそデタラメだろ」
僕がそうリュゲルの発言に反論するとマイアは、プッ、と笑って
「やっぱりあなた達って面白いわ」と言った。
僕は面白くないけどねー、と言ってしばらく僕たちは会話に花を咲かせるのだった。
やがて、日も暮れはじめ帰りの支度をして帰路へついた。
結局僕が1匹も魚を釣れなかったのは言うまでもないだろう。
―――――――――――――
「ただいま」
そのままリビングへと行くと両親は既に椅子に座り、テーブルには夕食が並べてあった。
「今日は遅かったじゃない、どこ行ってたのよ?」
「釣りに行ってたんだよ」
義母さんからの問いに返答しながら椅子に座る。
「遊ぶのは勝手だけど、明後日には『選定の儀』があるんだから。あんまり怠けていたら天罰が下るわよ」
「まあまあ母さん、神様たちは何か権能は与えてくださるさ。こんなにロイは良い子なのだから」
僕は突然の義父さんからの褒め言葉に照れくさくなって「止めてよ」と言うと早々にご飯を済ませて自分の部屋へと入った。
ベッドに横になると先程義母さんに言われた選定の儀について物思いに耽っていた。
一体何の権能が得られるのか内心少し心配しており、同時に期待もしていた。
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