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〜【異】世界の歩き方~  作者: スタジオ310
8/84

第8話 お腹がふくれると眠くなりますよね

ティンタイホン、行きたいですね。


 えぇっと……

 迷子です。悲しいです。

 地図の通りに歩いているつもりが、どこに自分が居るのか分からなくなってしまいました。

 今まで地図アプリしか利用したことがないので、紙に書かれた簡易地図では、自分がどの方向を向いているのか分からないのです。

 惑星【異】に来て一日目、なのに既に迷子なのです。

 周りを見渡しても文字が読めない私には、ここがどこなのかというヒントも分かりません。

 エイ語もカタコトで、街の皆さんがエイ語を話せるわけでもなさそうですし。

 ですけどここは度胸です。


「ティンタイフォン。ティンタイフォン」


 適当な道行く人を捕まえ「ティンタイフォン」と連呼しました。

 すると、三人目の方が私の持つ簡易地図に今の現在地を指さしてくれました。そしてティンタイフォンがあると思われる方向を指さしてくれたのです。

 現地の人との触れ合い成功です。

 助かったと思い、指さされた方向へと歩くと、そこでなんとも良い匂いのする店を見つけました。

 そしてなんとその店先に、蒸篭のような木製蒸し器で蒸した、小さな饅頭らしきものを見つけたのです。

 それがドーナさんから聞いていたショウロンポなのでしょう。

挿絵(By みてみん)

「これはショウロンポですか?」


 店先の太った店員さんに聞いてみました。


「はあ?」


 私のエイ語は通用しないようでした。


「この食べ物の名前です」

「はあ?私の名前は……」


 私よりも拙いエイ語が返って来ました。


「違います。名前、名前です。ショウロンポですか?」

「おお。ショウロンポ。そう、小籠包ね。はい。これ小籠包。いらっしゃい。奥の席にどうぞ」


 ショウロンポの発音が微妙に違いましたけど、それでもショウロンポの店に間違いないようでした。


「ここはデイタイフォンですか?」

「はいそうです」


 私は店員さんに案内されるまま奥に入りました。

 惑星【異】での最初の食事です。


「ショウロンポと、この店のポピュラーメニューをお願いします」


 と、店員にエイ語で話しかけてみましたが予想通りに通じなかったので、隣のテーブルの男性が美味しそうに食べている米料理を指さして注文することにしました。

 なかなかの度胸でしょ。

 私のエイ語は通じませんからね、開き直るしかないです。

 ちなみにですけど、隣の男性はなかなかのナイスミドル的な紳士で、他にもお若そうなナイスガイと、そのお二人にも負けないぐらいのお色気たっぷりの美女のお連れさんがいます。

 どんな仲なのでしょう。

 それよりも……ここでは食事の際にナイフ、フォーク、スプーンといった道具は使いません。もちろん、手で食べる訳でもありません。

 ハシと呼ばれる二本の木の棒を使って食べるのです。

 ちなみに、ハシという文化はこのホンコンを含め、エイジア地方のいくつかの国にあります。

 事前情報でハシという文化があることを知っていた私は、惑星テラにいるときから練習をしていたので困ることはありませんでした。

 ハシ文化はさておき、そんなに待つこともなくショウロンポが運ばれてきました。

 木枠で作られた蒸し器の中で、蒸し饅頭が湯気をあげています。


「小籠包、▼▼◆◆」


 店員さんが威勢よく何か言いました。『ショウロンポ、お待ちどうさまです』なんて言ったのでしょう。

 私は適当に微笑んで、待ちに待ったショウロンポにハシを伸ばしました。

 のですけど……


「熱っ。ふがっ」


 あまりの熱さに、出したことのない声をだしてしまいました。

 熱々の蒸し饅頭を口に入れたとたん、皮から熱湯スープがしみだしてきたのです。

 ですけど、ふがふがと口の中を冷ましながらも期待のショウロンポを食べてみると、その美味しさに感動しました。

挿絵(By みてみん)

 やはり本物の有機物で作られた食べ物は違うと思いました。コクがあるというか味が深いというか……うまく説明出来なくてすみません。

 でも分かったことがありました。多分ですけど、店員さんは『ショウロンポ、熱いから気を付けて』と言ったのでしょう。

 ショウロンポをハフハフと言いながら食べきると、米を炒めた料理がテーブルに置かれました。隣のナイスミドルが食べていた料理です。


「これは何という名前の料理ですか?」

「はあ?」

「だから、名前です」

「私の名前は……」

「違いますよ、料理の名前です。あなたの名前は興味ありません。料理の名前が知りたいんです」

「おお、炒飯ね。炒飯って言うね」

「チャーワンですね」


 チャーワンも美味しい食べ物だったので短時間で完食しました。私の語彙では上手く味を表現できないことが残念です。

 星外旅行における初めての料理に満足した私は、店員さんを呼んで会計を済ませ店を出ました。

 ちなみですが、惑星【異】における数は10進法で世界共通記号となっています。絶対に必要だとそれだけはちゃんと思い覚えてありました。

 会計時に店員さんに教えてもらっていたチョンキンホテルの方角に向かって、夜のチムサーチョイを満足しながら歩いていると、急に眠気が襲ってきました。


「ふわぁ……」


 惑星連邦外への星外旅行で気が張っていて、その緊張が満腹になることで緩んだのでしょうか?

 それとも、店員さんに一服盛られたのかも?

 これは危険な状況に……

 こんな眠気は初めてで、瞼が重く感じ歩きながら眠りそうに…… 


今日は二話アップ出来ました。

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