第7話 ホンコン散策でちょっと問題が……
地図アプリを使っても迷子になります。
そんなヒカルが紙の地図を頼りにホンコン散策をして問題なしとはなりません。
ここで少し惑星【異】について説明をさせてもらいます。
惑星連邦未加入の辺境の未開惑星【異】の環境や生物のDNA、生体、多くの動物、惑星の質量、海と大地の割合、気候、恒星との位置関係、1日が24時間であること、生活環境、食物摂取状況、それらが私の故郷星である惑星テラと共通しています。
一部のマニアックな科学者の中からは、1000年前の惑星大開拓時代、惑星テラ出身の何人かが惑星【異】にたどり着き、なんらかの原因で母星との連絡がとれなくなり惑星【異】をテラフォーミングしたのではと、そんな説を唱える者もいたりします。
前述もしましたけど、私が惑星【異】の担当になった理由は、同じヒューマノイド型であることと、環境が惑星テラに酷似していることもあるのです。
もちろん惑星テラとは大きな違いもあります。
これも前述しましたけど、魔女、魔法、魔王に勇者、そして神などが実在すると言われる星なのです。
そして問題なのが……
魔族です。
魔族は人族を誘惑し襲い殺したりするそうで、人族の恐怖の対象だと言うのです。
繁殖能力の強い人族の、人口増加を留めるための一面もあるようです。
また、魔族は魔力を持った魔物を従えているとのことで、そちらも要注意です。
あの二足歩行牛のミノタウロスのようなのです。
あ、もちろんのことですけど、魔族や魔物に対する予防策はしてあります。
惑星連邦だって調査員を赴任させるのに、その辺りの対策は考えています。
私も命のやり取りなんてするつもりはありません。
ういった予防策があるから仕事が出来るんだし。
具体的な対策方法は後ほど……
と、色々と興味深い惑星【異】ですが、少々どころか大変不便なことも多々あります。
惑星【異】は辺境の未開惑星らしく、統一言語、統一通貨、統一国際法など惑星全体での統一事項がありません。
そしてもちろん、高速交通機関も未整備です。
ただ、何もかもが統一されていないことによる楽しみもあります。
御当地グルメです。
惑星テラ人である私は、惑星【異】の食品は摂取可能です。
なので惑星【異】での食事というのは楽しみの一つでもあったのです。
惑星【異】は農業コロニーも気候コントロールもなく、ましてや流通も発達していません。
よって、それぞれの地域の食材は、地域特性が強いのです。ということは一つの惑星の中に、無数の名物料理というものがあるのです。
食いしん坊の私としては、そういった情報には目がなくて……
あ、もちろんですけど、任務を忘れていませんよ。
惑星【異】で確認された巨大生物について、ちゃんと調査を進めるつもりです。
観光や食事とかが最優先事項ではありません。
本当にちゃんと覚えています。
まずは話をホンコンのチョンキンホテルに戻します。
チョンキンホテルの一階は、食事も出来るしお酒も飲む事ができる食堂になっています。
整理するような荷物もない私は、部屋を一通り確認すると直ぐに受付に降りました。
するとなんだかロビーが騒ついているのです。
私は受付の綺麗なお姉さんに尋ねることにしました。
「えっと、何かありましたか?」
「おはようございます。先ほど、●▪️▲から魔物が逃げ出しまして、●◾️らが〇〇しようとしたのですが、既に死んでいたのです。誰が〇▪️したのかしら。ミ◾️●▲ロスなので簡単には●×出来ないのですけど」
この時は翻訳できない単語多く、全部は理解しきれませんでした。
けど、『魔物が街に現れて、で、いつの間にか倒れていたのですけど、誰が倒したか分からない』といった感じなのだと思いました。
もちろん、直ぐにミノタウロスのことなのかと頭に浮かびました。
そして自分とは関係ないとは思ったのですけど、それでもなんとなく後ろめたく思ってしまったのを覚えています。
「そ、そうですか、あ、あの、ホンコンの名物料理を食べたいと思うのですけど、お勧めはありますか?」
誤魔化す感じで、受付のお姉さんにホンコンの名物料理を聞きました。
「色々とありますが小籠包が美味しいですよ。小さな蒸し饅頭です」
「ショウロンポ、ですか?ここで食べれますか?」
「小籠包ならここで食べるより、このホテル近くにある〇●〇◎という店で食べた方が良いです。ここは夜になると◎〇〇●が集まって……」
と、そんな意味の事を言われたのですけど、やはり聞き取れない部分があり、全部を理解しきれませんでした。
ですがこのホテルの食堂ではなく、違う店で食べろと言っている事は分かりましたので、外食をすることにしました。
「すみません。ショウロンポの食べれるお店の名前、なんと言うのですか?」
「〇●〇◎。〇●〇◎です」
「えっと……?」
「ティ●●です」
「えっと?」
「ティンタイフォンです。ティンタイフォン」
何度も聞き返す私にいやな顔せず、受付のお姉さんは分かるまでゆっくりと言ってくれました。
「ティンタイフォン。ティンタイフォンですね。地図を書いて下さい」
お姉さんに簡単な地図を書いてもらい、早速夕暮れのチムサーチョイの街に出ることにしました。
惑星【異】においての初めての観光……失礼、調査に出発です。
未開惑星の都市であるチムサーチョイには街路灯やネオンはありません。
ので当然の如く夜間は暗くなります。
ですが、人通りが多い道には、露店の提灯があるので物騒な雰囲気はしませんでした。
地図を頼りに通り沿いに歩くと港が見えてきました。
潮の香もしましたが、なんとなく生臭い臭いもしました。
なんの臭いでしょうか?
港の岸壁からは対岸の街並みが見えました。
前述の通り、ホンコンは複数の島が集まった国です。
チョンキンホテルはクーロン島にあり、その対岸に見えたのがホンコン島という王宮のある方の島です。
この二つの島が一番大きく発展しています。島と島の間は泳いで渡ろうと思えば渡れるような、ちょっと難しいような、そんな距離でした。
距離感の乏しい私にはそんな説明しか出来なくてすみません。
そのまま海岸沿いを歩いている私に、またもちょっとした問題が降りかかりました。
「って、う〜ん……」
いや、何というか……ほら、私、一応22才ですし、成人なんですけど……
題名で内容が予想できないといった意見をもらいました。
ので、題名を変えました。