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〜【異】世界の歩き方~  作者: スタジオ310
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第5話 ファーストコンタクトとトイレ事情

 さてそれよりも、スキップや感動してばかりではいられませんでした。

 まずは最初の難関である、惑星【異】の住人とファーストコンタクトを取らなければならなかったのです。

 惑星【異】の言語は国によって違います。

 そしてこの時の私は翻訳機が無くエイ語もカタコトでした。

 どの人に声をかけたらと周りを見渡し、なんとなく優しそうに感じる露店のお姉さんをファーストコンタクトの相手にすることにしました。

挿絵(By みてみん)


「チョンキンホテルへ行きたいのです。場所はどこですか。お願いします」


 チョンキンホテルというのは、連邦からの指定宿でした。

 ホンコンが最初の転送地と指定されていたように、最初の宿もチョンキンホテルと指定されていました。

 連邦から見てそれだけ信頼度が高い宿だったのでしょう。

 そのチョンキンホテルへの行き方をまず知りたいと思い、聞いてみたのですけど……


「〇×▼▼」


 と、お姉さんから返ってきたのは、残念ながらエイ語ではなかったのです。

 跳ねるような擦るような発音でしたので、ホンコン公用語のチュウ国語です。

 エイ語がどこでも通じるとは思ってはいませんでしたけど、最初からこうなるとは予想外でした。

 二足歩行の牛もそうでしたけど、予想外だらけの展開でした。

 けど、ここまで来たら前へ進むしかなくなりました。


「チョンキンホテル。チョンキンホテル」

「〇×▼▼」

「だから、チョンキンホテルに行きたいんですよ。チョ、ン、キン、ホテル」

「〇×▼▼」

「もう、チョンキンホテルですってばぁ」


 私はエイ語どころか、惑星テラの言葉にチョンキンホテルという単語を入れて、身振り手振りを繰り返しました。

 今考えるとですけど、街中でゼスチャー混じりの拙いエイ語を話し出した私は、恥ずかしい人だったのかも知れません。

 けどこのときは、なんとかファーストコンタクトを成功させたくて必死だったのです。

 でもそれが功を奏してか、お姉さんは作業する手を休め、雑紙にチョンキンホテルへの地図を書いてくれたのです。

 お客でもない私がそこまでしてもらえたのは、哀れだと思われたからかも知れませんね。

 とにかく、親切なお姉さんで助かりました。


「ありがとうございます」


 お礼を言って地図を頼りに歩くと、ものの数分で目的のチョンキンホテルにたどり着きました。

 ちなみにですが、ホテルという字を知らない私がどうやってたどり着いたかというと、お姉さんから貰った地図と、それらしき建物に掲げられた看板らしきものに、ベットと皿とフォークの絵が書いてあったからです。

 ちなみにですけど、ベットと皿とフォークというアイコンは、惑星【異】において世界共通のアイコンでしたので、以後どの街に行ってもホテルを探すのに役立ちました。

 チョンキンホテルの場合、地図を書いてくれた女性の屋台から単純にまっすぐ進んだだけの場所だったので、迷うようなこともなかったのですけど。

 チョンキンホテルは繁華街の中心にある4階建ての石造建物で、1階はお酒の飲める食堂のようになっていて、一番奥のカウンターがホテルの受付にもなっていました。

 

 ただ、またここで小さい問題が……

 

 チョンキンホテルに着いたのは夕方という時間帯でしたが、食堂には常連さんらしきお客さんが数人いました。

 その客層が少しばかり粗暴な雰囲気をもっている人たちでしたので、中に入るのを躊躇してしまったのです。


「えっと……」


 現地の人との触れ合いだのと言っていますが、私は自称うら若き乙女です。

挿絵(By みてみん)

 予想外の客層に戸惑ってしまい、口角がひきつってしまっても仕方ないと思うのです。


「間違えたかも……」


 と、そんな思いが頭を過りました。

 ですけど、星外最初の宿でしたし、連邦指定の宿でもありましたので、ここで引いたらこの先の任務は続けることが出来ないと思い直しました。

 

「こ、こんにちは……」


 よそ者に対する警戒からか、食堂の客さんらの視線が厳しく感じましたが、誰にというわけでもなく、作り笑顔で奥のカウンターへと進みました。

 惑星【異】には電気文明がありませんので、照明器具というのは基本的にろうそくやランタンとなり、屋内は少し薄暗く、それが粗暴な雰囲気を助長していたのかも知れません。


「し、失礼しまぁす……」


 ドキドキしながらホテルの受付へと向かおうとした私は、


「お客さん、こちらへどうぞ」

 

 と、受付の女性にエイ語で声をかけられました。

 その女性は非常に綺麗で、優しいというか包容力があるというか、粗暴な雰囲気のホテルに似合わない女性でした。

挿絵(By みてみん)

 粗暴なお客さんたちも、受付のお姉さんがいれば安心できる気がしました。 


「宿泊ですね。彼らは無害です。問題ありません」

「はいお願いします」


 その女性はエイ語を話すことが出来たので、カタコトのエイ語使い、足りないところはボディランゲージを駆使して、惑星【異】に慣れる期間として一週間ほど連泊したいと告げました。


「一週間ですね。開いてる部屋は一泊10ダラーの部屋です」

「食事、付いてますか」

「いいえ。食事したいならこの食堂でどうぞ。朝はやってませんが、昼と夜なら食べれます」

「トイレ、バスはありますか」

「バスタブはありません。水はあります。トイレはあります」


 受付の女性のエイ語は聞き取りやすく、理解も容易でした。ただ、直訳での『水があります』の意味は分りませんでした。


「バスタブはなくて水があるのですか」

「はい。水はあります」

「飲み水が部屋にあるのですか?」


 惑星【異】では、上下水が完備されていないと聞いていました。

 また生水は飲まないようにと注意も受けていました。


「いえ。違います。飲み水はこちらでどうぞ」


 女性がカウンターに置いてある樽から、コップに水を汲んでくれました。

 ホテルの受付には煮沸消毒をした常温の水が置いてあると聞いていたので、渡された水を遠慮なく口にしました。


「あ、ありがとうございます」


 どういうわけか、水を頂くことになってしまい、異星におけるファーストドリンクが、普通の水となったのですまた。

 いえ、なんでもかんでも過度に期待していたわけじゃなかったのですけど、思った以上に普通の水でしたので……

 

 なんにしても、受付の女性の感じが良さそうだったので、一泊10ダラーで6泊の契約をしました。

 相場は分かりませんでしたが、惑星テラのエンに換算して一泊1000エン程ならお安いのではないでしょうか。

 ドミトリーと言われる相部屋はもっと安かったのですが、異星における最初の宿で、見も知らぬ異星人と同室する度胸はこの時の私にはありませんでした。

 ちなみに、私はこの旅行をするのにあたって、惑星【異】で広く通用するというアメリカ国の通過で3千ダラーを準備してもらいました。

 惑星テラの通貨に換算すると30万エン程だそうです。あ、惑星【異】の通貨を、連邦がどうやって入手したのかは知りません。


 話を戻します。

 ホンコンにはホンコンダラーという通貨があります。

 けど基本的にダラーが通用するとのことだったので換金はしませんでした。

 案内された部屋はベットと簡易机があるだけの部屋で、小さな窓が一つあったのですが、その窓から見えたのは、残念ながら隣の建物の壁でした。

挿絵(By みてみん)

 シャワールームらしきドアを開けて中を覗いてみると、大きな瓶に水がくんでありました。

 そこにタオルがかかっていました。横に置いてある洗面桶で水を汲んで浴びるのだと分かりました。

 これが『水があります』との意味だったのです。

 あと、シャワールームにはカーテンで仕切られ、床に大き目の穴が開いている場所がありました。

 意味がわからず首を捻りました。

 と、私の部屋にはトイレが無いことに気が付きました。


「ということは、この穴はトイレですか?……う~ん。どうすれば?」


 うら若き女性がトイレと思われる床に開いた穴を見つめる光景は、シュールだったのではないでしょうか。

でも使い方は分かりました。

 しゃがんでするのです。

 文化の違いというものですね。



読んでくれている人っているのかなぁ

変な設定だし、戦わないし、チートもないし。

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