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いつまでも追い求める、男と女の完璧な情事のかたち

作者: 成生 隆倫


『セックスとは、裸のオンナと裸のオトコが局部をこすり合わせることである。』


そんな曖昧な認識で男女の秘め事に夢を抱いていた13歳だった。

陰部に毛が生え始め「大人」を実感し始めたあの夏、私は一冊のエッセイ本を手に取る。


そこに書いてあったのはエロ中学生の果てなき淫夢。

文化や時代は違えど男は男。考えていることはシンクロ率100%である。

純情で無知な当時の私はこの作者に心酔し、この人が書く書籍をじゃんじゃか買いあさるようになる。


東野圭吾エッセイ「あの頃ぼくらはアホでした」。

この東野圭吾氏が私の「性」の成長を促してくれたといっても過言ではない。


「秘密」「片想い」「変身」など様々な名作を生み出していく東野氏。

中学生という多感な時期ゆえ、はらはらと涙を流しながらひとつひとつ作品を胸の奥にしまった。


だがしかし、一番楽しみだったのは愚かにもストーリーではなかった。

そう紛れもなく詳細な描写のエロシーンである。


したこともなく、実物など見たこともない。ましてやまだ女子と二人きりのの逢瀬の経験もない。そんな私はひたすら東野圭吾氏の華麗なる文章から男女の妄想を膨らますほかなかったのである。


アダルトサイトは恐いものという認識がまだ当時は強く、それらを検索する勇気がなかった。ゆえに美術の資料集などで裸婦像を眺めてフンフン唸り、ものを猛々しくする。


それら男子生徒がみなやるようなものより、東野氏のエロシーンは私の心を強く動かした。オンナの裸を見て滾るのではない。細かな過程とそこにある人の感情に胸を震わせよ。そう人生の先輩が教えてくれたと、私は素直に感動した。


そこから数年たち、溶けるような恋に落ち、そして夢にまで見た行為に及ぶ。そして歳を重ねながらいくつかのあらゆる夜を越えてきた。


13歳の時に読んだあの名著たちに匹敵するような情事はいつできるようになるのだろうか。いつまでも追い続けていくのだろう。しょうがない。


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