UFDS・神崎美陸
なぜというか、やはりというか。
「美空ぁッ!」
屋上から美空が落ちていく。
死んでしまう。永遠にいなくなってしまう。無意味に伸ばした手は何を掴むこともなく、落ちていく美空を見届けることしかできない。
そばで夜行くんが茫然としている。無理もないだろう、こんな事態、青天の霹靂だ。
なにせ予兆がない。美空はずっとそうだったのだから。
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「い、痛い……何するんだよ美空」
「お兄ちゃんも死のうよ。お母さんのところに行こう?」
美空が天才であることは、幽霊を見たり操ったりする才能があることは、母からも祖母からも聞かされていた。私はそれがどこか誇らしくて、自慢の妹のようにさえ思っていた。
それが間違いだと分かったのは、母が死んでも感情が揺れることなく、帰ったその日に包丁で切りつけてきた時だった。
「死んだらまたあえるでしょ」
「美空、お前……」
子供だからか、純粋にそう信じている美空に覚えたのは怒りではなく恐怖だった。初めて身近な人が死んで、どこか現実味がない、明日にはまた会える気がするというような現実の受け止め方ではない。
人と幽霊の境がない当時の美空にとって、それは単なる事実でしかなかったのだ。
美空は、いっそ好きな人が全員死ねばみんながまたあの世で会えると思っていた。人懐っこく幽霊にまで話しかける、寂しがり屋な一面があった。
だから、私は美空が一人で死ねないように振る舞うことにした。
「……誰がついていくもんか。お前なんか嫌いだ」
美空にとってはそれは、勝手に死なれるよりも辛い出来事だったのかもしれない。
それでも私はとにかく美空を嫌い、無視し、自分ともっと小さな美海を守るように努めていた。
でもそれは美空が孤独であれば死なないと思っていたから。
美空のため、とまで言い切ることはできないけれど。
落ちていく美空に向けて伸ばした手は、結局届くことはなかった。




