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全ての呪いを〇〇〇〇するスキルを手に入れたけど、

作者: 猫とミカン

しんみりしたものをかきたかった。

この世界はスキルに支配されている、と言ってもいいだろう。15歳になれば誰でも最低1つは得られる神よりの恩恵。その効果は絶対で絶大だ。

使えないはずの魔法が使えたり、何も無い所からものを生み出したり。

習ったことの無い剣術が突然発揮されたり、料理がプロのシェフレベルになったり。

スキルの力を最大限に生かし、僕達は豊かな暮らしを送るのだ…!


なんてことは考えないほうがいいと僕は思う。


’レア’なスキルはお貴族様に持っていかれるらしい。なんとも、スキルを強奪する技術を上級国民様がたはお持ちのようだ。

だから、僕達のような貧しい平民には殆どその恩恵は与えられて無い。


そう。スキルには様々なランクがある。大抵は最低ランクの例えば「小指をタンスの角にぶつけても痛くなりにくい」「爪切りの時に深爪しにくくなる」みたいな日常の些細なトラブルを起こりにくくしてくれる程度のもので、それこそ先程述べた超つよつよなスキルなんて滅多にお目にかかれない。

だから、僕達のような貧しい平民にはスキルなんてお正月の占いよりも当てにされていないのだ。つよつよなスキルを夢見るよりも、我らが家業に勤しんだ方が絶対金稼げる。

そんなふうにして僕平民Jことジュリはスキルゲットだぜ式(正式名称不明)の日の朝も’羊牧草地へ歩かせるRTA’に励んでいた。最高記録は日が出てから2回目の教会の鐘がなるまで。今日こそは鐘を聞き終わる前に草場のゲートを閉めてやるぜ!(なお、達成できなかった模様)


「お主のスキルは、全ての呪いを打ち消しちゃう力じゃ!!」

教会のカツラを被ったエラそうな太っちょおっさんが何故かとてもうるさい。給紙口の無い謎装置から出てきたスキルの詳細が書かれた紙があるけど、僕にはミミズが這っているようにしか見えない。神様は僕達に紙をくれるのに髪はくれないんだねとくだらない事を考えていると、またまたエラそうなデブい鎧達磨達(教会騎士団)がワラワラ台所のGが如く現れて、僕をのそのそと(本人達は機敏に動いているつもりらしい)縛り付けて、めでたく僕は王都にドナドナされました。


いや、まぁ馬車が狭いのは我慢できるけど、一緒に積まれてたのがコショウだったのは一生許さん。くしゃみが止まらなかった。


強制王都連行を体験した僕はお腹が空いているのにデカい風呂にぶち込まれアホみたいに高そうな(値段)服を着せられてバカみたいにデカい城の1番高そうな(値段+高度)所につれてかれました。


わぁお。綺麗なお嬢さん。顔色悪いけど。何?呪いを打ち消せ?スキルなんて使ったことないし。というか、なんで僕はスキルを取られなかったんだろ。呪いを打ち消すとか割とつよつよじゃない?ていうかさ、タイトル'呪いを〇〇〇〇するスキル'なのにさ、「打ち消しちゃう」入らなくね?4文字じゃ無くね?

え、詠唱するの?だから文字読めないって。何?わしの言ったあとに続けこのバカ?僕が馬鹿ならお前はデブだ。この金属達磨!



「我、汝の受けし呪いの力、肩代わり(、、、、)せん!」



お嬢さんがとても喜んでいる。ピンクのほっぺが可愛らしい。さっきまで動くのも辛かっただろうに、今や走り回って、こちらを蔑んだ目で見てくるもんな…


僕?死にそうだ。体調不良すぎて。なにこの呪い。ていうか、騙しやがったこのクソ共。よくよく考えると打ち消しちゃうとか巫山戯た名前を神様がつけるわけないもんな。あのハゲ、ネーミングセンスの欠片もねぇじゃん。

あ、動けねぇ…なんか鉄の首輪付けられて鎖に繋がれて地下に監禁されちった。体が重い…


あれから僕はいくつもの呪いを肩代わりさせられた。なんかあの首輪、隷属のうんたらかんたららしくて、言いたくない事も全部言わされちゃうのだ。おかげで、僕は見るも無残な姿になっていることだろう。

でも。死ねない。

不死の呪いを肩代わりしてしまったからだ。一生僕を飼い殺しするつもりなのだろう。あのお婆さん、無事に成仏出来ただろうか……


なんか、僕人類辞めてる気がする。

不死だし。飯食えないし。寝れないし。年中無休で体調不良だし。体中が痛いし。

薄暗い地下にもう何年閉じ込められただろう。いや、実際は8日とかかもしれないけど。一気に色んな事を経験しすぎて僕のつるつる脳みそが追いついていない。


ちょっとだけ、鉄格子の向こうが騒がしい。別の人が連れてこられたみたいだ。

いやー、なんか国の闇を全力で体験している身から言わせてもらおう。この国、腐ってるわぁ…


またいつもみたいに呪いを肩代わりしました。


突然、女性から角と羽が生えました。


なんか、この国滅ぼされました。





いや、展開早すぎない?とか言わないで。僕、牢屋の中。あの角と羽が生えた綺麗なお姉さんが見えなくなって、また帰ってきた時には全部おわってたんだもん。


どうやら、角羽さんは魔族のトップ3だったみたい。トップ2に人間化の呪いをかけてもらって、その呪いを僕が肩代わりしてもらって解くことでバレずに王城強襲に成功したらしい。


え?僕が英雄?

魔族繁栄の立役者?

なんか僕、人間なのにめちゃくちゃ褒められてる、魔族に。


え?角羽さんが婚約者?

僕に一目惚れ?

なんか僕、目付き悪い凡人なのにめちゃくちゃ惚れられてる、美人に。


え?呪いが解ける?

スキルを奪われることで?

なんか僕、スキルあげたのにめちゃくちゃ恨まれてる、貴族に。


ま、まぁ呪いのオプション付きだしね…

ていうか、僕、とても幸せになってません?

いや、幸せです(困惑)。

可愛い奥さんと子供に恵まれて、ずっと魔族の国の報奨金で生きていけて、趣味の羊牧草地へ歩かせるRTAに勤しむ毎日。


まぁ、1個だけ言わせてもらおうか。

全ての呪いを肩代わりするスキルを手に入れたけど、僕はとても幸せです。まる。

しんみりしたものをかきたかった。

けれど、それは願望でしかなかった。

いつのまにか、ネタに…泣

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