表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/48

42話

 ――あれから数日。


「ツバサくん、お待たせっ」


 いつもの公園、いつもの時間。

 本を読んで待っているツバサくん。


「お帰り、リンゴ」


 ツバサくんはいつも通り手を差し出して、私の手を取る。


「その大きさのツバサくんには、やっぱりまぁちゃん不自然だね」


 すっごくカッコいい男の人が、すっごく間抜けなうさぎのぬいぐるみを抱えている。

 苦笑する私に、ツバサくんはため息を吐く。


「こいつがついてくるって聞かないんだから、仕方ないだろ」


 そう言いながらも、ちゃんと連れて来てあげるのが、ツバサくんの優しさなんだろうな、と思った。


「まぁちゃんは、リンゴたんの味方なので!うぐぅっ」


 不用意にしゃべるまぁちゃんの顔は、やはりツバサくんによってつぶされる。


「貸して、私がまぁちゃん持つよ」


「よろしく」


 いい歳した私がぬいぐるみ抱えてるのも、傍から見れば変なのかもしれないけれど、ツバサくんが持つよりは。


「はぁ~! リンゴたんはツバサくん違って、やわらかくて気持ちいいですねぇ」


「ちょっ、まぁちゃん!」


 そう言いながら私の胸に顔を押し付けてくるまぁちゃんを見て、ツバサくんが睨みつける。


「おいお前、前から言おうと思ってたんだけどな」


「いいですねっ! 出るところに出よーじゃないですかっ! リンゴたんのお胸みたいにっ!」


「まぁまぁまぁまぁ」


 というか、変なこと言わないでくれる? まぁちゃん。

 無言のまま笑顔でまぁちゃんを握る手に力を込める。


「リ、リンゴたんはツワモノですぅ…」


「わかればいいんだよ?」


 笑顔で言う私とまぁちゃんのやり取りを見て、ツバサくんは笑っている。


「というか、ツバサくんは、毎日迎えに来てくれなくてもいいんだよ? 私より忙しいのに」


 そう言うと、ツバサくんは繋いでいる手に力を込めた。


「俺の楽しみを奪うな。それに、夜道は危ない」


「そ、そっか。ありがとう」


 楽しみ、なんだ。なんか可愛い。


 その後知ることになったのだけれど、ツバサくんは某世界的有名企業の社長さんで。

 本当は海外を飛び回ったりしなくてはいけない立場の人だった。

 身体が小さくなる前に、ある程度信用できる奴に業務は引き継いだから、そんなに忙しくはない。

 そうツバサくんは言っていたけれど。

 身体が小さかった頃から、よくよく考えたら私より先に寝たところは見たことがなくて。

 今思えば、当時から夜中に仕事をしていたのだろうと気付いた。

 昼間も私の監視と言いながら、図書館を離れることはよくあった。

 その時から、遠隔で仕事をしていたのかもしれない。


 それでも、一緒の時間を作ろうとしてくれることが嬉しくて、私はそれ以上なにも言わずに甘えていた。


 一度、ツバサくんのお家にも遊びに行かせてもらったけれど。

 とてもじゃないけどスケールが大きすぎて、落ち着かなくて。

 一緒にこの家で暮らすかと聞かれたけれど、私は断った。


 私の身の丈に、とてもじゃないけれど合っていない。

 ツバサくんもそれ以上はなにも言わなかった。

 図書館の仕事のことについて、なにか言われたことは一度もない。

 私が好きで働いていることを、これまでの生活の中で理解してくれているからなのだと、私は思っている。


「本当に、ありがとう」


 あらためてお礼を言うと、ツバサくんは笑顔で首を傾げた。


「どうした?」


「なにもないよ」


 そう言って首を横に振ると、ツバサくんは幸せそうに微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ