41話
「ツバサくん、私、幸せ、だよ」
「うん」
「前に聞かれた、ツバサくんの質問の答え、出たよ」
「うん」
「ツバサくんと一緒にいることが、私の幸せ」
「うん」
「うん、ばっかり」
「…うん」
私の右肩に顔をうずめたまま、抱きしめたままのツバサくんは何度も頷く。
泣いてる?
そう思って、そのまま私は顔を見ないようにツバサくんを抱きしめ続けた。
どれくらい経っただろう。
その後、顔を上げたツバサくんはやっぱり目を真っ赤にしていて、少し泣いたのがわかって切なくなった。
それでも私は笑う、幸せだ。
すると、抱きしめる腕はそのままに、ツバサくんの顔が私に近づいてくる。
私が目を瞑ると、そのまま静かに、唇が重なる。
最初は軽く何度かくっついては離れてを繰り返していたが、突如深く、深くなる。
ちょっと待って、ついてけない!!
私が背中に回した腕を何度も叩くと、名残惜しそうにツバサくんは離れてくれた。
「…っ! もうっ!!」
「ははっ、リンゴ真っ赤」
誰のせいだ、誰の。
いたずらっぽく笑うその顔は、小さいツバサくんの頃のままだ。
なんなのこの人、どのくらい手馴れてるの。
「…チャラ男」
「おい、誰がだ」
視線をそらして呟いた私に、ツバサくんはもう一度軽いキスをしてくる。
「そーいうとこだよっ!」
もぅ、と頬を膨らませると、ツバサくんは笑った。
すると突然。
「ツバサくん、まぁちゃんはハッピーエンドうれしいですよー!! …うぐぅっ」
「お前は相変わらずだな」
突如、空気を読まず間に入って来たまぁちゃんの顔を、無遠慮に握りつぶす。
大きくなったツバサくんの手では、本当にまぁちゃんの顔、つぶれちゃってるけど大丈夫ですか。
と、それより。
「え?」
「どしたですか? リンゴたん」
「どうした? リンゴ」
「まぁちゃんは、このままなの?」
素朴な疑問を二人にぶつける。
まぁちゃんは、さっきの光に包まれて消えちゃったりするのが、よくある物語のセオリーってものじゃないの?
「なんですかっ! リンゴたんは、まぁちゃんに消えてほしかったですかっ?! ひどい話ですー!!」
驚いた顔をしたまぁちゃんは、初めて私に向かってポカポカと反撃を始めた。
あ、本当に痛くないんだ、これ。
「ご、ごめんごめん。そういう意味ではなく」
あれ?
私の予想は違ってたの?
「あー…なるほど」
私が考えていることがなんとなくわかったツバサくんは、納得したように頷いている。
その顔を見て、私の予想は間違っているんだろうなということを察した。
「え、なになに。教えてよツバサくん」
私がツバサくんに詰め寄ると、ツバサくんは一瞬考える素振りをしたがまぁちゃんに声をかける。
「なんだっけ? 聞きたいことは本人に聞け、だっけ?」
そう笑いながら尋ねると、まぁちゃんは部屋をくるくると飛び回り始める。
「そーですねっ! 又聞きなんて、ナンセンスでっす!」
この二人、なんだかんだ仲良いんだよね。
二人に手を組まれると、勝てる訳がない。
「まぁちゃんは一体何者なの?」
素直に尋ねるとまぁちゃんは私の目の前で浮いたまま首を傾げる。
「ひみつでっす!」
顎の辺りに手を当てたまぁちゃんは、にやりと不敵な笑みを浮かべた――ように見えた。




