表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/48

40話

「リンゴ…?」


 目の前の男の人は、なにが起きたかわからない、という顔で自分の姿と私を交互に見比べる。

 その人は、とてもカッコいい人で。

 でも、私を見る優しい目を見て、一瞬でわかった。


「ツバサ…くん」


 元に、元に戻ったんだ。

 こんな顔、してたんだ。学生の時は、本当に、一度もちゃんと正面から顔を見ていなかった。


 ――いなかった。が。


 ちょ、ちょっと待って。でも待って。

 落ち着いて、落ち着いて私。

 こんなにカッコいいなんて聞いてない。

 そんなの知らない。

 本物の、というか成長したツバサくんは、私が想像していたよりもはるかに綺麗な人で。

 芸能人とか、雑誌とか、なにに載っててもそりゃおかしくないような風貌で。


「無理無理無理無理無理無理無理無理!!!」


「な、なにが…」


 思わずそう口走っていた。

 聞きたいことがあるのはきっと、ツバサくんの方なのに。

 あからさまに首を横に振って動揺する私を見て、ツバサくんは心配そうに手を伸ばす。


「やっ…」


 恥ずかしくて思わず目を瞑る私に、一瞬手を止めたツバサくんだったが、私がそれ以上は逃げないことを確認すると、そのまま力を込めて抱きしめてきた。

 ツバサくんの匂いだ。

 咄嗟に、そう思った。

 大きいけどやっぱり、本物なんだ。


「好きだ、リンゴ」


 私を抱きしめ、右肩に頭を乗せたままのツバサくんが、そう呟く。

 抱きしめ返して、いいんだよね?

 私はおそるおそる、ツバサくんの背中に自分の腕を回す。

 予想以上に大きくて、驚いた。


「ツバサくん、おっきい」


 思わず笑ってしまった。


「リンゴは、思ってたより小さい」


「…私のサイズは変わってないよ」


 頬を膨らませて悪態を吐くと、ツバサくんが笑ったのがわかった。

 私は一度ツバサくんから手を離し、顔を見て向き直る。


「ツバサくん、大好きだよ。お帰りなさい」


 精一杯の笑顔で言ったけど、嬉しくて嬉しくて、言いながら涙がこぼれてしまった。

 両腕を開いて、ツバサくんを迎える。


 ツバサくんはそれに応えて、私をきつく抱きしめると耳元に囁いた。


「ただいま。本当にありがとう」


「ひゃっ」


 耳元で響いた声が、予想以上に低く聞こえて、私は肩をビクッと竦ませる。

 そうだ。

 当たり前だけど、声も全然違う。


「リンゴだ…」


 私の髪を撫でながら、ツバサくんはしみじみと言った。

 手は大きくなっても、撫でる速度や優しさは小さかった頃と全然変わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ