39話
「私がさせないっ! 絶対にっ!」
ツバサくんは言ってくれた。私が笑う世界を守りたいって。
そんな人が、世界を滅ぼす訳なんてない、絶対に。
そんな私を見て、まぁちゃんはツバサくんの荷物の中から、絵本を取り出して、差し出してきた。
いつの間にこんなに埋まっていたのだろう。
絵本は完成していた。
中のページを見て、私は息を飲む。
最後の数ページは埋まっていなかった。
読めるページを全部読んだ後、まぁちゃんを見る。
「まぁちゃん、これは…」
「リンゴたんは、なにを望みますか?」
そう言われて、もう一度絵本に目を落とす。
「――私の願いは、ツバサくんと生きて行くこと。ツバサくんと一緒にいること」
はっきりそう口にすると、まぁちゃんが絵本に手を伸ばす。
「まぁちゃんも、お手伝いするですよっ!」
それを見て、幼いツバサくんも一緒に絵本に触れる。
「僕もっ! 僕の大好きなおねーちゃんのおねがいならっ」
屈託なく笑うツバサくんは、いつものツバサくんの面影が少し残っていて、私は眉間に皺を寄せたまま、笑った。
「二人ともありがとう。私、幸せみたい」
『幸せ』
そう言った瞬間、絵本が光る。
光が強すぎて、私は思わず目を瞑る。
まぶしい、一体なにが起きてるの。
目を開けたいけれど、閉じた目蓋の向こう側が目を閉じていてもわかって、開けることができない。
数秒後だったのか、数十秒後だったのか、俯き加減になんとか目を開けると、目の前いっぱいに大きな木が生い茂っているのがわかった。
ただこれは、現実のものではないことも、同時に理解する。
なにこれ、綺麗――
CGのような、幻想的な。
その木の向こうに、なにか妖精のような女の人の姿が見える。
その人は、笑っていた。
なんだか幸せそう。こっちまで嬉しい気持ちになる。
――願いを叶えてくれて、ありがとう――
そう、頭の中に直接声が響いて、また視界が光で真っ白になる。
また目を開けていられなくて閉じた後、光が止まったのを感じて、再度目を開く。
そこにあるのは、完成された絵本と、私の元の部屋と。
それと、見知らぬ男の人の姿だった。




