27話
それから電車を乗り継ぎ、バスに乗って、私達はとある田舎へとやって来た。
「次で降りるぞ」
「え、ここって…」
見覚えのある景色に、私は目を丸くした。
バスに乗り始めた辺りから、まさかとは思ったけれど、本当にここに来たの?
降りたのは、丘の上にある、小さな本屋の前。
正確には、元本屋。
この町は、私が高校生の時に通った町。
なんにもなくて、せまくて、でも懐かしい。
地元から少し離れた高校に通っていた私は、高校の三年間だけ、この町に通った。
卒業して以来、一度も来たことがなかった。
「今はカフェになっちゃったんだね」
店の外観の形しか、面影の残ってないことが少し寂しくて、私は思わずそうつぶやいていた。
「ここね、私が高校生の時に、通い詰めてた本屋さんがあったんだ。その頃は、アルバイトなんかしてなかったから、お小遣い握りしめてどの本を買うかにらめっこして」
懐かしくなって、思わず私は色んなことをツバサくんに話し掛けていた。
店番は、いっつも寝ているおじいさんがやっていたこと。
田舎だから、新刊の入荷が遅くて、そのおじいさんを何度も困らせたこと。
家まで持って帰るのが待ちきれなくて、いつも、近くの丘の上にある展望台のベンチで読んで帰っていたこと。
いま思えばくだらないかもしれないけれど、私の青春だったのかもしれない。
「展望台、行ってみるか?」
「いいの?」
「あぁ」
そういうと、ツバサくんは展望台がある方に向かって歩き出す。
――あれ、私、展望台がどこにあるかなんて言ったっけ?
数分坂道を登って行くと、懐かしい展望台が視界に入る。
「わぁっ! なつかしい!」
少し小走りでベンチにたどり着き、腰掛ける。
ここに座ると、高い建物がないこの小さな町を一望することが出来る。
ツバサくんは、私の左隣に座った。
「あれ…?」
私、この光景知ってる。
見たことがある。
座った先に広がる景色のことじゃない、私の左隣にいつも座っていた人のこと。
私は思わず、ツバサくんを見た。
ツバサくんはいつもの綺麗な顔で、まっすぐ私のことを見ている。
「思い、出したか?」
そう言うと、ツバサくんは丘の先の景色に目線を移す。
「ここは俺が、よく学校をさぼってた時に来ていた場所だった」
なに、を言っているの、ツバサくん。
私とツバサくんは、あの日、仕事の帰り道に初めて出会ったんじゃないの?
「少し、昔話をしようか、リンゴ」
ツバサくんは少し気まずそうに、微笑みながら話を始めた。




