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26話

 そうだった。

 夜中、起きた時はまぁちゃんが一緒に寝ててくれてたのに。

 完全に忘れていた。

 ――どうも、根に持たれてしまったらしい。


「ご、ごめんね。でも、いちゃいちゃしてた訳では…」


「俺はしてたつもりだったけど」


「まぁちゃんは、していたと思うです」


 こ、この二人はなんでこういう時だけ気が合うの。

 てかなんで、ツバサくんはそんなに涼しい顔してるの。


「そ、それよりその絵本。久しぶりに見た。どこまで進んだの?」


 話をそらそうとツバサくんの絵本を指差す。

 絵本に目をやったツバサくんは、一瞬苦い顔をした後、表紙だけ見せてきた。


「絵が、浮かび上がってきてる…?」


 前に見た時は、本当に真っ白な本だった。

 表紙に、なにかうっすらと絵が見える。

 なにが描かれているかまでは認識できないほど、うっすらだけれど。


「中身は…?」


 そう言って、絵本に手を伸ばそうとしたところで、ツバサくんは絵本を引っ込めてしまった。


「ごめん、それは見せられない」


「どうして?」


「ごめん、な」


 首を傾げる私に苦笑しながら、頭をポンポンと撫でてきて、それ以上なにも言えなくなってしまった。

 聞くなと、言うことなのだろう。

 先ほど二人がしていた会話を思い出す。

 無理に聞き出したら、ツバサくんは私のことを嫌うかもしれない。

 そうしたら、役目なんか無視して、私の前からいなくなるかもしれない。


「こっちこそ、ごめんなさい。無理に見ようとして」


 ツバサくんは黙って首を横に振る。

 そして、


「今日は行きたいところがあるんだ。着いてきてくれないか?」


 と立ち上がった。

 ツバサくんが自分から行動を起こすことは珍しい。


「う、うん。もちろん! どこでも着いてくよ! ちょっと待っててね、今準備を」


 ツバサくんからなにか提案してくれる、それだけで嬉しくてあからさまに表情を明るくする私を見て、ツバサくんが苦笑する。


「そんなに、楽しい場所じゃないかもしれないぞ?」


「ツバサくんとなら、どこでだって楽しいよ?」


 笑顔で答える私にツバサくんは眉間の皺を深くする。


「ったく、お前は…」


 それから、朝ごはんも外で食べようという話になり、準備を短時間で済ませた私達は、家を出る。


「まぁちゃんは、お留守番してますですよー。二人のジャマは、しないのですっ! まぁちゃん空気よめる子ー!」


 ひゃっはー! と、まぁちゃんは楽しそうにくるくると部屋を飛び回っていた。

 まぁちゃんが着いてこないなんて、珍しい。少し不思議には思ったけれど、特に深く考えず、私達は家を出る。


「じゃあね、行ってきます」


「いってらっしゃーいですっ!」


 玄関の扉が閉まる。


「ふぅー! 行っちゃいましたね」


 私達がいなくなったのを確認すると、まぁちゃんはツバサくんの置いて行った絵本の前に着地する。


「リンゴたん、幸せになってください。まぁちゃんは、応援しているのですっ」


 まぁちゃんが絵本に触れると、絵本がうっすらと光り始める。

 また少し、表紙の絵に色が増したように見える。

 それを見たまぁちゃんは、表情の変わらない顔で、にっこりと微笑んだ。

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