21話
どうしたじゃないよ、まったく。
私は、どう形容したらいいのかわからず、泣きそうな笑顔で答えた。
「ありがとう。私も好きだよ」
この旅行の前、まぁちゃんは言っていた。
好きな気持ちは素直に伝えた方がいい、と。
ツバサくんも同じなんだ。まっすぐ、伝えてくれている。
その気持ちを、少しでも返せたらいいと思った。
私の言葉を聞いて、ツバサくんは少し意外そうに目を見開いたが、次の瞬間やわらかい笑顔になって、私の右頬に手を伸ばしてきた。
「リンゴ、顔赤い。可愛い」
頬を撫でながらそんなことを言うツバサくんに、私は頬を膨らませ、眉間に皺を寄せる。
「可愛い訳ないじゃん。それに、顔が赤いのはお酒のせいだよ」
「…一応言っとくけど。その顔、拗ねてるようにしか見えないからな」
「へ?」
自覚ないのかよ…と、ツバサくんはため息を吐いた。
どういう顔してるの、私。怒ってるんだけど。
顔が赤いのは、恥ずかしいからだと思うけれど、お酒で酔ってるからっていうのも、たぶん半分くらいは本当だよ。
「涙目、赤い顔、上目遣い。お前、誘ってんのか?」
そんなこと言われましても。
「なんでそれが誘ってることになるの?」
わからない、という顔で首を傾げる私を見て、ツバサくんはさらに深いため息を吐き、眉間に皺を寄せる。
「お前が悪いんだからな」
「え…」
そう言うとツバサくんは、私の頬に当てていた手を私の首へと回し、自分の方へ引き寄せてきた。
同時に、自分の顔を私の方へと近づけてくる。
私は反射的に目を閉じて、肩を竦めた。
その瞬間――
ドォーーーーーーーーン!
心臓まで響く轟音と共に、閉じた目蓋の向こう側が、明るく光るのが分かった。
咄嗟に目を開け、音の鳴る方を見ると、光の花が、視界いっぱいに広がる。
花火だ。
「わぁっ…! キレイ!」
思わず笑顔になって見惚れてしまう私を見て、ツバサくんはりょうてを私の首に回し、うなだれる。
「はぁ…」
「?」
ツバサくんの深いため息を見て、首を傾げた私は、視線をツバサくんに戻す。
「ちょっ…!」
うなだれたツバサくんの顔は、私の胸のすぐ近くにあった。
ちょっと待って、この体勢は恥ずかしい!!
ワタワタとし始めた私に気づいたツバサくんは、それを押さえ込むように、首に回していた手に力を入れて私を引き寄せ、抱きしめた。
「少し黙れ、思い知れ」
バスタオルを巻いているとはいえ、直接肌と肌が触れ合う感触に、私は固まってしまった。
抱きしめられたことで、ツバサくんの顔は見えなくなったけれど、こっちの方が恥ずかしいのはなぜ。
ただ、抱きしめてきたツバサくんはあったかくて、言葉がなくても私のこと嫌いじゃないんだなって実感できて、そのぬくもり以上に、心があったかくなるのを感じた。
離れたくない、もう少しだけ、このまま――。
私達の横では、引き続き綺麗な花火が何度も何度も上がっている。
私の髪を優しく撫でるツバサくんに軽く身体を預け、私はそのまま上がり続ける花火を黙って、いつまでも見つめていた。




