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20話

 その後、まぁちゃんを部屋に残したまま貸切風呂に来てしまった私達は、現在に至る。

 温泉に入る前にもちろん、バスタオルは巻いたけれど、それで済まされるような恥ずかしさではない。

 水着だって、学生の時以来着た記憶はないのだ。それくらい、誰かの前でこんなに肌を露出させることなんて、まずない。


「あ、あの、ツバサくん」


「…なんだ」


 ぶっきらぼうに返事をしたツバサくんの声が、少し怒っているようにも聞こえて、表情を確かめたくても振り向けない私は、必要以上にビクつく。


「なんか、ごめんね。私がはっきり断れなかったから…」


「リンゴは悪くない。あのおばさん達二人の相手がリンゴにできるなんて、始めから思ってないから大丈夫だ」


 特に怒ってはないみたい。だけど。


「…それは、それで、失礼だよ?」


 少し怒ったフリをして、頬を膨らませていると、ツバサくんが少し動揺したのが分かった。


「…ごめん」


 素直に謝るツバサくんに、申し訳ないことをしたかな。と少し反省した。

 酔った勢いで、余計なこと言っちゃったかな。


「花火、なかなか上がらないね」


 話を変えようと背中合わせの体勢はそのままに、私は花火が上がるであろう方角に目を向ける。

 ツバサくんは黙ったままなにも言わない。


 ツバサくんは今、どういう顔をしてここにいるんだろう。

 顔が見えない、返事がないというだけで途端に不安になって、こっそり振り向いてツバサくんを見る。

 すると、ちょうど同じように振り向いたツバサくんとばっちり目が合ってしまった。


「あっ、ごめっ!!」


 慌てて目をそらすと、同じように湯船のお湯が背中越しに跳ねたのが分かった。

 ツバサくんも驚いたのだろう。

 ふと、今まで疑問に思っていたけれど、聞いてこなかった言葉を私は口にする。


「ツバサくんって、一体いくつなの?」


 少し間が空いて、返事が来た。


「…いくつだと思って会話してたんだ?」


 えーっと。

 質問に質問で返すのは、ずるくないですか?

 そう思ったけれど、それがツバサくんだ。

 私が回答するまで正解は教えてくれないだろうな。


「見た目は5歳くらい。だけど、中身は同世代…年下。うーん、年上?」


「どれだよ」


 ツバサくんが思わず吹き出す。


「だって、しっかりしてるのに、たまによく分かんない」


 それが正直な答え。

 頭の良さ、というか回転の速さ、エスコートの上手さ、そういうのを見ていると、年上なのだと思う。

 けれど、ふとした時に見せる表情や、好きな食べ物には素直に反応したりするたまに子どもっぽいところは、年下なのかもと思ったり。

 あとなにより。


「妖精って、何百年も何千年も生きるんでしょ?」


「さすがリンゴ、って答えだな」


 真面目に答えた私に、納得したようにツバサくんは頷いたみたい。


「バカにしてるでしょ」


 少し怒ったような、拗ねたような言い方で文句を言うと、ごめんごめん、と笑って、


「リンゴのそういうところ、好きだよ」


 と、背中越しに呟いた。


「えっ?!」


 驚いて振り向くと、今度は視線をそらされることはなく、笑顔のツバサくんとしっかりと目が合う。

 私が驚いたことに、逆に不思議そうにツバサくんは首を傾げる。

 他意はないと思うけど、私のことを好きだと言ってくれた。

 どんな意味の好きでも、素直に嬉しい。

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