18話
「ちょ、わ、あわわわわわわわわわ」
「リンゴ、うるさい…」
「え、だって、ちょっ! なー!!」
「お、お客様、落ち着いてください」
変な奇声を出しているのはすべて私。
そんな、いつものまぁちゃんを見てるような目で私を見るのはやめてください、ツバサくん…。
あれからツバサくんのエスコートで、温泉街のメインストリートまで連れて来てもらった。
足湯に浸かって、ソフトクリームを食べて、その地域名産のコロッケを頼んで食べ歩きした後、陶芸体験に来ている。
全部私が、なんとなく気になって付箋紙を貼ったページの店だった。
いま私が作ってるのはカフェオレボウル。
先に湯呑を完成させたツバサくんは、呆れた顔で私の無様な様子を眺めている。
なんで手先まで器用なの。ツバサくんはずるい。
ツバサくんの綺麗な湯呑とは真逆に、私のカフェボウルは、丸くはならず、なにやらどんどん波打って行く。
「せ、先生ー!」
「落ち着いて、ゆっくり、手はなるべく固定して動かさない」
10分後、何度もやり直してようやく形になって、私は胸を撫で下ろした。
正直、もう二度とやりたくないかも。
「焼き上がりも含めて、おうちに届くのは大体一ヶ月ほど見てくださいね」
陶芸家の先生にそう言われ、私達は陶芸体験の教室を後にする。
教室を出た途端、急に笑い出すツバサくんを、私は睨みつけた。
「もう、笑わないでよ」
「だってリンゴ、あれはちょっと…」
待て、笑わせるなよ。とまたツバサくんは笑い出す。
でも、ツバサくんが楽しそうなのは、嬉しい。
「ツバサくん、楽しい?」
私が尋ねると、ツバサくんが意外そうな顔をした。
「俺はリンゴと一緒なら、大抵のことは楽しいけど?」
「!!」
反射的に顔が真っ赤になる。
この人、無自覚なの?
「リンゴたん、顔がリンゴみたいになってますけど、大丈夫です?」
私の腕の中で大人しくしていたまぁちゃんが、私を見上げながら話し掛けてくる。
「あ、いや、その、大丈夫だよ、まぁちゃん」
顔が熱い。
そんなもので熱が急激に下がる訳ではないのは分かっているけど、なんとかごまかしたくて、パタパタと手で顔を仰ぐ。
「リンゴは?」
「え?」
不意に、ツバサくんが私に聞き返してきて、私は目線を合わせた。
「リンゴは楽しい?」
「た、楽しいよっ! だって…」
咄嗟にそう答えて、恥ずかしくなって少し視線をそらし、ツバサくんの服の裾をつまんだ。
「だって、今日行ったところ全部、私が付箋紙貼ってたところだった」
服の裾に視線を落としていた私は、少しためらったけれどツバサくんに視線を戻す。
「連れて来てくれて、ありがとう。楽しかった!」
本当に、心からのありがとうを込めて笑う私に、ツバサくんは一瞬、面食らったような顔をした後、優しい顔になった。
「楽しんでくれたなら、良かった」
そう言ってツバサくんは、自分の服の裾をつまんでいた私の手を取って、手をつなぐ。
二人は、ゆっくりと旅館に向かって歩き出した。




