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17話

「なーつでーすよぉーーーー! うぐぅっ」


「思ったより、良さそうなところだね」


 着いて早々、騒ぎ始めたまぁちゃんの頭を押さえつけるツバサくんに苦笑しながら、私は本日泊まる予定の旅館を見上げた。

 新しい建物ではないけれど、なんというか情緒とか、趣があるとか、そういう言葉が似合う雰囲気の旅館。


 この旅館は、夫婦二人で経営しているところで、各部屋がロッジのようにセパレートされた造りになっている。

 各部屋それぞれに露天風呂がついており、部屋での入浴も可能だが、その他にも共用でひのき風呂なども併設されているのだと、受付で説明を受けた。

 晩ごはんは受付も兼ねている部屋でみんなで食べることを除けば、まぁちゃんも充分楽しめそう。


 簡単な手続きを済ませ、部屋に案内された私達は、ひとまずゆったりと腰を落ち着かせる。


「さっきの晩ごはん食べるお部屋、大きな囲炉裏があってすごかったね」


「ここ、本来は数ヶ月予約待ちの旅館って言ってたけど、あのおばさんどうやってチケット手に入れたんだよ」


 おばさんって、栗山さん?

 失礼だな、まったく。

 でもどうだったっけ。人にもらったって言ってたような気がするけど。


 さぁ…と言いながら、ツバサくんにお茶を出し、隣に座る。


「リンゴ、夕飯までしばらく時間が空くが、行きたいところはないのか?」


「行きたい、ところ」


 私は少し考え込む。

 実は、こういった外出は正直初めてで、どうやって楽しむものなのかがさっぱりわからない。


「ガイド本は、買ってみたんだけど、なにをしたらいいのかよくわからなくて」


 カバンの中に入れていたガイド本を出して、ツバサくんに差し出した。

 めぼしいところに付箋はつけてみたものの、正直、地図を読むのは苦手だし、回る順番とか、所要時間とか、考えると頭が痛くなる。

 なにより、ツバサくんはもちろん、私も、車の運転なんてできない。

 交通機関ってどうしたらいいのかわからない。ここまでの移動も、結局ツバサくんに手配してもらった。

 ツバサくんはしばらくガイド本をパラパラと捲りながら考え込んだ後、


「よし、ちょっと付き合ってくれ」


 というと、先ほど私が出したお茶を一気に飲み干し立ち上がった。


「え、ちょ…」


「行っきましょー! まぁちゃんもついていくですよー!!」


 張り切って扉の方に向かっていく二人を見て、私も小走りで追いかけることとなった。

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