13話
こういう、普通の毎日が嬉しい。
誰かが一緒にいてくれて、毎日を過ごして。
家に帰って、一緒にご飯を食べて。そして一緒に寝る。
それだけでいい、それだけでずっと幸せ。
ずっとこんな毎日が続けばいい、というのがいつからか私の願いになっていた。
「今日はハンバーグだよ!」
私の発言に、ツバサくんの耳がぴくっと動いた。
「煮込み?」
「煮込んだ方が好き?」
「あぁ」
そこまで露骨に希望を出してくることは珍しい。
前に作った時の、そんなに喜んでくれてたのかな。
「分かった、美味しいのがんばって作るね」
笑顔で返事をした私に、ツバサくんは顔を赤くした。
珍しい、照れてるのかな。
「さ、お買い物して帰るぞー!」
「まぁちゃんのお菓子も忘れないでくださいねー!!」
「ぬいぐるみは黙ってろ」
「うぐぅっ」
ツバサくんの左腕に抱かれておとなしくしていたまぁちゃんが、突然しゃべり出す。
そんなまぁちゃんの顔をツバサくんは無遠慮に押さえつけた。
「大丈夫だよ、まぁちゃん。忘れてないよ」
「リンゴたん、大好きです―! まぁちゃん、幸せですー!」
「お前の幸せは簡単だな」
「なにおーぅ! ツバサくんには一個も! 一個も分けてあげないですからねー!」
ぷんぷんと顔の表情が変わらないまま怒るまぁちゃんに、ツバサくんは冷静に返事をする。
「別にいらない」
「リンゴたん、ハンバーグに毒入れましょ!」
「えっ、なんで!?」
「モー毒なのですよっ! モーモーなのですっ!」
そこまで言って、まぁちゃんはふと固まった。
見る見る内に、神妙な面持ちになって行っている…気がする。
もちろん、表情はないのだけれど。
「牛さんは毒なのです?」
突然なにを言い出すのかと思えば。
まぁちゃんの、発想力というか、連想ゲーム力というのか。考えていることがとにかく面白い。
吹き出す私と相反して、ツバサくんは眉間に皺を寄せ、深いため息を吐いた。
「バカか、お前は」
「バカじゃないですー! 頭悪いんですー!」
ムキーっと、さらに怒り出す。
「どっちも同じだろ」
「同じじゃないです―!」
当たってもまったく痛くないクッション性の高い手で、まぁちゃんはツバサくんをポカポカ叩き始めた。
なんか、気持ち良さそうだな。まぁちゃん、感触ふわふわだし。
「いいから行くよ、二人とも。まぁちゃん、お菓子は一個までですからねー」
「はぁーい!」
「リンゴはこいつに甘いんだよ。あんまり甘やかすな」
沈んでいく夕日に向かって歩く私達の影は、長く長く伸びていった。




