世界が死んでいく
雪が降り積もる日、重厚な門が開き、三人の兵士が外に歩いていった。
一人はザーベ、この部隊のリーダー。もう一人の巨漢はウラ、巨大な斧を背負ったバーサーカー。最後の一人は新人のアクセル、色白の細い体型で慣れない外任務に緊張している様子だ。
三人は真っ直ぐに歩を進めていった。城外の見張りは交代制で三人一組で実行される。命令を受ける兵士は下級であり、雪が降る寒さの中で見張りをやらされる兵士は最も底辺である証拠だった。
その為、さっさと任務を終わらせたいザーベは黙々と見張りのコースである災いの森に入っていった。人が寄り付かないこの森だが、盗賊の住み処にはとっておきの場所であるため常に兵士が見回りをし異常があれば城に戻り報告することが任務である。ザーベは何度もここを探索しているため何も怖くないが、新人のアクセルは何か物音がある度に驚いた声を出すのが耳障りで段々と歩が遅くなっていくのでイライラしていた。
「おい!アクセル!なにビビっていやがる!てめえがいるせいで城に戻るのが遅くなるだろうが!」
「ヒイ!すいやせん!」
ザーベは何度目か分からない怒号を上げた。
それからまた歩を進めてもまだアクセルはまだビクビクしている。
我慢の限界に達したザーベはアクセルの胸ぐらを掴み木に押し付けた。
「てめえ!ふざけるのも大概にしろ!黙って歩けねえのか!木偶の坊め!」
「す、ずみばせん。でも失礼ながらリーダー。聞こえませんか?」
「何がだよ!」
「私だけですか、聞こえるのは。怖い怖いよ!やめてえ!やめてえ!」
急に耳を押さえて泣き出したアクセルにザーベは怒りを忘れて気味が悪くなった。アクセルには最初の研修でザーベに服従するように調教されているから嘘をつくことはないはずだと思ったがこの状況はどう判断したらいいか分からなくなった。
「ウラ、回りに何かいるか?」
「・・・いない」
ウラは南大陸のガルミアン族、索敵能力が抜群に優れている種族であるためザーベたちに聞こえる音は絶対に聞こえるはずだが何も感じないと言うことはアクセルが嘘をついている可能性の方が高い。
「てめえ。俺達をビビらせておもしれえのか!ぶっ殺す!」
ザーベは剣をアクセルの喉元に押し当てるとアクセルは急に泣き止み、今度は懇願するように言った。
「こ、殺して下さい!殺して!」
ザーベは背筋に鳥肌がたち、アクセルから距離をとるように後ずさった。
「城に戻るぞ。ウラ、そいつを担げ!そいつは病気だ!」
「分かった」
「まったく足ばかり引っ張りやがって!」
戻ろうとした瞬間だった。