第7話
今までありえなかった出来事にさらに拍車がかけられて何が何だか分からなくなっていく。
「スレイヴピックアップ?」
さっきの言葉をそのまま疑問系にして返した。
しかし、質問に答えることは無く俺に注意喚起をしてきた。
「今日から五日間絶っっ対にこの家から出てきちゃ駄目!」
彼女は俺に必死さが伝わるように力強く言い放つが、必死さと同時に恐怖感が感じられた。
「わ、分かった。」
そう、と言わんばかりに彼女は嘆息した。
「ただ、俺はしたい質問が沢山あるんだ。答えてくれるか?」
俺は少し優しめに聞いた。今の状況で厳しい言葉遣いだと、彼女を追い詰めてしまう気がしたからだ。
「いいわよ。」
「それじゃあ、最初の質問なんだが…………」
◇
◆
◇
彼女にたくさんの質問をして、彼女はそのほとんどを答えてくれた。
彼女の名前はアンビブル・マリアで、年齢は20歳で、俺より年上だった。
人は見た目によらないなんていうけれど、この時改めて俺は「確かに」と思った。
これが20歳なんてありえない。百歩譲って俺と同年代だろ。俺がいた国だったら酒も煙草もオッケーなんだし。
他にもいろいろな質問をしたが最後の質問は一番俺が聞きたくて、一番大事だったので詳しく聞かせてもらった。
「改めて聞くぞ?……スレイヴピックアップって何だ?」
質問を言いきると、マリアは肩を少しビクッとさせて少し経ったあと席を立った。
マリアは静かに台所に行き、お茶を淹れ始めた。
お茶の入ったティーポットとコップを2つ持ってきてコップに注いだ。
「スレイヴピックアップは生贄みたいなものよ。」
「生贄?」
「そう、生贄。この街を治めている人が、この街の創設者で、名前はクロウ・マクベス。」
淡々と話し続けるマリアに相槌をいれようかと迷ったが、普通はここで相槌はいれないだろうとおもい、そのまま次の言葉を待った。
お茶を一口含みコップを置いたマリアは
「ここは国じゃないから王様のような人はいないけど、ここじゃあマクベスが王様みたいなものね。マクベスはほかの街や国との貿易の綱渡り的存在で、彼がいるからこそこの街が成り立っていると言っても過言ではないわ。」
「そうなのか……それを聞く限りだとそのマクベスっつう人はただのいい人じゃないか。」
ただ、思った感想を口にしたらマリアは首を横に振って、
「それは世間に露見している情報を掻き集めたらそうなるのよ。本当は違う。全く違うわ。その真反対よ。」
「じゃあ一体なんだって言うんだ。」
「よく話の流れを感じさせない返事が出来るわね………マクベスが、スレイヴピックアップをしているのよ。マクベスが。」
「っ!」
ごめん、思考が停止していて、話の最初の方を忘れてしまったんだ。許してくれ。
話を聞きながらも今までの話を整理してたんだ。ただ、もう殆どの情報は整理することが出来たので今の話も全部整理完了だ。
「マクベスは、安定した暮らしを街の人々に供給する代わりに自分に従う下僕を欲しがるの。いつまでとか時間指定はないんだけど、来た旅人は皆マクベスに引き渡されるわ。」
話を聞いてふと、ひとつの疑問が浮かんだ。
俺を引き渡さなくていいのか?