第22話
私は分からないことはすぐに聞くタイプだった。
分からないままで終わるのが嫌で、父親をよく質問攻めにして困らせた記憶がある。
ただ、他にも残っている記憶はある。
子供の頃の記憶は殆ど覚えていない。そんな中でも残った一つだけの記憶は、いつも通り父親に質問をした時だった。
「ねぇねぇ。なんで私やお母さんはこんなに力が強いの?」
その質問のきっかけは友達を助けた時にあった。
住んでいた街には大穴があり、そこは柵で囲まれていて落下防止の対策がとられていた。
子供の興味は恐ろしいもので、どんなに危なかろうとそれを実行しようとしてしまう。
おかげで友達は柵の内側、大穴に落ちそうになって、なんとか柵を掴んでギリギリの状態だった。
私は意味がわからなくなって、何をしたらいいか考えられなくなってしまっていた。
自分が落ちてもいいという気持ちで私は友達の手首を掴んでぐっと引っ張りあげた。
友達は簡単に上に上げることが出来て、助けた後は私も友達も抱き合って泣いていた。
「うーん、そうだねぇ。マキもお母さんも魔族だからじゃないかなぁ。」
「魔族?」
「そう、魔族。動物とかは自分が生きるために体のいろんな部位を発達させたってあるけど、魔族もそういうことなんじゃないかなぁ。」
「うぅ………あんまり分かんない。」
お父さんは明るい顔をして、
「まっ、今はそんな事考えなくていいさ。けど強いて言うなら……マキのその力は大切な人を守るためにあるんだと思うよ。」
「大切な人?」
「友達とか、お母さんとか、ずっと一緒に居たい人とかかな。」
「ふぅーん………!じゃあじゃあ、お父さんも大切な人!」
「そうか、それは嬉しいな。」
お父さんは私を抱きしめてそう言った。
◇
◆
◇
もう死んでしまうと思って目を瞑っていたら、何も起きないことと、体に付いた液体に異変を感じ、目を開けた。
「……………っ!?」
どの世界も融通は効かないらしい。何かを手に入れたら、何かを失うのは当然らしい。
今回手に入れたのは俺の命。
そして今回失うのは………
「マ………マキ?…」
この世界の数少ない仲間。そう、マキだった。
「なんで………こんなことを」
マキは俺の前で大の字で立ちはだかっていた。
そして、少し目線を落とすと俺の目にはマキの背中が映し出されていて、丸く切り取られていた。
何が切り取られていたかって?服じゃない。
それはもう言わずもがな、マキの体だった。
もっと視線を落として、自分の胸を見ると綺麗に血の円が描かれていた。
それはどうしようもないくらい、マキの背中が抉られているのを分からせてくれた。
マキはそのまま倒れて、
「…私は……いいけど………きみは……………駄目だ…」
言葉は途切れ途切れで今にも命が切れてしまうよあだった。
俺はすぐにしゃがんで、マキの顔を見た。
「…そんな……………悲しい顔するな………だって――――――」
「喋るな!」
俺は自分が今どんな顔をしているのかわからない。ただ、マキをどうやったら救えるか。それしか考えていなかった。
「……まだ……チャンスはある…………こっちに耳を………」
俺はマキの口元に耳を近づけた。
「……………!!」
マキは俺に教えられることを教えて満足したのか、ニコッと笑い
「…さあ…行け………私はもう…………無理だ……」
「駄目だ!やめろ!…………!?」
マキの体は力が抜けたように一気に動かなくなっていた。
もうやるしかない
ここでやらなきゃ男じゃねえ
俺はマクベスの方をキッと睨んだ。