第21話
マクベスは不気味な笑みを浮べながらゆっくり近づいてきた。
ただ、ゆっくりと近づいてくるだけなのに隙は感じられず、ゆっくりとだが確実に確実に間合いを詰めてきた。
マキも少しずつ後ずさりしていき、さっきまでの威勢のいい声とは裏腹に、今の状況は追い詰められてる。
俺も微力程度の助太刀をするつもりが残念。こっちの世界には魔術というものが存在する。
見たことはないけど魔術は遠距離でも近距離でも戦える手段であると思う。
分かりもしない攻撃に突っ込んでいくのはいくらなんでもギャンブラーすぎる。
間合いを詰められて少しずつ後ずさりしていく。すると、マクベスは右手を前に掲げて何かを唱えた。
「直線的暴嵐」
その瞬間俺の目に向かってくるように風が飛んできた。風は空を切って白くなりながら飛んできた。
しかし、それのお陰で風を読むことができ、避けることが出来た。構えてたっていうのもあるけど。
転がるように避けた俺はマクベスの横に位置するようになった。
マクベスはこちらを向いて
「いや〜残念。君たちの後ろは廊下だからチャンスだと思いましたが。簡単にいくものではありませんね。」
こんな状況でも喋りやがって。けど、魔術の使えない俺は避けることぐらいしか出来ない。
ただ、マクベスの気を引くことは出来る。マキはどう思ってるか分からねぇが、今のこの状況で攻撃できるのは魔術を使えるマキしかいない。
俺の仕事は攻撃を与えられる隙をつくる。それだけだ。
「追尾型暴嵐」
また風か、と身構えていると予想は的中。しかし、
「ぐほっ……」
さっきとは違った。
俺が体をずらして避けようとすると、風は俺の体の方向に曲がって脇腹に直撃。
受け身をとって体勢をなおすと、またマクベスが喋り始めた。
「はっはっは、やはり面白い。どれだけ避けれるかやってみましょう。」
マクベスは再び口を開き、
「追尾型暴嵐」
◇
◆
◇
先程からどれだけ時間が経っただろうか。いや、もしかしたら時間は数十分しか経ってないかもしれない。
しかし、俺の体は何時間分の疲労が溜まり始めてきた。
俺はずっとマクベスの魔術に翻弄されたが、なんとか避けることが出来た。
気を引くことも出来たと思っていたが、それは単なる独り合点で実際はそうとはならなかった。
マキが何回か魔術を唱えようとするが、その瞬間に標的を俺ではなくマキに向けてしまって、攻撃のチャンスなんて一度もなかった。
「はあ、はあ。ったく、どうすればいいんだ!」
助けを求めるように叫んだ俺だったが、それに反応してマクベスは不敵な笑みを浮かべながら
「面白いですねー。貴方は芸能人に向いているんじゃないんですか?」
冗談交じりで言った言葉はとてもうざったしかったが、何も言い返せない。
いや、痛いところを突かれたからとかそんなんじゃなくて。マクベスの攻撃を避けるのに精一杯で返すことが出来ないのだ。
ただ、幸いなことにマキには攻撃はあまり仕掛けていない。
それだけでも十分だ。
役割的には俺が盾、マキが矛って感じだ。
ただ、これがずっと続けられるかと問われれば答えは否、そんなことは無理だ。
マクベスの攻撃は早くなる一方だった。次から次へと向かってくる攻撃は半分は体を擦っていったり、直撃したりだ。
攻撃を避けながらも必死にチャンスを伺っていると、
「う〜ん、そろそろ飽きましたねー。そろそろ最後にしましょう。」
そう言って、マクベスはこう唱えた。
「鋭利暴嵐」
風は空を切って白くなり、剣のようになって俺の方に飛んできた。
……やばっ…………俺……もう……………
今回は読んでいただきありがとうございました。
そして、1つだけお知らせをさせていただきます。
最近投稿するペースが下がってきている、と自分でも感じております。
最近は忙しくあまり、手をつけれてないのが理由です。
ですのでこれからは、毎週土曜日に投稿をさせていただきたいと思います。
1本しかあげない時もあるかもしれませんし、数本あげる時もあると思います。
自分勝手ではありますが、何卒御理解よろしくお願いします