第20話
暫しの休憩をとった後、またすぐにマキのナビに従ってマリアのところまで目指していく。
足音をなるべくたてずに歩き、話も極力しないでマキを追っていった。
かなり長い間歩いてきたが、遠くを目を凝らして見ると大広間のようなところが見えてきた。
マキにもそれが見えたらしく、往々後ろを確認したり歩き方がさっきよりもゆっくりになっている。
歩きが遅くなったせいか、マキからは足音は全く聞こえなくなっていた。結構近くにいる俺でさえ聞こえないんだから、俺より離れている奴は気配を察知する事は難しいだろう。
次第に大広間に近づいてきて、いよいよだというところでマキがこちらを向いて、
「一応これを渡しておくよ。」
紙切れを渡してきた。紙切れの中央には円とその中に六芒星が描かれていた。
「これは?」
「これは魔術を紙に写し出したものよ。写した魔術は劫炎焔で、少し威力が高い。」
「どうやって使うんだ?」
「その紙を手で握りしめて、使いたい方向に放てばいいよ……………!?」
俺は無言で頷こうとしたが、マキの後ろの大広間に誰かが現れたのを確認した。
マキも気配を察知したのか、さっと後ろを向いて構えた。
俺もそれにつられるように構えた。
あちらはこっちを向いて見るだけ、こっちもあちらを見るだけの静寂が続いていたが、大広間に立っていた男は口を開き、
「まあまあ警戒しないで。さあ、こちらまで来てくれ。」
聞き覚えのある声だった。何日か前に聞いた声で確かにこの耳で聞いたはず。
「うるさい!見え見えな罠にわざわざ引っかかるような阿呆じゃ私たちはない。」
いっぽ進もうとしていた俺はすぐに足を戻して、構えを整える。
俺だけ気まずい感じになって恥ずかしいが相手はそれを汲み取って、
「では、そこの殿方はアホなのですかな?」
痛いところを突かれた。
マキはさっとこちらを向くが、俺は知らないふりをして、違う方向を向いた。
マキは嘆息して、
「そうだよ。こいつは阿呆だよ。」
と、適当に流した。
突っ込みを入れたくなったが、そんな事今の状況では出来ないので俺も流した。
「大丈夫ですよ。ささ、お入りください。」
それでもマキは警戒を解こうとはしない。
このまま睨み合っていても仕方が無いので、俺は構えながら大広間に向かっていった。
それを見たマキは仕方無しという感じで、俺の後ろについて進んだ。
まあ、無事に進めたんだけど。
「本当にあなたは私を信用してくれませんね、マキナさん。」
「あんただけは絶対に信用したくはないね、マクベス。」
「なっ!?お前がマクベスか?」
少し驚いて話の流れを変えてしまったが、
「そうでした、そうでした。まだ自己紹介がまだでしたね。私はクロウ・マクベスでございます。以後、お見知りおきを。」
やはり、この聞いたことのある威厳が感じられる声はマクベスだった。
マクベスは少しずつ近づいてきて、その間合いを変えることなく俺とマキは後ずさりしていく。
「あなた達の目的はどうやらマリアのようだが、それと同時に私の目的が生まれてしまうのがお分かりかな?」
マクベスは淡々と話を続けていった。
「それはマリアをあなた達に渡さないことです。私は野蛮人ではありませんので、あなた達を殺そうなんておもいはしません。ですが、1つ要求を呑んでいただきたい。」
「なんだ。」
マキが聞くと、
「あなた達がお帰りいただくことです。そうしたら何事も無く、事を済ますことができます。この優しい提案をあなた達はどう…………」
「駄目だね。私達はあんたを倒して、後ろの部屋にいるマリアを助け出すんだよ。だから、ここまで来たんだ。」
マキは食い気味に答えた。ここまで来て、引き下がるなんて事は毛頭ないということだ。
マクベスはその答えを聞いて、やれやれという感じの仕草をして、
「そうでしたか。ならば仕方がありません。」
長い沈黙が流れマクベスは再び口を開き、
「ではここで死んでもらいましょう!!」