第19話
「マキっ!」
どうする?
今すぐマキを救うに決まっている。だが、どうやって?
こんな硬い鎧に一発当てられたとしても、少し怯んで終わり。俺の手がノックアウトされてる間にマキが死んじまう。
別に鎧を壊さなくていい。鎧の動きを止められたらそれでいい。
今最優先すべきはマキの救出。いや、鎧を壊せるならそれに越したことはない。
だが、残念ながら俺はマキのような怪力は持ち合わせていない。
どうやって動きを止める?力勝負ではなく、自然な力でどうやって?
……………そうだ!
作戦が頭に電球のごとくひらめいた。
ひらめいた頃には体が動き始めていて、完全に鎧と向かい合う形となった。
それでも鎧はこちらに止めることなく走ってくるのは予想していたので多少の余裕が出来た。
すかさず俺はボクサーのような構えをとった。少し跳ねるようにジャンプして体勢を整えた。
…………今だ!
ちょうど俺と鎧の間が20m程度になった頃を見計らって、俺は鎧に一直線に走っていった。
「やめろ!自分から死にに行くつもりか!」
まあ、普通に考えたらそうだろう。みんながそう思うはず。
しかし残念。俺は普通じゃないんだ。
「うおおおおぉぉぉ……………!?」
叫び声と同時に、鎧の目の前まできた俺は鎧の胴の部分を殴り、鎧の少し左に寄った。
予想通り、鎧は怯んだ。ここぞとばかりに俺は、鎧の胴の襟の部分を右手で掴み、右足を鎧の足の踵に引っ掛けた。
その後は簡単で掴んだ襟を前に、引っ掛けた足を手前に払った。
すると、鎧はなす術なく仰向けに倒れた。
やった。やってやった。魔力が無くても倒せた。
1人、勝利に浸っていると後ろから鎧に向かって飛びかかる影が。
それは間違いなくマキであった。マキは飛びかかって、着地すると同時に鎧の胴を粉砕した。そして、こちらを向いて満面の笑みでピースを決めていた。
なんか、いいとこどりされた感じであまりいい気分にはならない。
けど実際のところは、マキが元気そうで良かった。鎧を見るともう再起不可能って感じだった。
「ありがとう、リョウタ。君のおかげで鎧を倒せた。」
「そっか…………それよりお前は大丈夫なのか?怪我はしてないか?」
「大丈夫。足が疲れてただけだ。」
「少し、休むか。」
マキは静かに頷いて、俺もマキも大の字で仰向けになった。